健康維持やダイエットなどが目的でウォーキングをはじめていらっしゃる方も多いと思います。そうでなくても歩くことは、われわれ動物にとって必要不可欠な動作です。
しかし、歩き方を学ぶ機会がないため、歩き方について何も考えることなく、ただ何となく歩いてしまっている方が多くいらっしゃいます。そして、多くの方が、自分の歩き方に誤りがあることに気づかないまま日々を過ごしています。その結果、健康維持やダイエットのためにはじめたものの「膝が痛い」「足が太くなった」などの逆効果となっている方を多く見てきました。
今回は健康的で正しい歩き方をお伝えしていきます。
正しく歩くために「使う関節と筋肉」
骨格や筋肉にはそれぞれ役割があり、二つに分けられます。それは「アクセルとブレーキ」です。正しく歩くために使う関節と筋肉は「アクセルの役割をする部位を優位に使う」必要があります。
具体的には、「股関節、お尻と太ももの裏の筋肉」になります。特に人間は二足歩行のために、ほかの動物に比べてお尻の筋肉が大きく発達しています。その大きな筋肉を使うことにより、さまざまな恩恵を受けることができます。
いくつかご紹介いたします。
長時間歩行が可能
お尻や太ももの裏の筋肉は、体中に多数筋肉がありますが、そのなかでも圧倒的に体力のある筋肉です。
お尻と太ももの裏の筋肉を使って歩くだけで、不思議と歩行距離が伸びるのです。そしてたくさん歩くことができるので、さらに体力がつきます。ダイエットや体力ずくりを行う際には、どの関節、筋肉を使用するかが非常に大切な要素となります。
下半身が細くなる
お尻や太ももの裏の筋肉は、大きく発達はしないという特徴がある筋肉になります。大きくなるよりも引き締まる筋肉なのです。そのため歩行時にお尻と太ももの裏の筋肉を使ってあげることで下半身全体のシルエットが引き締まって細くなります。
全身の筋肉が連動する
股関節、お尻と太ももの裏の筋肉は、体の中心に位置しています。そのため中心が働くことでそのほかの筋肉も連動して働くようになります。この連動がもっとも重要なのです。
全身の関節や筋肉で効率的に動くことで一箇所にかかる負担が軽減されますので、怪我の予防になります。また、動作中に使用している筋肉が多くなりますので、疲れにくくなり、たくさん歩くことが可能になります。
正しく歩くために「使われる関節と筋肉」
使う関節と筋肉がアクセルとすると、使われる関節と筋肉は「ブレーキの役割」を担います。具体的には、「膝関節、太ももの前の筋肉」になります。
基本的には、われわれは前に向かって進み、ブレーキをほとんどかけずに歩いています。赤信号で立ち止まるなどの時にブレーキをかける以外に使う機会が圧倒的に少ないのです。
しかし実際は、膝関節・太ももの前の筋肉を使用して歩いている方が多くいらっしゃいます。ブレーキをかけながら前に進んでいるのです。それによって体にいくつも弊害が生まれます。
いくつかご紹介いたします。
長時間歩くことが困難になる
元々、太ももの前の筋肉は、体力がないため長時間歩くことは不可能です。また、ブレーキをかけながらアクセルを踏み、前に進むことになりますので、体力のロスが大きくなり、すぐに疲れてしまいます。
怪我をしやすい体になる
膝関節を主導とした体の使い方をしている方の特徴としては、「全身の関節や筋肉の連動が途切れている」ことがあげられます。
弱い関節や筋肉に対して一点集中で負荷がかかると怪我につながります。膝関節は骨がむき出しになっており、筋肉のサポートも少なく非常に弱い関節です。また、太ももの前の筋肉は大きな筋肉ではあるものの、先に述べたように体力がない筋肉になります。
これらを使いすぎると無理に耐えながら歩行しなくてはならなくなり、「我慢」を強いられます。健康的なウォーキングとは、ほど遠いものとなってしまうのです。
やる気が出ない
体と心は繋がっています。体の使い方でブレーキがかかっていると気持ちにもブレーキがかかってしまいます。歩きたいけど歩けないなどとうまく気持ちが乗らない時は、体の使い方が残念ながら間違っているということもよくあります。
正しい歩き方のポイント
では、正しく歩くためにはどのような意識で歩けばよいのかをご説明していきます。ポイントとしては二つありますので、それぞれご説明していきます。
重心移動
直立した状態から前のめりになって歩く方向へ体重をかけてみてください。すると前方に倒れ、片方の足が我慢しきれず自然と一歩でるかと思います。歩く際にはこのように勝手に足が前にでるという状況で歩きます。
「歩く方向に重心を移動し、自然と足が出てしまう」を繰り返しながら歩きます。胸の当たりを歩く方向に引っ張られ「おっとっと」と進んでいくイメージです。
健康的にウォーキングする際に、なるべく疲れずに歩くということは大切な要素になります。それには足の筋力をなるべく使わないで自然に使われるという状態で歩く意識が必要となります。自ら意識して足を動かすのではなく、あくまでも重心を移動した結果、足が勝手に前にでてきてしまったという意識で歩いてみてください。
フラット接地
「踵から接地してつま先で蹴る」という歩き方を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。歩いているところを見るとそう見えなくもないのですが、実は残念ながら間違っています。
直立した状態で踵に体重をかけつま先を浮かせてみましょう。その後反対につま先に体重をかけ踵を浮かせてみましょう。どちらも「太ももの前に筋肉に力が入る」と思います。踵から地面に接地した瞬間にブレーキがかかります。そして、つま先で蹴る時にもブレーキがかかります。このような体の使い方では歩く時にブレーキがかかり、非効率となってしまいます。
われわれ人間の重心の位置は「くるぶしの真下」になります。くるぶしの真下に重心は股関節と連動しているため、お尻の筋肉が使えるようになります。歩いている時はくるぶしの真下を踏み、股関節とお尻のアクセルの筋肉を使いたいのです。
そのためには足の裏全体でフラットで接地するようにします。実は重心を前方に移動し、自然と足が前にでた時は、必ずフラット接地になります。
※文章でわかりにくい場合は、下記の参考動画よりご覧ください。
ウォーキングの効果
ウォーキングには、健康維持や体力・筋力アップ、ダイエットなどといったさまざまな効果が期待できますので、ご説明していきます。
健康維持
ウォーキングには、脂肪燃焼効果が期待でき、肥満の予防・改善に効果的となります。代謝も良くなり、血中脂質や血圧、血糖値の状態の改善にも効果が期待できます。
また先に述べましたとおり「フラット接地」により、足の裏全体で地面に接地すると、全身の骨に歩行時の衝撃が加わるので、骨が強くなり、骨粗鬆症の予防になります。
そして、ウォーキング時には「セロトニン」と言われる幸せホルモンが分泌されます。自律神経のバランスを整える、モチベーションの向上、不安感を軽減する等の効果が期待できます。ストレス解消にもウォーキングは非常に効果的となります。
体力・筋力アップ
股関節・お尻の筋肉を使用してウォーキングをすることで、自然と長時間歩くことが可能になります。
しかし、はじめのうちは、お尻の筋肉を使って歩くことが難しかったり、歩いている途中にお尻が使えなくなったりするかと思います。「体力=お尻の筋肉が使える時間」となりますので、ウォーキングの途中でもお尻の筋肉ではなく、太ももの前側を使い疲労がでてきたなと思ったら、そこで一度ウォーキングを終わりにしましょう。
ただただ長時間歩けば良いということではなく、お尻の筋肉を使い、長時間歩かなければ意味がありません。徐々にお尻の筋肉を使える時間は長くなっていきますので、少しずつ行っていきましょう。
そしてウォーキングにより筋力アップも期待できます。ただし、いわゆるムキムキマッチョな筋肉は付きません。ウォーキングに必要な筋肉が必要なだけつきます。
ウォーキングでお尻の筋肉を使用するとヒップアップが期待できます。ヒップがアップするとそのほかの筋肉もアップします。要はお尻の筋肉が変わるとその他の筋肉も連動して変わるということになります。ウォーキング時に階段や坂道などを歩くことでより高い効果を得ることができます。
ダイエット
ダイエットには有酸素運動が欠かせません。ウォーキングを含めた有酸素運動のもっとも良い点は「やればやっただけ効果が得られること」です。「こんな結果になるならやらなければよかった」はあり得ません。
ただし、ウォーキングで体重を減らすことは非常に困難なため、ウォーキングの役割としてはシェイプアップの位置づけになります。体重を減らすには、同時に適切な食事管理をしなければなりません。運動と食事の両輪でダイエットは成り立ちます。
まとめ
健康的で正しいウォーキングをするには、正しい歩き方を理解し、動作を身につける必要があります。
歩くことが健康に良いことを理解されている方は多くいらっしゃるのですが、正しい歩く方を理解されている方は残念ながら少ないと感じます。健康のために歩いているつもりが、結果不健康になっている方もいて非常にもったいないことだと思います。
正しく歩くことで自然と長時間歩くことができ、自然と体力・筋力がつき、自然と健康になり、自然と体重も減ります。
運動というものは本来、気持ちのよいものです。歯を食いしばって我慢に耐えるようなことではありません。皆さまにもウォーキングの気持ちよさを感じていただければ幸いです。