ここ数年、ランニングブームが続いていて、ランニングを楽しむ方が増えています。ランニングは、自分のペースでできるという点でも親しみやすいスポーツです。その目的も、健康維持や体力アップ、ダイエット、マラソンのタイム向上とさまざまです。
しかし、ただ闇雲に走っていても腰や膝に負担がかかってしまい故障の原因になり、思うようにタイムが縮まらないばかりか、痛みなどでランニングを楽しめなくなったランナーも少なくないと思います。
そこで今回はランニングにおける基本的な動作、正しい体の使い方について説明します。
重心移動を使って楽に走る
ランニングメソッドには、さまざまな理論がありますが、重要なのは「重心移動を上手に行って走る」ということです。ランニングは、地面を蹴ったりするのではなく、体を前に倒し続けていき(重心移動)、そこに足が交互に地面に接地して、その反力も加わって前に進んでいきます。
まず、真っすぐ立った姿勢から、体を前に倒れるように傾けていきます。踵から頭のてっぺんまで、真っすぐの棒のように傾けていきます。あるところまでいくと、「オットット!」という感じで自然と片足が前にでます。その位置が、走る際の足の接地場所です。
この時、自然と体の重心の真下に足がくるはずです。この「オットット!」の連続で、前に進んで行くイメージです。体の傾きを強くすればスピードは上がり、逆に体を起こしてきて傾きを弱くすれば、スピードは下がります。このようにスピードは、「体の傾きでコントロール」していきます。
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ランナーに多いひざが痛くなる原因
ひざの痛みには、さまざまな原因があります。ひざを構成している骨や軟骨、骨と骨とをつなぐ靭帯や半月板、また膝周りの筋肉など、これらの組織に何らかの問題が起こってくるとひざに痛みが生じます。
多くの関節の中で、ひざを痛めやすい理由として、足首や股関節と同様、ひざは何十キロもの体重を支える、荷重がかかる「荷重関節」であることがあげられます。構造的にも、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(膝から下の骨)とが接している部分が小さいため、他の部位よりも軟骨がすり減りやすいという理由があります。
スポーツや運動などを多く行う活動性の高い若年者、とくにアスリートであれば、靭帯損傷や、半月板損傷が痛みの原因になることもあるでしょう。
ランナーなどに多い、ひざの曲げ伸ばしが過度に繰り返されることにより、ひざの脇にある腱が炎症を起こすこともあります。ひざの痛みがある場合は、正しい体の使い方・動かし方を理解し、ひざへの負担を最小限に抑えることも大変重要です。
たとえば、スクワットを行う際に「ひざを前にだしてはいけない」と言われますが、これは大きくひざを屈曲させた脆弱なポジションで、ひざに強い力がかかってしまい、傷害を起こしやすいためです。うさぎ跳びがひざ関節を傷めやすいとされるのも同じ理由です。
日常生活でも、ウォーキングや階段の上り下り、重たい荷物を持ち上げたり、ひざを曲げる際に、ひざが前方にですぎたり、内側に入りすぎたりしないよう、なるべくひざへの負担がないような動きを心がけると良いでしょう(詳しくは実地指導いたします)。
すでに痛みのある方が、運動を行う場合は、浮力のかかる水中ウォーキングなどもおすすめです。
フラット接地走法とは?
効率よく体を使う走り方に適した接地方法は、足裏全体での接地(以下、フラット接地)です。
よくアフリカのランナーが、つま先で接地していると言われますが、これはほんの一部のランナーだけで(だいたい100人に一人くらいの割合と言われています)、大半はフラットで接地していることがわかっています。
つま先接地は、ふくらはぎやアキレス腱がかなり発達していないと、衝撃に耐えられません。凸凹道を裸足で走るアフリカの環境がそうさせているので、日本人には難しいとされています。そして、かかと接地はその度に、毎回ブレーキをかけながら走るのでたいへん効率が悪く、脚への衝撃も強いため膝痛などのケガを発症しやすくなります。
しかし、フラット接地なら持久力に富み、推進力を生み出す「お尻やもも裏の筋肉」を使って走れるので長く走ることができます。
走る(階段を登る)際に太もも前(大腿四頭筋)が疲れる方は、間違った身体の使い方をしている可能性があり、修正が必要かもしれませんのでぜひご相談ください。
*音声が出ますのでボリュームにご注意ください。
まとめ
正しい走り方を知らないと、どうしても癖のある走り方をしてしまうものです。
まず、自分のフォームを動画で撮ってみることをお奨めします。その走りの映像を見て、足が接地する際にフラットに接地ができているかをチェックするのです。ショーウインドウなどに映る姿を確認しながら走るのもおすすめです。
正しいフォームは、むだなく楽に走れるので、一度身につけば 身体が自然に覚え込みます。ランニングフォームは一朝一夕では身につきませんので、普段の練習の時から常にフォームを意識することです。
重要なことは、「お尻からもも裏の筋肉を使って走れるか」ということです。それには、フラット接地で走ることがとても大事なのです。