「筋トレを行う前に、ストレッチはしたほうが良いの?」という質問をよく耳にします。これまで、ストレッチには、怪我を予防する効果があると言われ、運動前に必ずと言っていいくらい行われていました。
しかし、2000年以降、ストレッチを行うと運動のパフォーマンスを低下させるということが、アメリカやヨーロッパのスポーツ医学会で発表されたことで考え方が変わってきました。
今回は、筋トレ前にストレッチを行ったほうが良いのか、または行わないほうが良いのかを解説していきます。
ストレッチについて
まず、ストレッチについて解説していきます。ストレッチは、「伸ばす・広げる」という意味があります。全身や体の一部を動かしながら、意識して筋肉を収縮させることで体の緊張を弛緩させます。
血流が良くなることで、体の疲労やむくみがとれたり、肩こりや腰痛の解消にも効果があります。また、代謝も良くなり、神経の発達や骨格の歪みの矯正など、さまざまな効果が期待できるのがストレッチです。
ストレッチは、大きく『動的ストレッチ』と『静的ストレッチ』の二種類に分けられます。ラジオ体操のように腕を振るなど、筋肉の伸び縮みを繰り返すのが動的ストレッチになります。ヨガのように、一つひとつの筋肉をじっくり伸ばして静止するのが静的ストレッチです。
動的ストレッチとは?
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)とは、手足など体を動かし、筋肉を伸ばすことで温めると同時に心拍数を上げていくストレッチのことです。
このストレッチの良いところは、関節の可動域を広げてくれるため、ケガの防止やパフォーマンスの向上につながることです。
動的ストレッチの運動効果によって血流が活発になるため、代謝の向上にもつながり、ダイエットにも効果的です。 筋トレ前などのストレッチは、柔軟性を取り入れる動的ストレッチが効果的です。 筋トレ前に動的ストレッチを行うことで、下記の効果が得られます。
- 体温の上昇
- 心拍数の上昇
- 筋肉や関節の可動域を広げる
- 筋トレや運動時のパフォーマンス向上
- ケガの予防・防止
- 交感神経を活発にする
- 血行促進
静的ストレッチとは?
一方、動的ストレッチと対極にあるストレッチが、静的ストレッチ(スタティックストレッチ)です。
動的ストレッチは、反動をつけた運動を繰り返すことで、筋肉や体温を上昇させることをおもな目的としていますが、静的ストレッチは、体を数十秒間にわたり伸ばすことで、老廃物を流すことを目的としています。静的ストレッチを行うことで、筋肉に溜まった老廃物を排出させる効果が得られます。
筋トレを行うと、筋肉に負荷がかかるため疲労物質が溜まった状態になっています。静的ストレッチは、そんな筋トレ後に溜まりやすい疲労物質を除去し、筋肉や身体へかかる負担を和らげる効果があるのです。静的ストレッチは、30秒程度の時間をかけてゆっくりと体を伸ばし、維持することがポイントです。
筋トレ前は動的ストレッチを行いましょう
筋トレ前のストレッチは、動きのある、反動をつけた動的ストレッチがベストといえます。
動的ストレッチは関節の可動域を広げ、ケガの防止や運動パフォーマンスの向上が期待できます。静的ストレッチは、副交感神経を優位にする作用などがあるため、筋肉が弛緩して休止状態に近くなります。その結果、筋肉のパフォーマンスが落ちてしまう恐れがあり、筋トレにはマイナスに作用することがあります。
もちろん、筋トレ前にストレッチは行なわないという選択もありますが、ストレッチを行ったほうがメリットがあるので、積極的に動的ストレッチを行ったほうが良いでしょう。筋トレ後は静的ストレッチで疲労回復に努めましょう。
まとめ
筋トレは、高い負荷を与えることで筋肉を損傷・疲労させ、回復によって発達させていくものです。十分なパフォーマンスが発揮できない状態では、理想的な負荷を与えることができず、トレーニング効果も薄れてしまいます。
ストレッチは、用途に応じて変えていく必要があります。 過去の怪我などがあり、最初はどうしてもゆっくり伸ばしていく必要がある場合は、静的ストレッチから動的ストレッチへ移行していくことをおすすめします。
また、一つの種目に対するストレッチの時間を「30秒以内」にすれば、運動のパフォーマンスにさほど影響はありません。