たくましい体や美しく引き締まった体、いつまでも若々しく健康的な体、それぞれ理想の体型を手に入れるために筋トレが有効ということは、すでに多くの方が認識していると思います。しかしどんなに良い筋トレをしても、食事面がおろそかになってしまっては、筋トレの効果は半減してしまいます。
今回は目的別における筋トレのあとの食事法、とくに効果的な食事の内容や食べるタイミングについて紹介いたします。
筋肉に一番大切な栄養素は?
私たちの体に必要な栄養素は、大きく5つに分類されています。たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルの5つで、これらは「五大栄養素」と言われています。筋トレをして体づくりをするためには、まずこれらの五大栄養素をバランスよく摂る必要があります。
そのなかでも特に不足しがちなたんぱく質は十分に摂ることが大切です。それはたんぱく質が人間の体をつくっている成分の一つで、水分を除くと人体の約半分はたんぱく質からできているからです。
たんぱく質を多く含む組織には、血液、骨、酵素、皮膚、毛髪などがありますが、体のたんぱく質のうち約50%は、体を動かすための筋肉(骨格筋)に含まれています。
どれくらいの量のたんぱく質を摂ればいいの?
たんぱく質を1日にどのくらい摂取すればよいのかというと、一般人の場合は1日におよそ「体重1kgあたり0.8g」とされています。つまり、体重60kgの人は48gということになります。
しかしアスリートや筋トレをしっかりと行う人は「体重1kgあたり約2g」とされており、60kgの人は120gものたんぱく質を摂ることが目安となります。
ただしこれは食品そのものの量ではなく、そこに含まれるたんぱく質だけの量になります。
「アミノ酸スコア」が高い食品を選ぶ
たんぱく質を豊富に含んだ食品を選ぶとき、「アミノ酸スコア」が高い食品を摂るように心がけるとよいでしょう。
たんぱく質が分解された最小の単位をアミノ酸と言います。たんぱく質はこのアミノ酸が結合してできています。このアミノ酸は約20種あり、そのうち9種は体内で合成されないため、食べ物から摂らなくてはいけません。これらを必須アミノ酸といいます。
この必須アミノ酸のバランスは「アミノ酸スコア」という点数で評価され、点数が高いほどいわゆる「良質なたんぱく質」であるとされます。
動物性たんぱく質は全体的にこのスコアが非常に高く、たんぱく質源として優れていることを意味しています。代表的な動物性たんぱく質である、肉類、卵、魚類などはアミノ酸スコア100の食物です。
それに比べて植物性たんぱく質は、もっとも高いものでも大豆の86で、ジャガイモが68、精白米は65といったようにそこまで高いスコアの食物はありません。
しかし、肉類などの動物性たんぱく質ばかり摂っていると、脂質などの余分なエネルギーまで摂ってしまう恐れがあります。それに対して植物性たんぱく質は、脂質などがほとんど含まれていないので、余分なエネルギーを抑えてたんぱく質を摂ることができます。
また植物性たんぱく質では大豆に含まれるイソフラボンが、女性ホルモンに似た働きをするため、肌がきれいになるなど、女性にとって嬉しい作用があります
体を引き締めるための効果的な食事方法とは?
消費エネルギー>摂取エネルギー
まず前提として考えておきたいことは、食事制限だけでは体は引き締まらないということです。「体を引き締める」ために大切なことは、「適切な運動」と「バランスのよい食事」の組み合わせです。
食事のエネルギー制限をして体重を落としていけば、体脂肪は落ちていくでしょうが、同時に筋肉も落ちていくことになります。筋肉が落ちてしまっては、体の張りや美しさを失い、体力も落ちてしまいます。健康にとってもマイナスです。
また、筋肉を失うということは、基礎代謝も落ちることになるので、以前と同じように食べると、より太りやすくなるといえます。つまり極端な食事制限をして体重を落としても、食生活が元に戻ると、体重も元に戻る(または増加してしまう)、いわゆる「リバウンド」が起こってしまいます。
体を引き締めていくには、筋肉を維持(または増加)させながら、体脂肪を落としていくことが重要です。そのために適した運動は筋トレと有酸素運動です。そして体脂肪を落とすための食事については、まず摂取エネルギーよりも消費エネルギーのほうが多くなるようにコントロールする必要があります。
たんぱく質・炭水化物・脂質のバランスが大切
消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスを考えた時に気をつけることは、筋肉をはじめとする体のさまざまな組織の材料に欠かせない「たんぱく質」を十分に摂ることです。
また炭水化物も、運動のために必要なエネルギー源であり、これを極端に減らすべきではありません。炭水化物が不足すると筋肉のたんぱく質が分解されてエネルギー源として使われてしまうので、筋肉づくりにはマイナスになってしまいます。また炭水化物は脳の唯一のエネルギー源としても重要です
脂質の摂りすぎに気をつける
1日の摂取エネルギーを下げるために第一に制限したいのが、脂質です。脂質は炭水化物の2倍以上のエネルギーを持っていて、実際摂りすぎになっている(つまり体脂肪として体内に蓄積されてしまう)場合が多いからです。
脂質は調理に使う油のほか、ドレッシングやマヨネーズなどの調味料に多く含まれています。また肉や魚にも種類や部位によっては多く含まれていることも忘れてはなりません。油っこい料理をよく食べる人や肉や魚のおかずを多く食べる人は、脂質の取りすぎになっている可能性が高いといえます。
もちろん、炭水化物も摂りすぎている場合には、体脂肪として体内に蓄積されてしまうので、これも減らせばよいのですが、まずは脂質を減らすことで、1日の摂取エネルギーを下げることを考えてみるとよいでしょう。
たんぱく質をタイミングよく摂る
たんぱく質が活発に吸収する時間帯があります。それはトレーニング後と、睡眠中です。
『体づくりのゴールデンタイム』ともいわれる時間帯に食事や栄養をしっかり摂ることが大事です。
筋トレあとのゴールデンタイム
筋トレなどの激しい運動を行ったあとは、体内で成長ホルモンが盛んに分泌され、筋肉の合成が活発になります。この時間帯は筋トレ直後から1時間くらいまでの間とされています。このタイミングに合わせて十分なたんぱく質が供給されていれば、筋肉の成長を促すことができます。
といっても筋トレの直後にたんぱく質を含んだ食事を摂ればよいということではありません。食事での肉や魚などのたんぱく質の場合、食べたあと消化・吸収されて体づくりに利用できる状態になるまで3~4時間かかるので、ゴールデンタイムに間に合いません。
トレーニング後のゴールデンタイムを活かすためには、まずトレーニング前の食事が重要になります。つまり午後にトレーニングを行う場合、たんぱく質補給のポイントとなるのは、昼食です。夕方にトレーニングをするとしたら、昼食後、筋トレを始めるまでの間に間食としてたんぱく質を摂るのが効果的です。
サプリメント(プロテイン)を利用する
ゴールデンタイムをねらうためには、プロテインなどのサプリメントを利用する方法もあります。
スポーツ選手のたんぱく質補給を目的に開発されているプロテインは、一般の食品に比べて消化・吸収のスピードが速く、1~2時間程度で吸収されて体づくりに利用できる状態になります。したがって筋トレを始める1~2時間前にプロテインを飲んでおけば、筋トレ後のゴールデンタイムにたんぱく質を供給できるわけです。
また筋トレ直後にたんぱく質を摂る場合、吸収速度の速いペプチドのかたちで補給できるタイプのサプリメントを摂れば、ゴールデンタイムを活かせます。たんぱく質がアミノ酸分子2~3個のレベルまで分解された「ペプチド」は、30分程で吸収されるからです。
食欲がない時や食事時間の調整が難しい場合でも、サプリメントなら手軽にたんぱく質の補給ができます。
睡眠中のゴールデンタイム
筋肉の合成を引き起こす成長ホルモンは、睡眠時にも活発に分泌されます。とくにその分泌は、睡眠開始から30分~3時間くらいまでの間に盛んになることがわかっています。この時間もまたゴールデンタイムなのです。
ですからこのタイミングに合わせてたんぱく質を摂っておけば、筋肉づくりがより効率的に行われるといえます。トレーニング後と同様に、消化・吸収の時間を考えて就寝する2~3時間前にたんぱく質多く含み、脂質を控えた夕食あるいは夜食を摂ると良いでしょう。
筋肉づくりに重要なビタミン、ミネラル
筋トレのような運動をするうえで特に大切なビタミンは、ビタミンB群とビタミンCです。
ビタミンB群は、炭水化物や脂質などのエネルギー源が、体内でエネルギーに変わるときに使われます。またビタミンB群には、たんぱく質の利用を促進したり、ホルモンの合成を促進するといった働きもあります。
ビタミンCには、激しい運動によるストレスから体を守る役目があります。また筋肉の回復や成長を促進したり、骨と筋肉を結びつけている結合組織をおもに構成しているコラーゲンの生成にも不可欠です。筋トレを行うと、体に大きなストレスがかかりますから、ビタミンCを十分に摂り、不足しないようにしておくことが重要です。
ミネラルも、ビタミンと同様に不足なく摂る必要がある重要な栄養素です。ミネラルの中では、カルシウム、マグネシウム、カリウムが筋トレなどの運動を行ううえで重要です。
これらのミネラルは筋肉が収縮するメカニズムに直接かかわっています。不足すると強い筋力を発揮するのにマイナスになったり、場合によってはけいれんを起こしたり、足がつるなどの不都合を引き起こす恐れがあります。
鉄も重要なミネラルです。体内で酸素を運搬する役割を持っているのがヘモグロビンですが、鉄はたんぱく質とともにこのヘモグロビンの成分となります。
このようにビタミン、ミネラルともエネルギー源にはなりませんが、体にとって重要な栄養素です。そしてこれらの栄養素は、激しい運動をすることでより多く消費されやすいので、不足しないように気をつける必要があります 。
まとめ
筋トレの効果を最大限に引き出すには、適切な食事と栄養管理が欠かせません。筋肉の主成分であるたんぱく質は、1日の摂取量が一般人では体重1kgあたり0.8g、アスリートや筋トレを行う人では約2gが目安です。
特に「アミノ酸スコア」が高い食品、例えば肉、魚、卵などを選ぶことが重要です。一方で、植物性たんぱく質には脂質が少ないという利点があり、大豆に含まれるイソフラボンなど健康への追加効果も期待できます。
筋トレ後や睡眠中の「ゴールデンタイム」にたんぱく質を効率的に摂取することも効果的です。筋トレ後1時間以内に吸収されやすいプロテインやペプチドを摂取することで、筋肉合成が促進されます。また、就寝前には脂質を控えたたんぱく質中心の食事が適しています。
さらに、筋肉づくりにはビタミンB群やC、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルが必要不可欠です。これらの栄養素はエネルギー代謝や筋肉の回復を助け、運動の負荷によるストレスから体を守ります。
適切な栄養摂取を習慣化し、バランスを意識した食事を心がけることで、筋トレの成果を効率よく得られるだけでなく、健康的で引き締まった体を目指すことができます。