筋萎縮を抑えるための効率的な体づくりとは?

筋萎縮を抑えるには、運動と栄養

筋トレ等の運動をしない場合、筋肉は加齢とともに萎縮の一途をたどり、さまざまな弊害を引き起こします。これを『サルコペニア』『ロコモティブシンドローム』『フレイル』とよびます。

全身の筋肉量が低下し、体が自分の思いどおりに動かなくなり、介護の手が必要になってしまう状態に近づくことを意味しています。今や、「人生100年時代」とよばれ、今ある筋肉をどれだけ強化するか、または維持するかが課題となります。

今回は、筋肉量を維持するための筋トレ強度や頻度、また筋委縮が起こりやすい方の特徴をお伝えしていきます。

筋委縮の概要

筋委縮を簡単にお伝えすると「筋肉が痩せること」です。

筋委縮には病的な場合もありますが(筋委縮性側索硬化症:ALS等)、今回は「廃用性筋委縮」と言い、筋肉を使わなければ低下するということに対する内容としています。

サルコペニア

サルコペニアとは、加齢に伴う筋力低下のことです。

25歳~30歳頃から進行し、少しずつ筋力が低下します。
また、60歳を超えると筋力低下は一気に加速します。

サルコペニアにより低下する筋肉は、全身の筋肉のなかでも、背中やお腹、太もも、お尻といった大きな筋肉が低下するのが特徴です。これにより、普段、当たり前のようにできていたことが困難になり、生活が不自由に感じるようになります。つまずきやすい、転びやすい、歩くスピードが遅くなる、疲れやすいといった症状があります。

ロコモティブシンドローム

「運動器症候群」と言われ、体を動かすために関わる機能が低下している状態を指します。

筋力低下や体力低下により機能が低下しているケースもあれば、骨粗鬆症や変形性関節症(股関節・膝関節)、関節リウマチ、骨折、腰痛、肩こりにより生活が不自由になる場合もあります。

フレイル

フレイルとは、「年齢に伴い筋委縮が進み、筋力、体力、心身の活力が低下した状態」のことです。フレイルは「虚弱」「脆弱」「老衰」を意味する言葉です。

また、フレイルには、筋力低下による身体的フレイルのほかに認知機能低下や抑うつ症状などによる精神・心理的フレイルや社会活動への参加や家族、友人、知人との交流の機会が極端に減るなど、社会とのつながりが脆弱な状態である社会的フレイル、口腔機能の低下や、食の偏りによるオーラルフレイルも含みます。

これらのさまざまなことが相互に重なり合うことで、精神機能の低下が原因でフレイルとなります。特に高齢者は「喪失体験」が多き起きますので、精神機能の低下に影響しています。筋力・体力の喪失、視覚と聴覚の喪失、病気や障害による健康の喪失、近しい人の死別による喪失、社会的役割の喪失など、さまざまあります。

活力を失い、疎外感、孤独感により家に閉じこもりがちになり、筋力や体力を失うといった負のサイクルに陥り、要介護状態へと徐々に近づいていきます。

筋萎縮の概要

筋力量を維持するためには?

筋肉量を維持するには、「運動と栄養の両輪が重要」になります。

運動だけでは、筋肉を合成する材料(栄養)がなく、筋肉を構築することができません。また、栄養だけ取っていても、筋肉や骨格に対する刺激(運動)がないため、筋肉を構築することができません。どちらかが欠けてしまうと体づくりは困難を極めます。

では、具体的にどのような方法で、筋委縮を抑えるのかをお伝えいたします。

筋委縮を抑えるための筋トレとは?

先にもお伝えいたしましたが、体のなかで真っ先に筋力低下を起こす部位は『抗重力筋』と言われる、体幹部の筋肉になります。お腹、背中、太もも、お尻の筋肉になります。

これらの筋肉を、もっとも効率的に鍛えることのできる筋トレとしては、ズバリ『スクワット』になります。ただし、話はそんなに簡単ではなくて、正しくは「股関節を中心とした正しい体の使い方で行うスクワット」を行う必要があります。

まずは、今現在、どの筋肉や関節を使っているかを確認し、正しい動作に修正する動作改善が必要になります。ほとんどの場合、誤った動作でスクワットを行っているケースが多いため、修正が必要になります。

また、仮に正しい動作を行っていたとしても、正しい動作を行っているという認識がなく行っているケースが多いので、体の使い方の理論をしっかり学ぶことも重要なポイントとなります。

自己流で筋トレを行い、正誤を区別することは困難ですので、はじめは専門知識のあるパーソナルトレーナーの指導を受けることをお勧めします。※参考動画にて動作をご確認ください

筋委縮を抑えるための栄養とは?

筋発達をさせるために必要となる栄養素は、ズバリ『たんぱく質』です。

ギリシャ語のプロテイオスが語源で、「もっとも重要」という意味の栄養素になります。特に、高齢者は、この「もっとも重要なたんぱく質」の摂取が極端に少なくなっています。普段の食事では、肉や魚、卵、乳製品、大豆を意識して食事のメニューに取り入れましょう。

たんぱく質を摂る量ですが、具体的には、体重1㎏当たり1gが目安となります。(たんぱく質の摂取量には個人差がありますので、最低摂取量になります)

「たんぱく質は取れたら取れただけいい」ので、少しずつ摂取量を増やして、たんぱく質を摂取し、筋力も鍛えていくことが、筋委縮を抑えるためには重要な要素となります。

たんぱく質の摂取の方法は、正直食事からだけでは難しいので、プロテインドリンクをうまく活用することをお勧めします。一杯のプロテインドリンクで、タンパク質が20~30g摂取でき、手軽です。

筋委縮を抑えるための筋トレ頻度・強度

では、筋委縮を抑えるため、筋トレはどの頻度で行うべきで、どの程度の強度で行えばよいのかをお伝えいたします。

筋委縮を抑えるための筋トレ頻度

筋トレをどの程度の頻度で行うべきなのか迷う方も多いのではないでしょうか。

端的に分かりやすく言うと、「毎日行うべき」です。

「筋トレは、毎日行ってはいけない」
「筋肉痛の時には、筋トレを行ってはいけない」
「オーバーワークで、反対に筋委縮が起きるのではないか」
などの疑問をお持ちの方もいらっしゃることかと思います。

これに対しての答えとしては、
「筋委縮を抑える目的で、これから筋トレを行おうとしている方で、オーバートレーニングになるほどの高強度で筋トレを行うことは、まずできない」です。

安心して、毎日スクワットを行ってください。

スクワットも、しゃがむ深さで筋トレ強度を調整することが可能です。深くしゃがめば、それだけ負荷が高まります。浅くしゃがめば、負荷が軽くなります。

もし、前の日に行ったスクワットで筋肉痛になったり、疲労が残っているのであればできる範囲で行う等の調節を行いながら、毎日行いましょう。

また、慣れてくると自重だけでの負荷では、少々刺激として少なくなりますので、パーソナルトレーニングジムなどに通い、普段にない負荷を体に与えることもお勧めです。

お勧めの筋トレ頻度は、「週一回パーソナルトレーニングジムに通い、体の使い方を学び、特別な刺激を体に与え、そのほかの日は、学んだことの実践として、空き時間などにスクワットを行う」というスタイルが良いのではないでしょうか。

筋委縮を抑えるための筋トレ強度

筋トレ強度をわかりやすく簡単にご説明すると、「自分の体重の負荷を担いでスクワットを行う」ことができると筋トレは非常に有利に進みます。

もちろん、もっと重量を増やせる場合は、さらに筋トレ効果は倍増します。この程度の筋トレ強度が週一回でもあれば筋委縮は抑えられます。むしろ筋肉は強化されます。

ただし、これはあくまで目安となり個人差がありますので、われわれパーソナルトレーナーは決して無理に重いものを持たせるようなことはしません。数多くのセッションのなかで様子を見ながら、徐々に負荷を高め、状況を判断し、確実に重いものを持てると判断した時のみ行っていきます。

「自分の体重の負荷を担いでスクワットなんて絶対無理!!」と、やる前は皆さま、口をそろえて仰います。しかし、行ってみると「意外と簡単に持てた」「毎回、重たいけど段々慣れてきた」など、実際に持ち上げている姿を目の前で何度も見てきました。自分の体重を担いでスクワットを行うということは、決してハードルの高すぎる目標ではありません。

しかし、大切なことは「簡単に持てなくてはいけない」ということです。そのためには、股関節を中心とした正しい体の使い方でスクワットを行う必要がありますので、第一に動作改善をすることがとても重要になります。

辛さや痛みに耐えながら、むりやり重いものを持ち上げても、期待するほどの効果は見込めないということです。

まとめ

筋萎縮を抑えるには、運動と栄養の両輪が重要となります。どちらかが欠けてしまうと効率的な体づくりは不可能となります。運動は「スクワット中心」で栄養は「たんぱく質中心」を意識して実践してみましょう。

体づくりをなにもしていない場合、年間で筋肉量は1%ずつ落ちていくと言われています。
たったの1%と思わないでください。

「30歳の時の筋力が、80歳になった時には50%落ちている」ということになります。体づくりはできるだけ早めに行うことをお勧めします。

筋力が落ちてから体づくりをはじめるのではなく、落ちる前に行うことが理想です。そして、闇雲に行うのではなく、パーソナルトレーナーなどの体づくりの専門家の指導を受け、効率よく行うことをお勧めします。

参考動画

【自宅トレーニング】正しいスクワットが簡単にできるやり方
【自宅トレーニング】スクワット応用編 1,2,3スクワット
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