「スポーツの身体づくりの基本は、走ることである」と、多くの方がそのように考えていると思います。しかし、それは、正しい走り方をしてこそ、スポーツのための身体づくりの基礎となります。間違った走り方をすれば、スポーツをする上での害になりますので、スポーツの上達も望めません。
特に、アマチュアのスポーツ愛好家の方たちは、間違った走り方をされている方がとても多いです。「数キロ走ると膝が痛くなる」「走った翌日は太ももの前が筋肉痛になる」などは、すべて間違った走り方で身体を痛めつけているということになります。痛みなどで走ることを楽しめなくなったランナーも少なくないと思います。
そこで今回は、正しい走り方のフォームについて解説していきます。
正しい走り方とは?
走る時の正しいフォームとは、「力みのない」フォームです。
正しい走り方は、頭から足先まで全身を使って行います。
「頑張って走ろう!」という気持ちは大切ですが、それが力みとなってしまうと、余計な体力を消耗してしまいます。ふくらはぎを使い地面を蹴って走ったり、肘を大きく動かして腕を振って走っていると、力んだフォームになっています。
もちろん、足や腕を動かす意識は大切です。しかし、正しい身体の使い方は連動性が重要になるので、足を動かすには「股関節」を、腕を振るには「肩甲骨」を使い、足と腕はリラックスした状態が正しいフォームになります。
正しい走り方を身につけることによるメリット
走るために必要な筋肉がつく
正しいフォームで走れるようになると、走るために必要な筋肉が付きます。
全身が連動するので、全身の筋肉が付くのですが、そのなかでも「お尻」「太ももの裏」「内もも」が特に発達します。とは言っても、筋肥大するわけではありません。どちらかというと、引き締まっていくという感じになります(トップランナーのような身体です)。
姿勢・スタイルが良くなる
正しい走り方ができると、全身が引き締まっていくのでスタイルが良くなります。
フォームを維持するので自然と体幹部が強化され姿勢も良くなります。また、効率よくエネルギーを消費することができるので、ダイエットや健康維持にも効果的です。
ケガをしにくい身体になる
正しいフォームで走れると、必要な筋肉、関節をスムーズに使いながら走ることができるので膝痛などのケガをしにくくなります。
身体のバランスも整うので、肩こり、腰痛などの改善にも効果が期待できます。
長い距離が自然と走れる
力みのない正しいフォームで走れると、むだなエネルギーを消費しないので自然と長い距離を走れるようになります。
効率の良い身体の使い方ができるので、日常生活においても疲れにくくなります。
自然と心肺機能が向上する
正しいフォームで走れると、長い距離を走れることによって、自然と心肺機能が向上します。
走る動作は、無理なく適度に心臓や肺に負担をかけることができる「有酸素運動」の一種なので、ゆっくり走るだけでも、心肺機能の向上が期待できます。
正しいフォームを身につけるメゾット
重心移動
ランニングメソッドには、さまざまな理論がありますが、重要なのは「重心移動を上手に行って走る」ということです。
走る動作は、地面を蹴ったりするのではなく、体を前に倒し続けていき(重心移動)、そこに足が交互に地面に接地して、その反力も加わって前に進んでいきます。
まず、まっすぐ立った姿勢から、体を前に倒れるように傾けていきます。踵から頭のてっぺんまで、まっすぐの棒のように傾けていきます。あるところまでいくと、「オットット!」という感じで、自然と片足が前にでます。その位置が走る際の足の接地場所です。
この時、自然と体の重心の真下に足がくるはずです。この「オットット!」の連続で前に進んでいくイメージです。体の傾きを強くすればスピードは上がり、逆に体を起こしてきて傾きを弱くすれば、スピードは下がります。このように、スピードは「体の傾きでコントロール」していきます。
フラット接地
効率よく身体を使う走り方に適した接地方法は、足裏全体での接地(以下、フラット接地)です。
よく、アフリカのランナーがつま先で接地していると言われますが、これはほんの一部のランナーだけで(だいたい100人に一人くらいの割合と言われています)、大半はフラットで接地していることがわかっています。
つま先接地は、ふくらはぎやアキレス腱がかなり発達していないと衝撃に耐えられません。不整地などを裸足で走るアフリカの環境がそうさせているので、日本人には難しいとされています。
そして、かかと接地はそのたびに、毎回ブレーキをかけながら走るので、たいへん効率が悪く、脚への衝撃も強いため、膝痛などのケガを発症しやすくなります。
しかし、フラット接地は持久力に富み、推進力を生み出す「お尻や太もも裏の筋肉」を使って走れるので、長く走ることができます。
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まとめ
正しいフォームで走れると、長く走れるだけでなく、ケガや疲労しにくい身体を手に入れることができます。
膝の痛みや、その他の痛みに耐えながら走るというのはただの苦行になります。それでは、走ることが楽しくないですし、継続も難しくなってしまいます。正しいフォームは、無理なく楽に走れるので、一度身につけば、自然に身体が動きます。
フォームは、一朝一夕では身につきませんので、普段の練習の時から常にフォームを意識することです。重要なことは「お尻から太もも裏の筋肉を使って走れるか」ということです。それには、重心移動とフラット接地を使って、正しいフォームで走ることがとても大事なのです。