
筋トレを行ううえで、栄養補給は非常に大切な要素となります。手軽に摂取でき、かつ筋トレの効果を向上させるために蜂蜜を摂取する方が多くいらっしゃいます。筋肉増強や疲労回復、腸内環境を整える、風邪予防など、さまざまな効果が期待できます。
今回は、蜂蜜の筋トレに対する効果や、正しい摂取方法をお伝えしていきます。
蜂蜜の概要
蜂蜜はその名のとおり、蜂(ミツバチ)が花の蜜を採取し、巣の中で加工・貯蔵したものを指します。
蜂蜜は糖類の一種で、糖類の中でも単糖類に分類されます。その栄養成分の約80%がブドウ糖と果糖で構成されており、即エネルギー源として利用される特性を持っています。
しかし、蜂蜜が砂糖と同じ糖類に分類されるからといって、摂取による体への影響はまったく異なるものです。同じ蜂蜜でも結構違います。
蜂蜜の特徴や効果を理解するには、まず砂糖(精製糖)を摂取した場合の体への影響について知ることが重要です。
ここでは、蜂蜜のメリットとデメリットをご説明する前に、砂糖の体への影響について詳しく解説します。

砂糖(精製糖)を摂取することによる体への影響
砂糖の原料は、サトウキビとてんさいが利用されています。
そして、砂糖は製造方法により、『精製糖』か『含蜜糖』に分けられます。
料理によく使われる白砂糖、上白糖、グラニュー糖、三温糖などは精製糖です。黒砂糖などの自然に近い状態で、原材料の風味が強く残っているものは、含蜜糖となります。
どの砂糖が良いとか悪いとかいうことではなく、砂糖を摂取することで、体に対してどのような影響があるのかということを知っておく必要があるかと思います。
砂糖を摂取することにより、血糖値とインスリンレベルの急上昇が起きます。摂取後、すぐに血糖スパイクが起こることにより、血糖値はその後急激に急降下し、体の疲労感を感じます。
また、砂糖の摂取により、老化を進める原因ともなるAGE(最終糖化産物)がつくられます。
AGEは体内のたんぱく質が糖とくっ付くことで、たんぱく質本来の働きを低下させる毒性の強い異物です。タンパク質の働きが阻害されることで、さまざまな生体反応が障害を受けます。また、AGEは体中の細胞や臓器で作られ、体の慢性炎症を大幅に促進させます。
筋トレにより筋肉を大きくする過程では、筋たんぱく合成が分解される量より上回らなくては、筋発達はしません。分解率を大幅にあげてしまう炎症状態は、筋肉を反対に萎縮させてしまうため、注意が必要です。

蜂蜜のメリット
砂糖を摂取することでの体への影響をお伝えしましたが、だからといって甘味のない食事では味気がなく、食事への満足度や幸福感が大きく低下し、生活の質も損なわれてしまいます。そのような時に役立つのが蜂蜜です。蜂蜜は砂糖の代替として優れた特性を持ち、健康的な甘味料として活用できます。ここでは、砂糖を蜂蜜に置き換えるメリットを3点ご紹介します。
砂糖に比べてエネルギー変換速度が速い
一般的な砂糖はショ糖という、ブドウ糖と果糖からなる二糖類で構成されています。
一方、蜂蜜はというと、花蜜をお腹に蓄え、巣に戻るまでの間に、ミツバチのもつ酵素により、体内でショ糖はブドウ糖と果糖が分解されます。ブドウ糖と果糖を総称して「転化糖」と言います。
このような糖類は単糖類と言い、構造が単純なため、体内に摂取すると20分ほどで吸収されます。そのため、筋トレ前の栄養補給に非常に効果的とされています。
筋肉の合成を高める
筋トレ後の体は筋肉を合成させる材料を求めています。それがたんぱく質になります。たんぱく質をすばやく摂取することにより、筋肉の合成を高める効果や、疲労回復効果を高めることができます。
しかし、たんぱく質だけではなく、さらに蜂蜜を摂取することにより、その効果をより高めることが可能になります。
蜂蜜に限らず、そのほかの糖類を摂取することで、すい臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。インスリンが出ることにより血液中の糖分を筋肉内に取り込み血糖値を下げ、コントロールをしているのです。その働きが実は糖分だけではなく、たんぱく質や脂質にも働きかけています。
要するに、たんぱく質と糖質を同時に摂取することで、筋肉にそれらの栄養素を効率よく取り込みやすくなるのです。
では、そのほかの糖類でもいいのかということにもなりますが、先にも述べたとおり、蜂蜜はすでに分解されたブドウ糖と果糖になりますので、すぐにインスリンが分泌され、すばやく吸収ができるため、特にお勧めアイテムとなります。筋トレ後は、プロテインに蜂蜜を入れて飲むといいでしょう。

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安眠効果を高める
われわれ動物は、睡眠時に傷ついた筋肉を修復したり、再合成させています。よく眠ることは、筋トレをしている方に限らずすべての方にとって重要なポイントとなります。
通常、寝ている時というのは、血糖値が下がらないような仕組みが人の体には備わっています。しかし、日常生活においてストレスを強く感じるようなことがあると、寝ている時にも低血糖になることがあります。
低血糖状態になると副腎皮質からコンチゾールというストレスホルモンを分泌し、血糖値を上げようと肝臓に働きかけます。コンチゾールは、ストレスホルモンとよばれ、体を興奮させ、眠ることができずに睡眠の質を下げます。
そこで、寝る前にティースプーン一杯の蜂蜜を舐めると寝ている間、血糖値が緩やかに上昇し、血糖値を安定させ、安眠効果が高まります。

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蜂蜜のデメリット
蜂蜜を摂取することによるデメリットは少ないですが、注意すべき点はいくつかあります。まず、蜂蜜は天然の甘味料でありながら、摂取量が過剰になると消化不良を引き起こす可能性があります。特にお腹が弱い人は、蜂蜜を大量に摂取することで下痢や腹痛を感じることがあります。また、胸やけや吐き気といった症状が現れる場合もあるため、摂取量には注意が必要です。
さらに、蜂蜜は100gあたり約294キロカロリーと比較的高カロリーな食品です。そのため、いくら体に良いとされても、大量に摂取するとエネルギー過多となり、肥満の原因になることがあります。特に健康目的で日常的に蜂蜜を摂取している人は、一日にどれくらい摂取しているか意識することが大切です。
一般的には、一日の適切な摂取量は15g~30gとされています。この量はスプーン1~2杯程度に相当し、ヨーグルトに混ぜたり、トーストに塗ったりする際に無理なく取り入れられる範囲です。体に良いからといって、過剰に摂取すると逆効果となる可能性があるため、適量を心がけましょう。
また、蜂蜜を摂取した後に、体に異常を感じた場合は、摂取量を減らす、もしくは摂取を控えるようにするのが望ましいです。特に、アレルギー体質の方や消化器系が敏感な方は慎重に摂取することが重要です。健康効果を最大限に活かすためにも、自分に合った適量を見つけ、バランスの良い食生活を心がけることが大切です。
蜂蜜の種類
蜂蜜は、形状や加工方法により「純粋はちみつ」「精製はちみつ」「加糖はちみつ」の三種類に分類されます。純粋はちみつは天然成分100%で栄養価が高く、精製はちみつは加工食品向けで栄養が少なく、加糖はちみつは砂糖などが加えられ安価ですが栄養価は低いのが特徴です。それぞれの用途に応じて選びましょう。

純粋はちみつ
純粋はちみつは、天然成分100%の蜂蜜で、最も自然に近い形の製品です。この蜂蜜は、厳格な基準を満たす必要があります。
具体的には、水分含有量が22%以下、ブドウ糖と果糖の含有量が60%以上、ショ糖含有量が5%以下であることが求められます。
また、人工的な加糖や精製が行われていないため、酵素やミネラル、ビタミンなど本来の栄養素が豊富に含まれています。
そのため、健康や美容の目的で蜂蜜を選ぶ場合は、純粋はちみつが最適と言えるでしょう。しかしながら、自然のままの製品であるため、価格は他の種類と比較して高価になることが一般的です。
精製はちみつ
精製はちみつは、蜂蜜から色、香り、そして栄養素を取り除いたものです。このプロセスにより、本来蜂蜜が持つ酵素やビタミン、ミネラルはほぼ失われています。
精製された蜂蜜は、加工食品や化粧品の材料として利用されることが多く、その特性上、見た目が均一で扱いやすいという利点があります。
ただし、栄養価を重視する場合には不向きで、料理や加工のために使うのが一般的です。価格は純粋はちみつに比べて安定しており、比較的手に入りやすいのが特徴です。
加糖はちみつ
加糖はちみつは、蜂蜜に人工甘味料である砂糖や水飴が加えられた製品です。そのため、見た目や食感は純粋はちみつと似ていますが、栄養面では全く異なります。
加糖はちみつには、蜂蜜本来の酵素や栄養素がほとんど含まれていないため、健康効果を期待することは難しいです。ただし、その分価格は非常に安価で、手軽に購入することができるため、コストを重視する用途には適しています。

まとめ
蜂蜜は、筋トレや健康に役立つ効果が期待される一方で、選び方や摂取量には注意が必要です。純粋はちみつは天然成分100%で栄養価が高く、エネルギー補給や筋肉合成、疲労回復に効果的です。特に筋トレ時には、吸収が速い単糖類が含まれているため、効率的な栄養補給に適しています。
一方、精製はちみつや加糖はちみつは栄養価が低く、健康効果を期待するには不向きです。また、蜂蜜は適切な量を守らないと、カロリー過多や消化不良を引き起こすことがあります。一般的な摂取目安は1日15~30gで、摂りすぎには注意しましょう。
健康や筋トレの効果を最大化するためには、自分に合った蜂蜜を選び、適量を摂取することが重要です。正しい知識を持って活用することで、日々の生活やトレーニングの質を向上させることができます。