
何かと忙しい現代に生きる私たちは、ちょっとしたことで心身のバランスを崩し、疲労を感じる人が少なくないと思います。
「何となく調子が悪い」「疲れやすい」「気力がわかない」「情緒不安定」などといった、疲労感を感じるのは、不規則な生活や、食事、運動不足、睡眠不足、ストレスや怒り、過度な喫煙や飲酒、などが原因だったりもします。
今回は、疲労についてその理由やさまざまな原因について解説いたします。
疲労の症状と種類
【疲労の症状と種類について】
一般的に疲労というのは、さまざまな要因でストレスが長く続くことにより、機能が低下する現象です。その現象として三つに分類されています。
〇肉体的疲労
肉体的な疲労とは、肉体的にストレスを感じることです。環境や生活習慣などにより肉体的に疲労を感じています。
暑すぎる、寒すぎる、睡眠が十分に足りていない、満員電車通勤、長距離運転、長時間の労働、また長時間の運動などや不規則な生活などが原因となり肉体的疲労を起こします。

〇精神的疲労
精神的な疲労は、トラブルがあるとストレスになります。仕事関係のトラブルでは、就職、転職、失業、退職、残業、夜勤など。また人間関係のトラブルでは、結婚、出産、離婚、大切な人との別れや、離別・死別などです。
最近の新型コロナ感染症などで、将来への不安などもストレスになる場合があります。環境が変化することで人間はストレスになる場合があるようです。またモラルハラスメントなども大きな問題となっていますね。

〇神経的疲労
長時間のデスクワークなどでパソコンを見続けることがストレスとなり神経を疲労させます。長時間の目を酷使することで感じる目の疲れ(眼精疲労)は、脳の疲れで、脳の疲労ともいいます。
また、目の疲労は度の合わない眼鏡・コンタクトでもおこります。
〇慢性疲労症候群
慢性的な疲労が長期に続いているにもかかわらず、身体の病気が見つからない場合に診断されます。慢性疲労症候群は、精神疾患に合併することもあります。
慢性疲労症候群(CFS)は比較的新しくできた概念なので、医師の中でもあまり認識されていない病気になっています。慢性的な疲労感により、日常生活にも大きな影響をおよぼす疾患です。
疲労感は誰しも感じることがあるので、ただ大げさにいっているにすぎないと思われがちです。慢性疲労症候群はただの疲労感が強い病気ではなく、休養をとるだけでよくなるものではありません。しっかりと診断して治療を意識していく必要があります。

疲労と自律神経について
〇自律神経とは
自律神経とは、もちろん「神経」の一つです。「神経 = 情報を伝える道」ですが、この「情報の道」には、『中枢神経』と『抹消神経』の二つがあります。
中枢神経は、脳とそれにつながって腰まで伸びている神経の束である脊髄の総称です。
一方、末梢神経とはこの中枢神経から体の隅々まで張り巡らされている神経のことを指しますが、これはさらに二つに分けられます。
一つは『体性神経』。
「痛い」や「熱い」「冷たい」「硬い」や「軟らかい」などの感覚脳に伝える「知覚(感覚)神経」と手足の筋肉など体を動かす指令を脳から届ける「運動神経」で構成されます。
そして末梢神経のもう一つの系統が『自律神経』です。
自律神経は、血管や心臓をはじめとする内臓器官すべてに伸びていて、それらを司る役割を担っています。心臓や血液の流れは自分で動かしたり、止めたりすることはできません。
つまり、自律神経は自分の意志でコントロールできない。そこが体性神経との大きな違いです。眠っている時に呼吸が続いているのも、外気の温度に関わらず、体温を約36度に保つことができるのもすべて、自律神経が365日、24時間フル稼働しているおかげなのです。

〇自律神経は心と体をつなぐ「ライフライン」
健康とは、「体の細胞の隅々まで、質の良いきれいな血液が滞りなく流れている状態」だと言えます。私たち人間の体は、約37兆個の細胞が集まってできています。その細胞の一つひとつがきちんと機能してこそ、私たちは健康な毎日を送ることができます。
個々の細胞をきちんと機能させるためには、十分な栄養と酸素が必要になります。私たちは栄養と酸素を食事と呼吸によって体内に取り込み、腸と肺で吸収し、血液に乗せて各細胞に運んでいるのです。こうして細胞の隅々まで質の良い、きれいな血液が流れれば、すべての臓器の機能が十分に働きますから、当然体調も良くなります。
たとえば、腸の働きがよくなれば、便秘に悩まされることがなくなりますし、肝臓がきちんと機能すれば、疲れにくくなります。肝臓と血液は肌や髪の毛、爪などにも影響を及ぼすので、肌のくすみやたるみ、髪の毛のパサつき、爪のツヤも改善され、若々しさを維持できます。そして脳もまた、良い血液が流れれば、活性化します。
このように、血流は健康維持において非常に重要な役割を担っているわけですが、この血流をコントロールしているのが、自律神経なのです。つまり、自律神経は、体の好不調を左右する命綱、ライフラインと言っても過言ではないのです。
〇自律神経にはアクセルとブレーキがある!?
自律神経は『交感神経』と『副交感神経』の二つに分けられます。
交感神経は、車で言えば「アクセル」です。アクセルを踏み込むと加速するように、交感神経が働くと、血管がキュッと収縮し、心拍数や血圧が上昇します。気分も高揚し、アグレッシブな状態になります。
これに対して「ブレーキ」の役割を果たすのが副交感神経です。こちらは血管をゆるませて心拍数や血圧を低下させ、精神をリラックスした落ち着いた状態に向かわせます。
アクセルだけでは車は暴走し、ブレーキだけでは、動きません。両方が適切に機能しなければ車は安全に運転することはできません。自律神経系も同じように、交感神経と副交感神経のどちらか一方が過剰に優位になってしまう状態は好ましいことではありません。
交感神経の働きが過剰になれば、血流が悪くなり、免疫力も低下するし、副交感神経が過剰に働いてもやる気が出ず、疲労感が続いたりします。両者が適度なバランスを、高いレベルで保ってはじめて、私たちの体と心は健康でいられるのです。

疲労とストレスについて
ストレスを受けやすいかどうかは環境や性格などによっても個人差があります。
体の内側の疲労(副腎などの内臓疲労)を起こしやすいストレスに弱い人の特徴として、「頑張りすぎ」の人があげられます。また、もともとストレスに強い人でも許容量を超えて無理をしていると、ストレスに弱くなってしまいます。
そのほかにも睡眠不足や夜更かし、疲れている時に甘い物や刺激物を多めに摂取する人、ファストフードを頻繁に食べる人、市販薬やアルコールを常飲している人などもストレスをため込みやすい傾向にあります。
また都会で生活をしている人に比べて、田舎暮らしの人は、副腎疲労などの内臓疲労を患っても、回復が格段にはやいという特徴もあるようです。やはり、都会は満員電車をはじめとするストレスの多い生活であるようです。
ストレスはため込む前にできるだけ発散させるようにしましょう。大きな声で歌ったり、お気に入りの入浴剤を入れてのんびりと入浴したり、夢中になれる趣味に没頭したり、ヨガなどもとてもいいリラックス法だと思います。自分の好きなことを思い切りやってストレスをうまく発散させると、心身ともに健やかに日々過ごせるはずです。

疲労が溜まりにくい習慣 10選
疲労は心身のバランスが崩れることで生じるもので、日常の習慣を見直すことで予防や軽減が可能です。以下では、疲労を溜めにくい10の習慣をご紹介します。
1. 規則正しい生活を送る
体内時計を整えるために、毎日同じ時間に起床し、同じ時間に寝ることを心がけましょう。一定の生活リズムを保つことで、自律神経のバランスが整い、疲労感を軽減できます。
2. 十分な睡眠を確保する
疲労回復には質の良い睡眠が不可欠です。寝る前にスマホやテレビなどのブルーライトを避け、リラックスできる環境で眠りましょう。目安として7~8時間の睡眠が理想的です。
3. バランスの取れた食事を心がける
栄養バランスの良い食事は、体と脳の疲労を回復させます。特に、ビタミンB群、マグネシウム、鉄分などを含む食品を意識的に摂取しましょう。また、過度なカフェインや糖分の摂取は避けることが大切です。
4. 適度な運動を取り入れる
ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、血流を促進し、疲労を溜めにくい体を作ります。特にデスクワークが多い人は、1時間に1回立ち上がり、体を動かす習慣をつけましょう。
5. ストレスを溜めない工夫をする
ストレスは心身に大きな負担をかけます。大声で歌う、趣味に没頭する、ヨガや瞑想をするなど、自分なりのリラックス方法を見つけて実践しましょう。
6. 適切な休憩を取る
長時間の作業は、脳や体に負担をかけます。1時間に5~10分程度の休憩を挟むことで、集中力を維持し、疲労感を軽減できます。
7. 水分をこまめに摂る
脱水症状は疲労を感じやすくします。1日1.5~2リットルの水を目安に、こまめな水分補給を心がけましょう。カフェインやアルコールは控えめにし、純粋な水やハーブティーがおすすめです。
8. 眼精疲労を予防する
パソコンやスマホを長時間使用する際は、定期的に目を休めましょう。20分ごとに遠くを見たり、目を閉じたりすることで、眼精疲労や脳の疲労を防げます。
9. 深呼吸を取り入れる
深呼吸は自律神経を整えるのに効果的です。腹式呼吸を意識し、ゆっくりと深く息を吸い、吐くことでリラックス効果を高め、疲れにくい体を作れます。
10. 快適な環境づくり
室温や湿度を適切に保つことも疲労を防ぐポイントです。乾燥しすぎないように加湿器を使ったり、寒暖差に注意して快適な環境を整えましょう。特に睡眠環境を整えることで疲労回復が促進されます。
疲労を溜めないためには、生活習慣や環境を整えることが重要です。これらの習慣を日常生活に取り入れ、心身ともに健やかな毎日を送りましょう。特に、睡眠、栄養、ストレス管理を意識することで、疲労を溜めにくい体質を作ることができます。

番外編 疲労回復とセロトニンの関係性
セロトニンは脳内で分泌される神経伝達物質で、心身の安定やリラックス、幸福感をもたらす役割を果たします。特に自律神経やホルモンバランスの調整に深く関与しており、疲労回復に重要な働きを担っています。
セロトニンは日中、交感神経を活性化させることで集中力や活力を高め、夜間には副交感神経の働きを促進し、リラックスした状態を作り出します。このリズムが整うことで、質の良い睡眠が得られ、脳と身体の疲労回復が促進されます。
また、セロトニンはストレスの軽減にも効果的です。ストレスがたまると自律神経が乱れ、交感神経が過剰に優位になることで疲労感が蓄積しますが、セロトニンが十分に分泌されるとこれを抑制し、心身の回復を助けます。
セロトニンの分泌を促すには、適度な運動や日光浴、バランスの取れた食事が有効です。特にトリプトファン(大豆製品や乳製品に多く含まれる)が豊富な食品を摂ることがセロトニン生成を助け、疲労回復に繋がります。
このように、セロトニンは身体的・精神的疲労の回復において欠かせない存在です。
まとめ
現代社会では、若者や働き盛りの中年の人にも広く疲れやストレスが蔓延しているように見えます。その疲れやストレスについてのメカニズムや原因を知り、理解し、まずは受け入れることが大切です。
軽い運動やヒーリングなど自分なりのリカバリーや対処法を持っておくことで、ため込まないようにすることが心身のバランスを保つのに重要であると考えます。