今や国民病の代表的な一つとも言える肩こり。ねこ背同様に、肩こりに悩む人は後を絶ちません。ねこ背は痛みの自覚症状がないのでまだよいのですが、肩こりのつらさだけは我慢ができないという方も多いのではないでしょうか。
今回はねこ背と肩こり、ポイントとなる肩甲骨との関係性について解説していきます。
ねこ背になるメカニズム
〇ねこ背を左右する肩甲骨の位置
デスクワークなどで前傾姿勢をとり続けている人は、肩が前に出てくることによってねこ背になりがちです。肩が前に出ているねこ背は、肩甲骨が大いに関係しています。肩甲骨はほかの骨とは直接的につながらずに、浮いているような状態にあります。
背中がまるくなると、肩甲骨は背骨から離れて外側に開きます(これを外転といいます)。背中がまるくなったから肩甲骨が外側に開いたのか、肩甲骨が外側に開いたから背中がまるくなったのか。これは「タマゴが先か、ニワトリが先か」という問題に似ていて、相互に影響を与え合っています。
いずれにしても、ねこ背の人は、ほぼ例外なく肩甲骨が外側に開いていることが多いです。本来、肩甲骨の位置は、背骨から5~6cmの場所に位置しています。ねこ背になると肩甲骨は外側にいきますから、肩甲骨の内側と背骨の距離が離れてしまうことになります。肩甲骨が外側に開くと、上腕骨という腕の骨は内側に向きます。そのため、ねこ背の人が歩く姿をよく見ていると、手のひらが後ろに向いてしまいがちになります。
○肩甲骨周辺のハリ
肩甲骨の内側と背骨の距離が離れてしまうということは、肩甲骨と背骨をつないでいる菱形筋という筋肉が弱まっていることを意味します。
菱形筋はその名のとおり、ひし形の形をしており、体の表面からは触ることのできない内側にあるインナーマッスルです。この菱形筋が弱まるにつれて、肩甲骨と背骨をつなぎとめるのが難しくなり、肩甲骨は外側へと開いてしまいます。この時菱形筋は必要以上に伸ばされた緊張状態が続きますからその周辺にも負担がかかります。
肩甲骨の内側にハリを感じる人は、肩甲骨が外側に開いてしまっている証拠です。肩甲骨が外側に開くようになると、菱形筋や僧帽筋などの肩甲骨まわりの筋肉は、絶えず伸ばされる緊張状態が続きます。
筋肉の緊張状態が続くと、その部分の感覚が鈍くなり、さらに血液の循環も悪くなります。血液の循環が悪くなると、筋肉に十分な酸素や栄養が運ばれなくなります。その結果、老廃物や代謝物が蓄積されやすくなり、ハリやコリ、痛みなどを感じるというわけです。
また、日常生活のなかで運動不足が続くと、肩回りの筋肉はさらに弱まります。弱くなった筋肉は、結構不良などにより、さらに硬くなるので、つらい肩こりを助長してしまいます。肩こりがひどくなると、「痛み→筋肉の緊張→痛み」という負のサイクルが繰り返され、どんどん状況は悪化してしまいます。
簡単にできるねこ背チェック法
以下に自宅などでも簡単にできるねこ背チェック法を紹介しておきますので、ぜひ一度試してみてください。
手順①:壁の前に立つ
手順②:頭、背中、お尻、かかとの4点を壁にくっつける
※ この時に、身体の力を抜いて自然な状態で立つようにしてください。
この姿勢をとった時に、以下の3点をチェックしてください。
①壁から頭が離れる
②壁からお尻が離れる
③壁から頭やお尻は離れなかったが、どちらかが離れていたほうが楽に立てる
上記チェック項目で①と②どちらかにチェックがついた場合は、あなたはすでにねこ背である可能性が高いです。①と②にはチェックがつかなかったものの、③にチェックがついた場合は、あなたはねこ背予備軍である可能性が高いです。意外にねこ背予備軍だったという方も多いのではないでしょうか?
ねこ背や肩こりを解消する方法
○筋トレやストレッチ、運動による改善法
ねこ背や肩こりは筋肉や関節などの運動器、つまり体の使い方に原因があることが主ですので、その原因となっているトラブルを解決することで改善につながります。
実際には、首から肩にかけてと肩甲骨周りの筋肉を、適度に動かすことがポイントです。運動はもちろん、マッサージやストレッチなどで血行を良くして、緊張をほぐすのも効果的な方法です。
〇長時間の同じ姿勢はさける
頭と腕は、意外に重たいパーツです。頭はボウリングのボール1個分ほどの重さがありますし、腕も重いうえに両方にぶら下がっています。これを首周りの比較的小さな筋肉で支えているわけですから、長時間使い続けていると、疲労が溜まりやすいのも当然です。
特に長時間のデスクワークやパソコン作業では、同じ姿勢を続けると肩まわりの筋肉が固まってしまい、血行が悪くなりねこ背になり、肩こりを招いてしまいます。
1時間に1回はデスクやパソコンから離れて、ストレッチをすることをおすすめします。実際には、動きをともなうアクティブストレッチが有効です。肩を左右10回ずつまわす程度でも十分です。場所を問わず、簡単にできるので取り入れてみてください。
〇アゴを引きすぎない
ねこ背や肩こり予防のためにアゴを引きすぎないように生活することも効果的です。ためしに、アゴを引いた状態で首を回してみてください。回しづらいことと思います。これは、この位置が骨格上機能的でないことを表しています。
パソコンに向かうとき、本を読むとき、車を運転するときなどはアゴを引きすぎずに少し空間を感じてみてください。この位置が、本来の首、ならびに頭が収まる位置になりますので、体への負担が少なくなります。
こちらにねこ背や肩こり予防、肩甲骨やその周りの筋肉をほぐすのに効果的な動画をリンクしますので参考にしてください。
*音声が出ますのでボリュームにご注意ください。
○ねこ背を改善する座り方
筋トレやストレッチも重要ですが、もっとも効果的なねこ背の治し方(改善方法)は日頃のデスクワークでの座り姿勢を改善することです。
たとえば、いすの座り方は、骨盤を立てて座ることを意識します。肛門がまっすぐ下を向けるように座ると、感じがつかみやすくなると思います。以下は、正しい椅子の座り方6つのポイントです。
日頃から正しい椅子の座り方を意識することで、猫背の改善だけでなく、腰痛対策や長時間座っていても疲れにくくなる等、多くのメリットが得られるでしょう。
*音声が出ますのでボリュームにご注意ください。
猫背にならないための習慣
猫背は日常生活の姿勢や習慣によって引き起こされることが多いですが、普段から意識することで予防・改善が可能です。以下に、猫背にならないための具体的な習慣をご紹介します。
1. 正しい座り方を意識する
座る際は骨盤を立てて座ることを心がけましょう。椅子に深く座り、お尻を背もたれに押し付けることで、背骨が自然なカーブを保てます。頭を軽く上に引っ張られるような感覚で背筋を伸ばし、肩の力を抜いてリラックスすることも大切です。
2. 長時間同じ姿勢を避ける
デスクワークやパソコン作業が多い人は、1時間ごとに立ち上がり、肩回しや簡単なストレッチを行いましょう。肩甲骨周りを動かすことで、筋肉の緊張をほぐし血行を促進します。
3. ストレッチやエクササイズを習慣化する
猫背を予防するには、肩甲骨周りの筋肉を鍛えることが重要です。具体的には、肩甲骨を寄せるストレッチや、背筋を強化する運動を取り入れると効果的です。例えば、肩を大きく回す運動や、ストレッチポールを使った背中のエクササイズがおすすめです。
4. モニターの位置を調整する
デスクワークの際、モニターやノートパソコンの位置を目線の高さに合わせましょう。首を前に傾ける姿勢は猫背の原因となるため、デスクトップアームスタンドなどのアイテムを活用するのも効果的です。
5. アゴを引きすぎない
アゴを引きすぎると首が動きにくくなり、肩や首に負担がかかります。自然な位置で首を保つよう意識しましょう。本やスマホを見る際も、目線を下げすぎないよう工夫することが重要です。
6. 適度な運動を取り入れる
運動不足は筋肉の弱化を招き、猫背を助長します。ウォーキングや軽い運動を日常生活に取り入れ、全身の筋力を維持することが大切です。
猫背解消に役立つおすすめグッズ5選
猫背は日常の姿勢の癖や筋力の低下が原因で生じることが多いですが、適切なグッズを活用することで改善が期待できます。以下に、猫背解消に役立つ便利なアイテムを5つご紹介します。
- 姿勢矯正ベルト
肩甲骨を引き寄せ、背筋を自然に伸ばすサポートをするベルトです。デスクワーク中や家事をしている時にも装着でき、姿勢を無理なく改善します。長時間の使用にも適した軽量設計のものがおすすめです。 - 背筋矯正クッション
椅子に置くだけで骨盤を正しい位置に保ち、自然と背筋が伸びるクッション。腰のサポートと猫背の改善を同時に行えます。オフィスや車内での使用にも便利です。 - ストレッチポール
背中の筋肉をほぐし、肩甲骨周りを柔らかくするのに最適なポールです。仰向けに乗るだけで猫背の改善やリラックス効果が得られます。 - デスクトップアームスタンド
ノートパソコンやモニターの位置を目の高さに調整することで、前傾姿勢を防ぎます。猫背の原因となる頭部の前傾を解消する便利なアイテムです。 - フォームローラー
菱形筋や僧帽筋など、肩甲骨周りの筋肉をマッサージして柔らかくするローラー。筋肉をリラックスさせることで、血行を促進し肩こり改善にも効果的です。
これらのグッズを日常生活に取り入れ、正しい姿勢を習慣化することで、猫背の解消や肩こりの改善が期待できます。
まとめ
今や国民病の代表的な一つともいえる肩こり。その肩こりの原因は、ねこ背とも密接に関係しています。そしてそのポイントとなるのは、肩甲骨です。
ねこ背になるメカニズムを理解して、普段の日常での姿勢を意識的に改善し、肩甲骨周りを動かすようなストレッチやエクササイズなどの運動を毎日の生活のなかで習慣化できるよう、できることからチャレンジしてみましょう。