
階段を降りる時に、体重の何倍の負荷が体にかかるかご存知でしょうか?
実は、体重の6〜8倍もの負荷が階段から降りる際、足が着地した瞬間にのしかかっています。体重が60kgの方であれば、360kg〜480kgかかっています。
また、急いでいる時には、そこにスピードが合わさることになりますので、さらに何倍もの負荷がかかることになります。ちょっと驚きですよね笑。階段を降りる時に、正しく降りると、それだけで筋トレになりますが、間違って降りてしまうと関節を痛める原因となります。
今回は、階段から降りる時の正しい体の使い方をお伝えしていきます。
階段を降りる際に使う関節・筋肉
アクセル筋、お尻ともも裏を使うには?
階段から降りる際に、お尻ともも裏を使うにはどうすればよいかというと、二つ意識してください。重心移動とフラット接地です。
重心移動というのは、体を前に傾けると自然と足が前にでます。その自然と足が前にでる状況を繰り返し行っていきます。そして、前に一歩でた時の地面への接地がフラット接地といって、足裏全体で地面に接地する方法です。歩く時も階段を降りる時にも、まったく同じことを行えばいいということになります。
ただし、通常の歩行と違うのは、傾斜を下っていくというところです。重心移動で前のめりに降りていきますので、無意識に少々恐怖心が芽生えます。そのため、体を起こした状態で、おそるおそるブレーキをかけながら降りていく方が多いのではないでしょうか。
しかし、その降り方では、もも前とふくらはぎの筋肉を使うことになり、ブレーキがかかってしまうので、前に進むことができません。
今まで、もも前とふくらはぎの筋肉を使っていた方が、いきなりお尻ともも裏を使いだすと、こと「階段を降りる」「坂道を下る」に関して、余計に恐ろしく感じることもあると思いますので、初めはていねいにゆっくりと動作を繰り返すとよいと思います。ていねいにゆっくり行うことで、間違った動きもでづらくなります。
また、関節や筋肉に対する負担も減り、安全にできます。そして、慣れてきたらスムーズに動作が行えるとよいのではないでしょうか。

間違った降り方は膝を痛める
はじめにお伝えしたとおり、階段を降りる際にかかる負荷は体重の6〜8倍と言われています。その負荷をどこの筋肉で受け止めるかによって、体に対する負担が変わります。
前述した「アクセル筋=お尻・もも裏」、そして「ブレーキ筋=もも前・ふくらはぎ」で考えると分かりやすいです。はじめに、アクセル筋であるお尻ともも裏で考えてみます。
お尻ともも裏を使うことで働く関節は、「股関節」です。この関節は、非常に強靭で体の筋肉でも比較的大きな筋肉で覆われているために、強い衝撃にも耐えることができます。
そして、お尻ともも裏の筋肉が使えている人の特徴として、もっとも重要なことは「全身の筋肉が連動して働く」という点です。
- お尻ともも裏に力が入るとお腹に力が入ります。
- お腹に力が入ると背中にも力が入ります。
- もも裏の筋肉に力が入るともも前にも力が入ります。そしてふくらはぎにも力が入ります。
(もも前とふくらはぎはまったく使わないというわけではなく必要最低限の力は入ります)
このように全身の筋肉が働き、体全体に満遍なく負荷が分散され、体を支えることができます。ですので、体重の6〜8倍と脅かされても、まったく怖くないのです。
一方、もも前とふくらはぎを使うことで働く関節は、「膝関節」です。膝関節は非常に弱い関節で、触ってみると分かるように、筋肉に守られておらず、関節がむきだしの状態になっています。ですので、強い衝撃には耐えることができません。
また、膝関節を使っている方の特徴として重要なことは、「全身の筋肉が連動しない」という点です。
もも前とふくらはぎに、負荷のほとんどがかかり、そのほかの筋肉に対する負荷が極端に小さくなるということが起こります。すると、膝関節に何百kgの負荷がかかり、膝を痛めてしまうことになります。
現時点で、膝に痛みがなくとも、繰り返し膝に余計な負荷をかけていると、いつの日か膝に痛みを抱えて生活することを余儀なくされますので、ぜひ、体の使い方を改めていただき、お尻ともも裏が使えるようにしていただきたいと思います。

階段を降りる際の注意点
階段を降りる動作は、一見簡単なように見えますが、実は膝関節や足首に大きな負荷がかかるため、正しい姿勢と動作を心がけないと怪我のリスクが高まります。特に膝を痛めやすい動作であるため、以下のポイントに注意することが大切です。
1. 姿勢を正しく保つ
階段を降りる際には、背筋を伸ばし、体を少し前傾させるように意識しましょう。体が後ろに傾いていると、膝や腰に余計な負担がかかりやすくなります。また、足元をしっかり確認することも重要です。視線を下に落としすぎると猫背になり、バランスを崩す可能性があるため、適度に前方を見ながら降りるようにしましょう。
2. 膝の曲げ方を意識する
階段を降りるときは、膝を軽く曲げた状態で降りるようにします。膝を伸ばしたまま降りると、着地時の衝撃が膝関節に集中してしまい、痛みや故障の原因になります。また、膝が内側に入らないよう、足先と膝の方向を揃えることを意識してください。
3. ゆっくりとコントロールする
階段を駆け下りるような急な動作は、膝や足首に大きな負担をかけます。ゆっくりと、一歩ずつ安定した動作で降りることが大切です。特に段差が高い場合は、重心を低く保ちながら、慎重に足を下ろすようにしましょう。
4. 適切な靴を選ぶ
クッション性のある靴を履くことで、階段を降りる際の衝撃を緩和できます。硬い靴底や滑りやすい素材の靴は避け、しっかりとしたグリップ力のある靴を選ぶようにしましょう。
5. 手すりを活用する
バランスを崩しやすい場面では、手すりをしっかり握ることで、転倒や怪我を防ぐことができます。特に膝に不安がある場合や筋力が低下している方は、無理をせず手すりを活用することをおすすめします。
6. 無理をしない
膝や足に痛みを感じる場合は無理をせず、エレベーターやエスカレーターを利用するなど、負担を軽減する方法を選びましょう。また、適度な筋力トレーニングやストレッチを取り入れることで、階段を降りる際の負担を減らすことが可能です。
階段を降りる動作は、膝に過剰な負荷をかけやすいものですが、正しい姿勢と動作を心がけることで、安全に行うことができます。特に膝への負担を軽減するポイントを意識しながら、慎重に行動するようにしましょう。

正しく階段を使えば筋トレになる
筋トレに関して思うことは、一般の方を見ていると、「筋トレはスポーツジムなどの場所で行うもの」と思われている方がいらっしゃるように思います。決してそんなことはなく、日常生活のなかに筋トレの場面は、数多く存在しています。それこそ、階段は最高の筋トレスポットではないでしょうか。
スポーツジムに、体重の6〜8倍の負荷を持って筋トレをしている人を見たことはあるでしょうか? まず、普通のスポーツジムにはいないと思います。でも、階段では、その負荷を体に刺激として与えることができます。それも無数に。ただし、その負荷のかけ方一つで、体を鍛えることもできますが、残念ながら、体を痛める原因にもなります。
現代では、楽をしようとすれば、いくらでも楽をして生きていくことができます。階段を使わずに、エレベーターやエスカレーターを使えば楽ですね。しかし、その筋トレの機会を逃してしまうのは、なんとも、もったいないことです。ぜひ、積極的に階段を使用していただきたいと思います。そして、どうせやるのであれば、「正しいやり方」で行ってみましょう。

なぜ、階段はトレーニングになるのか?
階段を上る、降りるという日常的な動作がトレーニングとして優れている理由は、全身の筋肉を効果的に使い、心肺機能を強化し、さらに日常生活に密接に結びついているためです。以下、その理由を詳しく説明します。
1. 全身の筋肉を活用する運動
階段を上る動作では、特に下半身の筋肉である大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋(お尻の筋肉)が大きく関与します。これに加えて、体を安定させるために体幹部の筋肉も使われます。一方、階段を降りる際には、ブレーキをかけるように筋肉を使う「エキセントリック収縮」が起こり、筋肉に新たな刺激が加わります。このように、階段の昇降は全身の筋肉をバランスよく鍛える運動となります。
2. 心肺機能の強化
階段を上ると心拍数が上がり、呼吸が深くなることを感じるでしょう。これは、階段昇降が有酸素運動と無酸素運動の両方を含むためです。この運動によって心肺機能が強化され、持久力の向上に繋がります。日常生活で息切れしにくくなるといった効果も得られるでしょう。
3. 基礎代謝の向上
階段は、全身の筋肉を動員するためエネルギー消費が高く、基礎代謝の向上に寄与します。下半身には体全体の筋肉量の約70%が集中しているため、階段昇降によって下半身の筋肉を鍛えることで、基礎代謝が効率よく上がり、脂肪燃焼が促進されます。
4. 体のバランスと安定性の向上
階段を上る際には体を支えるバランス感覚が求められ、特に体幹の安定性が鍛えられます。階段を降りる際にはブレーキをかける動作が入るため、足首や膝、腰の関節を効果的にコントロールする力が養われます。このバランス感覚の向上は、転倒防止や日常生活での安全性向上にもつながります。
5. 身近で手軽にできる運動
階段はどこにでもあるため、特別な設備が不要で、時間や場所を選ばずにトレーニングを行えるのが大きなメリットです。自宅やオフィス、駅などの階段を利用すれば、わざわざジムに行かなくてもトレーニングを実践できます。
6. 効果的なカロリー消費
階段昇降は平地を歩くよりも約1.5~2倍のカロリーを消費します。短時間でも高い運動強度を得られるため、忙しい日々の中でも効率よくトレーニングを取り入れられます。
階段は単なる移動手段ではなく、日常的に取り組める優れたトレーニング方法です。全身の筋力強化、心肺機能の向上、基礎代謝の向上など、多くのメリットをもたらす階段昇降を、日常生活の中に積極的に取り入れてみましょう。
まとめ
はじめから階段で正しい降り方を実践するのは難しいと思いますので、まずは、段差を見つけて、左右の足で一歩ずつ降りる練習をしてみるとよいと思います。
重心移動とフラット接地の練習を繰り返し行ってください。すると、実際の階段での連続動作になった時にも、正しく降りることができるようになっていると思います。そして、階段を降りてお尻ともも裏に刺激が入っているのが感じられれば、正しい動作ができている証です。
