パーソナルトレーナーが考える人生100年時代

平均寿命と健康寿命

ある海外での研究では、「2007年以降に日本で生まれた子どもについては、107歳まで生きる確率が50%ある」と言われています。日本は世界一の長寿国です。そのため、今後、超長寿社会において、われわれはどのように時代を生き抜くか、この問題に取り組む必要があります。

誰もが健康なままで一生過ごしたいと思っていますが、健康なまま長生きできるわけではありません。2016年時点で寝たきりになったり、介護を受けたりすることなく、元気に自立して生きられる期間を示す「健康寿命」は男性72歳、女性74歳です。

平均寿命と健康寿命の差をいかに縮めるかが、人生100年時代を生きる私たちにとっての課題となりそうです。

健康寿命を延ばす秘訣

厚生労働省によると、生活習慣病とは、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、発症・進行に関与する疾患群」の事であると述べています。高齢化を背景に急速に増加しており、今や65歳以上の死因の6割を占めているうえ、認知症にも関与していることが明らかになっています。

「食事」「運動」「睡眠・休養」を上手にマネジメントすることで、生活習慣病にかかるリスクを下げることができます。健康な体をつくり、それを長く保つためには、生活習慣病についての知識をある程度知っておくこと、そして予防法を知る必要があります。まずは、生活習慣病に関する理解を深めましょう。

生活習慣病に関する理解を深めましょう

誰でもかかり得る生活習慣病

生活習慣病の疾患は、糖尿病、心臓病、高脂血症、高血圧、脳血管疾患、痛風、呼吸器疾患、胃・十二指腸潰瘍、肝機能障害、骨粗鬆症、がん等多岐にわたり、広くは肥満や歯周病も含まれます。つまり、生活習慣病は年齢や性別を問わず、誰でもかかり得る病気です。

医学の進歩により、かつては不治の病とされた疾病の治療法や新薬が開発されるようになった一方で、生活習慣病には現在のところ特効薬が存在しません。その改善や予防には、病気の温床となる生活習慣の見直しが必要不可欠になります。

生活習慣病に対して今できること

「食事」「運動」「睡眠・休養」を上手マネジメントする必要があるとお伝えしましたが、具体的にどのようにすればよいのかをお伝えしていきます。

食事

まず、「食事」に関して大事なことは、「内容とタイミング」です。

たとえば、同じ糖質でも自然なものから摂るのか、加工品から摂るのかでまったく違いますし、体に必要とされる栄養素でも、タイミングによっては必要ない場合もあります。体に本当に必要なものを必要な時に摂取していくと、食べすぎる心配もなく、体にとっても負担が少なくなります。

具体的な食事内容としては、朝は質の良い糖質を摂るとよいです。フルーツがおすすめです。

一日の初めに、頭の栄養になる糖質を補給することで、頭がしっかり働くようになります。同じ糖質でも、パンや麺類等の加工品の糖質は、頭のエネルギーになりづらく、血糖値を極端に上昇させるために体が疲労し、体を重くし逆に頭が働かなくなります。(※眠くなります)

昼食は、一般的な和食の定食を思い浮かべていただき、おかず中心の食事です。できれば、ご飯(白米)は半分or無しが好ましいです。

夕食は、炭水化物無しのおかずだけの食事です。夜はだいたいの方が睡眠を取るだけになりますので、頭のエネルギーである糖質を摂る必要がありませんので、炭水化物は無しということになります。

そして、全体的に選ぶ食材は、「自然なもの」を選択されるとよいです。見てすぐに、「肉」「魚」「果物」「米」と分かるものを選びましょう。たとえば、「ハンバーグ」「ソーセージ」「ドライフルーツ」など手の加わっているものは、意外とカロリーが高いことがありますので避けるようにしましょう。

運動

そして、次に「運動」です。たとえば、「運動は週に何回やるのがベストですか?」というご質問が多くあります。われわれ運動指導の専門家としてお答えするのであれば、これについては何回とかではなく「毎日」と答えたいです。

もちろん、毎日のようにトレーニングジムに通い運動するのは、一部の方を除いてほとんどの方ができないと思います。では、毎日行うのは無理ではないですかと言われるのですが、決して無理ではなく、日常生活をトレーニングにすれば可能になります。

日常で歩く、走る、階段を昇る、降る、立つ、しゃがむ等の動作をトレーニングとして位置づければ、それは立派なトレーニングになります。そして、その時の動作が正しい体の使い方で行えていれば、さらに効果的になります。

そこで、週に1~2回程度、パーソナルトレーニングジムなどに通い、体の使い方を身につけたり、修正(メンテナンス)をする習慣があればよいと思います。

また、日常生活では、高いレベルで体を酷使するような運動はしないと思いますので、その週1~2回のトレーニングの時に、普段にないような少々体がつらいと感じる程度の運動ができれば十分であると思います。

睡眠・休養

最後に、「睡眠・休養」です。睡眠時間に関しては、一般的に良いとされる時間はありますが、人によって差のでるところかと思います。日々の生活のなかで、一番心地よい時間を見つけてみましょう。

そして、睡眠時間もそうですが、睡眠の質も大切です。睡眠の質を良くするには運動がとても大切です。体を動かすことで、ある程度体を疲れさせるのが大切ということですね。

また、運動することによって、血流が良くなり、疲労回復が促されます。これを「アクティブレスト」と言います。「積極的に体を動かして休養を促しましょう」という方法です。スポーツ選手も行っている方法ですのでおすすめです。

方法としては、少し汗ばむ程度の運動を行うとよいです。限界まで追い込むような運動をしてしまうと、逆に次の日まで疲労が蓄積されてしまうのでやりすぎに注意が必要です。

正しい体の使い方を身につける

これまでの人生で、正しい体の使い方を学ぶ機会があったという方は、かなり稀だと思います。スポーツを行っていたという方は、少なからず、自分の体と向き合い体の使い方を学んだことがあったかと思います。

ただし、それがはたして本当に正しかったのかというと疑問が残ります。なぜかというと、正しい体の使い方を本質的に理解して教えることができる指導者がいないからです。

ここまで言うと難しいことのように感じますが、正しい体の使い方というのは、決して難しいことではありません。誰もが子どもの頃は、当たり前のようにできていたことです。子どもの頃は筋力がないので、機能的で正しい動作しかできません。

それが大人になり、筋力がつくことで、間違った動作でもある程度動けてしまいます。そして、間違った動作が癖となり、日常生活やスポーツの場面ででてくるようになり、パフォーマンスが落ちたり、関節や筋肉を痛めたり、疲れやすくなったりしてしまうのです。

間違った動作の悪い癖が体に身についている場合、正しい動作の良い癖にシフトチェンジするのは、容易なことではありません。癖というのは、かなり根深いからです。

ただし、逆に一度正しい癖が体に身についてしまうと、悪い癖がでなくなります。そして一度身についた正しい体の使い方は、自転車に乗ったり、泳いだりするのと同じように忘れることはありません。一度腰を据えて学ぶ価値のあるものだと思います。

まとめ

健康寿命を延ばすには、食事、運動、睡眠・休養のすべてが一致することで初めて得られるものです。できるだけ若いうちから、将来のことを考えて生活習慣を見直すことができるといいです。

なかなか、「あと何十年先のことを考えて」と言われても難しいと思いますが、体の使い方と同じで、悪い癖を良い癖に少しずつでも変えていくと良いのではないでしょうか。すると気づいた時には、自然と良い生活習慣が身についていると思います。

生活習慣を変えるということは、少し大げさかもしれませんが、「人生を変える」ということと同じです。これまでの人生も、そしてこの先の人生も大きく変えることですので、このままではいけないなと感じる方は、少しでも日々の生活で意識されてみてはいかがでしょうか。

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