股関節は、骨盤(寛骨臼)と大腿骨(大腿骨頭)からなり、人体のなかで最も大きな関節です。股関節は可動域が大きく、日常生活動作である立ちしゃがみ、歩く、走る等のほとんどの動作で使用するため、疲労が溜まりやすく、硬くなりやすいです。
そして股関節周りの硬さや運動不足による筋力低下があると股関節にかかる負荷が大きくなり、違和感や痛みの原因となります。
今回は股関節外側の筋肉の名前と硬くなった時の対処法をご紹介致します。
股関節外側の筋肉の概要
股関節外側の筋肉は「股間節外転筋」と呼ばれ、中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋から構成されている主に役割としては足を外に開く作用のある筋肉です。
また「股間節外旋筋」である深層外旋六筋の主な役割としては足を外側に捻る作用のある筋肉なります。 一つずつ細かくご説明していきます。
中臀筋
中殿筋はお尻の筋肉の中で2番目に大きく、大臀筋に一部覆われてついています。専門的には、主に股関節の外転「脚を付け根から外側に開く動作」で使われ、片足立ちの際に、骨盤がぐらつかないように安定させ、バランスを取る役割があります。
日常生活動作では、意外と片足でバランスを取っていることが多いので、中臀筋が凝り固まり、お尻に痛みやだるさを感じることも多くあります。
日常生活を送るなかで、体を支えバランスを取っているのは足です。しかし長時間立っていたり、たくさん歩く等で足ではなく、中臀筋でバランスを取ろうとします。
また日常生活の中で無意識にどちらかの足に体重を乗せて立っていることはありませんか?
こうした姿勢が長時間続くと中臀筋に疲労が溜まり、中臀筋に痛みがでる前に、腰が痛くなる場合があります。これを「関連痛」と言います。
中臀筋の疲労による痛みが腰の上、少し横のあたりにでます。中臀筋のストレッチを行いほぐすことで腰痛改善の効果が期待できます。さらに下半身から上半身への血流促進も期待でき、疲労が取れやすくなります。
小臀筋
小臀筋は、主に股関節外転の動作「足を外側に広げる動き」、股関節内旋の動作「膝を内側に向ける動き」で使われ、中臀筋をアシストする役割も担っています。小さい筋肉ながら下半身の動きには非常に重要な筋肉と言えます。
大腿筋膜張筋
作用としては、股関節を曲げる(股間節屈曲)、そして外に開く(股関節外転)です。太ももの外側を、骨盤から膝関節の下まで伸びている長い筋肉です。
しかし筋肉自体は短く骨盤から股関節をまたぐあたりまでに限られ、長く膝下まで伸びている部分は「腸脛靭帯」と呼ばれる硬い靭帯組織になっており、この部分の伸縮性はあまりありません。
純粋に股関節の屈曲時にメインで働くのは腸腰筋ですが、腸腰筋は筋肉の走行と付着部位から股関節を曲げる際に外旋(ガニ股)を伴います。つまり腸腰筋の働きだけで股関節を曲げようとすると、歩く、走る動作が全てガニ股になってしまいます。
大腿筋膜張筋はこれを防ぎまっすぐ前方へ股関節を曲げて足を上げる役割があります。
深層外旋六筋
お尻の筋肉は、総じて外旋と外転の方向に働きます。外側に開く外転や、「ねじ」のように外側に回す外旋などです。そのほかに、内転や内旋もありますが、主にお尻の筋肉は外側に働きます。
それらを強力にアシストしているのが外旋六筋群。深層外旋六筋群ともいいます。梨状筋・上双子筋、下双子筋・外閉鎖筋・内閉鎖筋、大腿方形筋の六つの筋肉で構成されています。
小さく、内側にある為に地味で目立たない筋肉ですが、とても重要な働きをします。大臀筋・中臀筋・小臀筋に縁の下の力持ち的に協力して働きます。また、立ったり歩いたりする動作でも重要になってくる筋肉です。
また深層外旋六筋の中でも梨状筋が坐骨神経と密接な関係になり、梨状筋が硬くなる事で坐骨神経を圧迫し、坐骨神経痛の原因になります。ちなみに坐骨神経痛は正確には「梨状筋症候群」と言います。デスクワークの方は要注意です。
下記の情報も参考に!
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◆『知っているようで知らない、お尻の筋肉の名前をポイント解説!!』>>
筋肉が硬くなる原因
股関節に限らず、筋肉が固くなる原因としては、「使いすぎ」もしくは「使わなすぎ」です。
まず使いすぎというのは、筋肉に持続的に力が入り緊張している状態のことです。スポーツなど運動のし過ぎによる筋肉疲労が考えられます。筋トレやスポーツの後の筋肉痛が良い例です。
筋肉痛のある時に体を動かそうとしても筋肉が通常よりも固くなり、痛みもあるので動かしにくくなると思います。筋肉痛自体がなぜ起こるのかなど現在でも科学的に原因が分かってはいませんが、「循環不全」にあると言われています。ですから、筋肉痛を回避する為には体を動かした後に筋肉をほぐし、血流を良くすることが大切です。
もう一つ使わなすぎというのは、本来の筋肉の機能である収縮と弛緩が長時間行われない状態のことを指します。簡単に言うと「運動不足」です。
デスクワーク等で長時間椅子に座り過ぎて動かなくなると、お尻にかかる圧力が常にある状態で血流を抑制してしまいます。それが続くと、低酸素状態になってしまい筋肉がどんどん固くなってしまいます。
筋肉が硬直して硬くなり、痛みが生じたままストレッチを行うと「痛い~!!」となり、精神的にも不安や恐怖でストレッチに対して嫌なイメージを覚えてしまいます。
しかしながら筋肉は、動かさないとさらに衰えて硬くなります。収縮した状態からさらに過緊張が進んで血行不良が解消されないままでは、筋肉の硬さや痛みは解消されません。
この「痛み→緊張→痛み」の負のスパイラルを絶たなければ、将来的に筋肉量減少や怪我によって自力で歩行することさえできなくなる可能性もあります。
筋肉の硬さを解消するためには、なんらかの方法で血行を改善することが重要になります。次はその方法をお伝えしていきます。
股関節外側が固い時にできること
まず大前提として硬くならないような生活習慣に改善する必要があります。
どのように改善するのかというと「こまめに姿勢を変える」ようにすると良いです。 デスクワークの方でしたらば、理想を言えば30分に一度は立ち上がる、立ち仕事の方でしたらば、逆に座るなど、同じ姿勢のままでジッとしていると筋肉のポンプ作用が使えないので、血流が悪くなり筋肉が硬くなる原因となります。
この点を改善しなければいくらストレッチで筋肉をほぐしてもまた固くなり、結局筋肉が硬い状態のままになりますので、根本的に生活習慣を改善させる必要があります。そのうえで補助的にこれからお伝えするようなストレッチ法など筋肉をほぐす方法を試してみると良いでしょう。
ストレッチでほぐす
ストレッチによる効果は「柔軟性の向上」「疲労回復」など一般的にも広く知られています。
筋肉は重力に逆らって体を支えているため、リラックスしている時でも常に緊張状態にあります。そして立位や座位の姿勢では、体にかかる負荷と緊張はさらに強くなります。
上記でご説明したとおり、血流が滞ると筋肉が固くなります。すると疲労物質や老廃物が溜まり、こりや痛みが発生します。
そこでストレッチを行い、筋肉を伸縮させることで、筋肉内の静脈やリンパ管にマッサージ効果が得られ、筋緊張が緩和し、血流が良くなります。血流が良くなると、疲労物質や老廃物を押し流してくれるため、体の疲労回復にも繋がります。
マッサージでほぐす
筋肉は、筋膜という薄い組織膜に包まれています。ウェットスーツのように体全体に張り巡らされ、表層から深層まで立体的に包み込むため、組織を支える第二の骨格であると言われています。
この筋膜は柔らかい組織なので、萎縮・癒着しやすい特徴があります。 この筋膜の萎縮や癒着が時にコリや痛みを招き、筋肉の柔軟性を損なう原因になります。
その萎縮・癒着した筋膜を解きほぐすことを「筋膜リリース」と言います。 筋膜リリースをセルフケアで行うことも可能で、その際はフォームローラーやマッサージボール(テニスボールで代用できます)で誰でも簡単に筋肉をほぐし、柔軟性を向上させることができます。
筋肉を揺らす
筋肉は「振動を与えると緩む」という性質があります。体を揺らしたり、軽いジョギング、ウォーキングでも十分なストレッチ効果も期待できます。
どうしても時間のない時は、脱力してその場で10〜20回程、軽くジャンプするだけでも筋肉は思った以上に緩みます。
まとめ
股関節外側の筋肉は、日常生活やスポーツにおいて重要な役割を担い、可動域や姿勢の安定性に影響を与えます。股関節外側の筋肉(中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋、深層外旋六筋)が硬くなる原因には、筋肉の「使いすぎ」や「使わなすぎ」があります。これにより血流が滞り、疲労物質が蓄積し、痛みやこりが発生します。
これを防ぐには、長時間同じ姿勢を避け、生活習慣を改善することが重要です。具体的には、こまめに姿勢を変えたり、ストレッチやマッサージで筋肉をほぐす方法があります。また、筋肉を揺らしたり軽い運動を行うことで、柔軟性や疲労回復効果も得られます。股関節の健康を保つことで、全身の快適な動きや痛みの軽減が期待できます。