ゴルフの上達というと、まずはレッスンでスイング法を身につけて、今のスイングよりも効率的になり、上達を目指すというのが一般的かもしれません。
もちろん、それを否定するものではありませんが、「その前にやることがあるのではないか」というのが体の動かし方の専門家からの意見です。ゴルフは、トレーニングでも上達するのです。
ゴルフがうまくなる方法
結論からいってしまうと、上手くなる方法はたくさんあります。それと個人差もあるのがやっかいなことです。
うまくなる方法を簡単にあげると、
- レッスンを受ける
- 練習場で練習する(練習量は個人差による)
- ラウンドする(ラウンド数は個人差による)
- イメージトレーニングをする
- メンタルトレーニングをする
- ラウンド中に相手の動きやアドバイスを参考にする
- 書籍・DVDなどで学習する
- プロの試合をテレビや生で観る
- それら複合 など
おそらく上達法は、これ以外にも無数にありそうです。ただしスポーツにおいて難しいのは、本当にそれが正しいのか?ということです。
レッスンにしても、人の動きを参考にするにしても、書籍からの情報にしても、プロをまねるにしても、怖いのは「自分に合っているか」ということなのです。
もちろん、自分に本当に適合して上達を果たしているというのであればそれは幸せなことで、そのまま続けていただければいいと思います。
しかし、練習をすればするほど、調子を崩すという人もいるのが現実です。そして、それは、間違いなくやり方が間違っているのだと思います。ゴルフの上達においては、本当にさまざまな方法があるのですが、我々が提唱していることは、「まずは、正しい体の使い方を身につける」ということなのです。
これは、不変なことなのです。たとえば、股関節の動かし方が間違っていて、ゴルフの時だけ股関節の使い方が合っているというのは無理なことなのです。まずは、陸上において正しい股関節の使い方をマスターすることが複雑なゴルフのスイングの中で使う股関節の動きができるという考え方なのです。
ですから、ゴルフのための体の使い方を指導していたとしても、それはマラソンにも並行して効果がでるような体の使い方なのです。そして、体の正しい使い方をマスターする利点は、上記にあげた上達する方法を一切邪魔をするものではないということです。
正しい体の使い方をマスターしてから、レッスンを受けると格段に効果が違います。書籍から参考にするにしても自分の意見がもてるので取捨選択する能力がつきます。人からのアドバイスにしても同様です。
このように覚えておいてまったく損がないばかりか、ゴルフのすべてを変えてしまうかもしれないくらい体の正しい動かし方をマスターすることは価値あることです。体の本質なので、プロゴルファーから、高齢者まで上達の効果が期待できます。
ゴルフの動きは、スクワット動作+回旋動作
スポーツが難しく感じられることがあるのは、それが、複合運動だからです。単一運動から成り立っているのなら、タイミングなどを体得する必要がなく容易です。
しかし、単一運動は大きなエネルギーを得ることができません。ゆえに、大きな力を必要とするスポーツにおいては、複合運動が必要とされます。タイミング良く、複合運動がおこなわれるとそこに“連動”が生まれて効率的な力強さを得ることができます。
ゴルフの動きは、“スクワット動作 + 回旋動作”の複合運動から成り立っています。 単一の動きではなく、複合の動きなのです。スクワットだけでは、ボールを打つことができませんし、下半身を使わないで回旋動作だけならばボールを打つことはできますが、限界が低いレベルでやってきます。 スクワット動作と回旋動作の調和が、強く正確な弾道を生むのです。
ゴルフに股関節は避けて通れない
股関節の動き
股関節の動きは、四つに分類されます。それは、屈曲・伸展・内旋・外旋です(実際は、これらが3D的に動きます)。
先にあげた、スクワット動作は、この四つの動きが見事に調和されたものです。ですから、最初に手掛けるスクワット動作を覚えると、四つの動きはある程度、正確にできるようになります。
しかし、股関節の内旋と外旋に関しては、日常生活であまりおこなうことがなく訓練が必要になります。
特に、ゴルフはこの内旋と外旋が目立っておこなわれるのでなおさらです。テイクバックで、右足は、内旋。左足は外旋。ダウンからフォローにかけては、右足は外旋、左足は内旋がおこなわれます。これには、柔軟性も大きく関与するので普段から動かし方を覚えて、訓練しておく必要があります。
ここでは、詳しく解説はいたしませんが、ゴルフ動作は股関節の動きが大きく関与するために、股関節の機能を覚えることは必須になります。
なぜ、子どもはゴルフの動作を自然と身につけることができるのか
子どもの頃からゴルフに打ち込んでいるボーンゴルファーたちは、股関節などの動きを、習わずとも身に付けている場合が多いです。それは、筋力が未発達で非力なために、自然と大きなパワーを発揮する股関節の伸展・屈曲・内旋・外旋の動きが自然と身についてしまうからです。
このように考えると大きな力を発揮するのは、股関節や体幹などの身体の中心からの動きであり、決して腕力ではありません。
大人になってゴルフを始める多くの人は力があるため、どんな形でもスイングができてしまいます。しかし、それは本物の動作ではないので、限界も早くきますし、多くの場合どこかの関節が不調をきたします。やはり、身体の動作は学ぶ必要があるのです。
動きの順序
ゴルフのみならずスポーツは、連動することでしなやかで力強い動きを得ることができます。不思議なもので人間は動いているものに対しては、自然と連動することができます。
しかし、こと止まっているものを打つゴルフに関しては、連動することがとても困難になります。
それでは、ゴルフの動作で連動するためには、どのようなことが必要なのでしょうか?
それは、動きの順序を覚えることです。
具体的には、股関節から始まる動きを上肢につなげる動きです。下半身主働といってもいいかもしれません。そして、これらを理解して、訓練することにより定着させることが必要になります。
すでに、連動ができている人には、響かないかもしれませんが、連動が簡単に体感できる方法をお教えいたします。
これは、連続素振りでいとも簡単に体感できます。連続素振りは、ボールも意識せず身体主働で動けるので見事な連動動作になります。しかし、ボールを目の前にすると、動きの順序が途端にくずれ、連動が起きなくなる場合が多いようです。このことから、やはり訓練が必要になるのです。
体重移動
ゴルフ技術はカオスのなかにあり、巷では情報が飛びかっております。こんなに情報が錯綜しているスポーツは他にありません。
しかし、我々は、パーソナルトレーナーという立場から全スポーツに共通する普遍的な動作からゴルフを考えます。少し、極端かもしれませんが、全スポーツの動作の基本は同じです。
ですから、ゴルフにおいても体重移動は必要な動作になります。ボールを投げる動作を想像してみればわかりますが、腕を振り上げる時に、右足にのり、そして左足をついて腕を振り下ろします。
体重移動をしないということは、右足にのったままボールを投げることになります。もちろん、これでも投げられますが、動きに無理がありパワーを発揮することはできません。
ゴルフも、同様にテイクバックで右足にのり、ダウンスイングに入る前に左足にのっていなくてはなりません。投球動作と一緒ですね。このことから、体重移動も身に付ける必要のある動作になります。
そもそも、体重移動とは何を意味するのでしょう?簡単にいってしまえば、右足から左足(右利きの場合)に移動することです。さらに、深くみると右股関節から左股関節に移動することとなります。
右足から左足と考えるととても、大きな幅になりますが、右股関節から左股関節と考えると、最少(右股関節内側から左股関節内側)で、ほんの数センチになります。このことから、体重移動が少なく見える人は、止まって見えるのかもしれません。
しかし、人間は二本の脚を持っている以上、体重移動は確実におこなわれている動作になります。
何を重要視するか(ここを読んでいただくだけでも結構です!)
長々とご説明しましたが、ここでは、要約してお伝えいたします。
なにを重要視するか。
それは、「正しいスクワット動作を理解する」ことです。
言ってしまえば簡単なことですが、 これがもっとも重要であり、 ゴルフのみならぬスポーツにおける根本です。ぜひ、この項だけでも十分ですので、繰り返し読んでいただきたいと思います。
なぜ、最初にスクワット動作を覚えるのかというと、アドレスの形成とゴルフスイングの要素がスクワット動作に集約されているからです。
アドレスの姿勢は、スクワット動作の途中にあります。ですから、これが間違っていると正しいアドレスをとることが困難になります。それにアドレスは、“動作の始まり”なので、これが正確におこなわれないと、それにつづく動きもどこか不自然になるものです。
正しいスクワット動作を覚えて、それにつづくアドレスをとれるようになることが、ゴルフ上達のはじめの一歩なのです。
また、スクワット動作は、アドレスだけでなくゴルフのスイング自体にも関係します。タイガーウッズのスイング例がわかりやすいですが、まるでジャンプしているような感じが見受けられると思います。あれがわかりやすいゴルフにおけるスクワット動作です。
さらに詳しく説明すると、あれはスクワット動作を高速でおこなっているため、お尻の筋肉と腿裏の筋肉のバネ運動が発生しているのです。専門的には伸張反射といいます。これは、とても大きなパワーを得るために使えている人と、そうでない人の飛距離の差は圧倒的なものになります。
これは、タイガーウッズのようなトッププロだけの特権ではなく、正しいスクワット動作をおこなえば、大なり小なり誰しも発生させることができるエネルギーです。
また、正しいスクワット動作を身に付けることの効用はこれだけにとどまりません。 下半身主導のスイングになるので、手打ちの様な無理な力を発揮することがなくなり、スイングの再現性も高まります。そして、力みが少ないので身体に負担が少ない効率的なスイングをおこなうことができるようになります。
上記の説明でわかるように正しいスクワット動作は、すべての動作の元となりますので、これが間違うと全てが間違う結果になりかねません。正しいスクワット動作を身につけることができれば、ゴルフの上達も飛躍的に高まることでしょう。
このように、ゴルフの動作改善で最初に手掛けることは、正しいスクワット動作を身に付けることなのです。
下記も参考にしてみてください。
◆『ゴルフ上達のために欠かせないお尻(股関節)の筋肉』>>
ゴルフ上達のために実践してほしいこと
〇二つの実践
ここでは、理解した四つの動作を、実践を通じて身体に定着させる作業になります。実際にゴルフクラブを握るので、練習場や自宅での素振りも実践に含めております。
1. 覚えた動作を洗練させる “練習”を実践する
これまで訓練してきた、スクワット動作・股関節の動き・動きの順序・体重移動をゴルフの練習を通じて洗練させます。これは、練習場で実際にボールを打つことが望ましいですが自宅で素振りするか、あるいはクラブを握っているイメージだけでもOKです。
ここでは、どのようなドリルを繰り返すのかは省きますが、練習する際はハーフスイング(7番アイアンで100ヤード前後の振り幅)が望ましいです。なぜかというと、フルスイングをしてしまうと、どうしてもナイスショットを追ってしまうからです。追ってほしいのは、身体の動作です。
また、ハーフスイングは、難易度も低く、そもそも飛ばすスイングではないので自然と身体の力みがとれて、連動が生まれやすくなります。そして、これを繰りかえすことにより、四つの理解の身体の動きが定着します。 ※これは、正しい動作を身に付けるための実践ドリルになります。その他の練習(ボールを曲げたり、高低をつけたり)は別の機会に時間を区切っておこなってください。
2. “ラウンド”を実践する
ラウンドの重要性もお伝えします。本来スポーツは、プレイする同じ場所、あるいは同じシチュエーションで練習します。テニスならテニスコート。スキーならスキー場。野球なら野球場などです。
しかし、ゴルフは、これが非常に難しいスポーツです。ゴルフ場で練習できるのは、一部の限られたプロくらいです(実際にアメリカでは、プロゴルファー専用のゴルフ場があります)。たとえ、芝生の上から打てる環境に恵まれている人でも、これは本来のフィールドではありませんから、その練習が本当に活きているかは疑問です。
ですから、ラウンドをしているときが本当の練習といっても過言ではありません。そして、ラウンドでの成功や失敗が無意識のデータに保存され、つぎに活かされます。 そして、陸上で動作改善を繰り返し、またラウンドする。この繰り返しが最短でのゴルフ上達を可能にします。
【参考情報】『ゴルフのための筋トレ!飛距離アップ&バテない身体づくり』株式会社デサント
https://www.descente.co.jp/media/editors_picks/feature/27080/