ポッコリお腹の解消には、食事の見直しが大きなポイントとなります。運動だけで内臓脂肪をとるのは難しく、また無理をともなうため、食生活の改善と適度な運動の、いわば両輪で進めていくことが重要です。
今回は健康的に痩せる食生活のポイントを解説していきます。
食事量は腹八分目以下を心がける
〇食べる量を減らす
肥満の人は、「お腹がいっぱいになるまで食べないと満足できない」という習慣を持つ場合が多く、これが肥満の最大の要因になっています。ですので、まずは腹八分目以下の量に慣れることから始めてみましょう。最初はものたりない感じもするかもしれませんが、それに慣れるにつれて、体が楽になり、徐々に脂肪も落ちてきます。
また、ストレスを過食で解消することも、できるだけなくしましょう。
〇1日の適正エネルギー摂取量の求め方
自分に適した接種エネルギー量を知っておくと、食べ過ぎ防止の指標になります。以下の計算式で求められた数値と、実際の摂取エネルギー量を比べてみましょう。
実際の摂取量は、ある日食べたものをすべて書き出し、市販のカロリーブックなどを参考に算出します。肥満の人は、実際の摂取量のほうが多いはずなので、それを適正量に近づけ、かつ運動量での消費量を増やし、接種エネルギー(食事)より消費エネルギー(基礎代謝・運動)のほうが多くなるようにバランスを徹底することが重要です。
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)× 22.0
身体活動量は、以下の三つからあてはまるものを選ぶ
- 軽労作・・・・・25~30kcal/kg 標準体重
- 普通の労作・・・30~35kcal/kg 標準体重
- 重い労作・・・・35kcal/kg 標準体重
※例として、身長160cmの普通の労作の方の1日のエネルギー摂取量は約1680~1980kcalとなります。
栄養のバランスを考える
健康的に痩せ、それを維持するためには、栄養バランスがとれた食事を続けることが大事です。
具体的には、たんぱく質、炭水化物(糖質)、脂質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素をバランスよく摂取するのが理想的ですが、毎食ごとの細かい栄養計算は、なかなか大変です。
そこで実践したいのが、1回の食事で、主食、主菜、副菜を一緒にとること。くわえて、同じ食材を重ねない、同じ調理法・料理ジャンルを続けないことに気をつけると、自然に栄養バランスが取れてきます。
肥満の人は、丼物やめん類などの単品料理を好む人が多く、また週に何度も同じ料理を繰り返して食べる傾向があります。こういう食事は、栄養が炭水化物と資質に偏りやすく、肥満がさらに進み、メタボリック・シンドロームのリスクがさらに高まります。
たんぱく質を食べてエネルギーを消費
〇たんぱく質の基本
たんぱく質は五大栄養素の一つで、おもに体をつくるもとになっています。
筋肉をはじめ、血管や内臓、皮膚や髪、爪など、体の大部分がたんぱく質でできています。
たんぱく質の総重量は体重の約30~40%のものぼり、特に筋肉は約80%がたんぱく質でできています。 通常、食べものから摂取したたんぱく質は、胃や腸でアミノ酸に分解され、体内に運ばれます。それぞれのアミノ酸がホルモンや酵素、抗体の材料になったり、体を動かすためのエネルギー源として使われたりします。
〇たんぱく質はDITの割合が高い
1日のエネルギー消費量は、大きく基礎代謝、身体活動代謝、食事誘発性熱産生(DIT)の三つで構成されています。
DITは「Diet induced Thermogenesis」の頭文字を取った略語で、食べものを消化・吸収するときに内臓が活動することで熱を生み出し、代謝量を増加させる反応「食事誘発性熱産生」のことをいいます。
食事をとった後に体が温まるのは、このDITによるものです。DITで消費するエネルギー量は栄養素ごとに異なります。たんぱく質は摂取したエネルギーのうち、約30%がDITによって消費されます。糖質は約6%、脂質は約4%なので、たんぱく質がずば抜けて多いことがわかります。
DITにより消費されるエネルギー量が多いということは、たんぱく質をとった分だけ、エネルギーの消費量が高まるということを意味します。つまりたんぱく質をとると脂肪も燃焼しやすくなるため、ダイエットに適した食材と言えるでしょう。
また、たんぱく質は筋肉をつくる材料になりますが、筋肉の量が多いほど、DITで消費されるエネルギー量は増加することがわかっています。筋肉量が増えると、何もしていなくても消費するエネルギー(基礎代謝)も増えるので、たんぱく質をとることは、筋肉量を増やすこと、さらに消費エネルギー量を増やすこと、という二つのダイエット効果が期待できるのです。
なお、よくかんで食べると、DITが高まるとも言われています。しっかりかむことで満足感得られ、食べ過ぎ防止になるので、とくにダイエット中の人はよくかんで食べることを意識すると良いでしょう。
〇たんぱく質不足だと太りやすい!
たんぱく質をしっかり摂取すると、ダイエット効果が高まりますが、逆にたんぱく質が足りないと、太りやすい体になってしまいます。ダイエットを目的に食事制限をする人がいますが、たんぱく質の摂取量まで減ってしまうと、逆効果になりかねません。
体の主要なエネルギー源は糖質です。食事制限によって糖質が足りないと、体はたんぱく質をエネルギー源にします。本来、たんぱく質は筋肉などの材料になるものですが、エネルギー源として消費されることで筋肉が減ってしまうのです。
また、食事制限によってたんぱく質の摂取量が足りていないと、新しく筋肉をつくることができず、どんどん筋肉が減っていくことになります。筋肉量が減ることは、基礎代謝の減少に直結するので、むしろ太りやすい体になってしまいます。
たんぱく質が不足すると慢性的に空腹を感じやすく、それがストレスによる過食につながるリスクも増します。筋肉量が減っていると、食べ過ぎたエネルギーを消費しにくくなっているので、リバウンドを引き起こしやすくなるため、注意も必要です。
誤ったダイエットに注意
〇炭水化物をとらないと痩せる!?
炭水化物(糖質)は体内で消化吸収されてブドウ糖となり、エネルギー源として利用されます。とくに、脳はブドウ糖を唯一のエネルギー源としているので、炭水化物の減らし過ぎは、思考力の低下などを招きます。
また、糖質が不足すると、体脂肪や筋肉中の体たんぱく質が分解されてエネルギー源となりますが、体脂肪とともに筋肉も落ちてしまうので、締まりのない体になります。くわえて筋肉が落ちると、基礎代謝も低下し、脂肪燃焼効率がダウンします。さらに疲れやすくなる、免疫力が低下するなどの弊害も出ます。
減量のために減らすとしても、まったく摂らないというのは、避けましょう。
〇脂肪はできるだけ控えるほうが良い?
脂肪(脂質)は1g9kcalと高エネルギーの栄養素ですが、摂取した脂肪が、そのまま体脂肪になるわけではありません。
脂肪はグリセロールと脂肪酸に分解され、エネルギー源となるほか、細胞膜・血液・ホルモンなどの成分になります。脂肪が不足すると、細胞膜や血管がもろくなり、循環器障害が起こりやすくなります。また、β-カロテンやL-カルニチン(脂肪燃焼を促す成分)など油性の成分の吸収をよくするためにも、脂肪は必要です。
減量中でも、1日の摂取エネルギーの20%ほどは、脂肪でとるようにしましょう。くわえて、体脂肪や血中資質を増やしにくい脂肪酸をとることが大切です。
〇たんぱく質も減らしたほうがいい?
たんぱく質は、筋肉や臓器を構成する主成分であり、消火や代謝にかかわる酵素、ホルモンなどの材料にもなります。
そのため、たんぱく質が不足すると、筋肉が落ち、消化・代謝酵素の成分もにぶり、代謝の悪い体、つまり、痩せにくい体になってしまいます。よってたんぱく質もきちんと摂取する必要があります。
まとめ
肥満者が増えるおもな原因は、運動不足、朝食抜きなどの不規則な食生活、脂肪や炭水化物のとり過ぎによる栄養バランスの乱れなどです。こういう生活の積み重ねが余分な内臓脂肪を増やし、さまざまな生活習慣病につながっていきます。
逆に言えば、良くない生活習慣をあらためることが、肥満やメタボリック・シンドロームを予防、改善し、理想の体を手に入れることができるというわけです。