
太ももの内側にある内転筋は、歩く、走るといった動作をはじめ、ほとんどの日常生活、スポーツ動作に関与しています。
内転筋のストレッチを行うことで、股関節の柔軟性が上がるだけでなく、ダイエットやスタイルアップ、健康面にも大きなメリットがあります。
内転筋とは?
内転筋は通常、「内転筋群」と言われており、大内転筋、小内転筋、長内転筋、短内転筋、恥骨筋、薄筋の総称をいいます。おもに、股関節の内転(脚を閉じる動作)、股関節の屈曲(脚を前に上げる動作)動作に関与している筋群です。
また、内転筋は股関節の外転筋群と共に働き、骨盤の安定性を保つ役割があります。特に、骨盤の横の動き(安定)に大きく関与し、この筋肉群が働かないと、横ブレが大きくなり、歩行時に体を支えきれなくなってしまいます。
内外のバランスが悪いと、ふらついて歩いたり、脚をクロスしながら歩いてしまう「はさみ脚歩行」の原因になってしまいます。

内転筋が硬くなる原因
内転筋が硬くなってしまうには、いくつかの原因が考えられます。ここではその原因について解説していきます。
椅子に座っている時間が長い
椅子に座っている時、内転筋は体重の重さによって椅子に押し付けられるような形になるため、血管が圧迫されてしまうことから、血液やリンパの流れが滞り、筋肉が硬くなりやすい傾向にあります。疲労物質が排出されにくいため、筋肉の回復力は衰えてしまい、筋肉がより硬くなってしまいます。
また、椅子に座って足を組む癖がある方は、通常よりも血液の流れが悪くなりやすいため、一層の注意が必要です。

運動不足や加齢で内転筋が衰えている
筋肉量が少なくなると、ほんの少しの動作でも筋肉にとっては負担となり、筋肉は疲れやすくなります。
また、筋肉量が少ない状態では血液を流す力が弱くなるため、血流は滞ります。血流が悪い状態では疲労物質が排出されず、必要な栄養素や酸素が届きにくくなるため、筋肉の回復力はどんどん低下していきます。
このように、運動不足や加齢などが原因で筋肉が衰えると、「筋肉が疲れやすく回復しにくいため、疲労がどんどん蓄積されていく」という負のスパイラルに陥りやすくなります。
内転筋をストレッチすると得られる効果
内転筋のストレッチには、当然ながら「股関節の柔軟性が高まる」という効果がありますが、それ以外にもストレッチをすることで得られる効果がいくつかあります。
骨盤の歪みが矯正され、姿勢が良くなる
内転筋は骨盤に繋がっている筋肉なので、骨盤を正常な位置に保つ働きを担っています。 内転筋が硬くなると、骨盤を正しい位置に維持する力が弱くなるため、骨盤の歪みが発生しやすくなるのです。
骨盤が歪むと、O脚になったり、腰まわりが太く見えたりします。 O脚や腰回りのスタイルに悩みを抱えている方は、内転筋の柔軟性を高めることで解決できるかもしれません。
股関節の柔軟性が高まり、むくみが改善される
内転筋の柔軟性が高まると、股関節がスムーズに動くようになるので、股関節周辺の筋肉の運動量が増え、それに伴って下半身の血流が良くなります。
下半身は重力の影響を大きく受けるため、水分が溜まりやすくむくみやすい傾向にありますが、血流が良くなれば、余分な水分や老廃物が排出されるためむくみにくくなります。

高齢者のリハビリに役立つ
「足腰が重くなってきた」「歩くのがつらい」など、歩行に不安を感じている高齢者の方の多くの特徴として、筋肉が硬いという問題を抱えています。
内転筋は、歩行に重要な働きをしています。内転筋が硬くなると足を伸ばせなくなり、うまく歩けなくなってしまいます。また、内転筋は体のバランスをとる筋肉なので、内転筋が弱ってしまうと歩行時にバランスを崩すことが増え、怪我に繋がってしまうこともあります。
リハビリ代わりに内転筋をストレッチして柔軟性を高めれば、足をスムーズに動かせるようになり、歩行が楽になります。

内転筋ストレッチで姿勢が良くなる
内転筋は骨盤に繋がる筋肉群で、股関節の動きや骨盤の安定性に大きな役割を果たしています。この内転筋をストレッチすることで、姿勢改善に多くのメリットがあります。
内転筋が硬くなると骨盤が歪み、正しい位置を保つ力が弱まります。その結果、骨盤が前後や左右に傾き、猫背や反り腰、さらにはO脚などの姿勢不良が引き起こされやすくなります。これにより、腰痛や肩こり、下半身のスタイルへの影響も生じる可能性があります。
内転筋のストレッチを行うと、筋肉が柔軟になり骨盤が正しい位置に戻りやすくなるため、姿勢が整います。骨盤の歪みが矯正されることで、体全体の重心が安定し、立ち姿や歩行時のバランスが改善されます。また、股関節の柔軟性が向上することで、動きがスムーズになり、無理のない自然な姿勢を維持しやすくなります。
さらに、血行促進効果によって筋肉の緊張が緩和され、体全体のリラックスにも繋がります。これにより、姿勢改善だけでなく、疲労感の軽減や健康的な体作りにも効果を発揮します。日常的に内転筋ストレッチを取り入れることで、美しい姿勢と健康を手に入れることができるでしょう。

内転筋ストレッチ動画
内転筋ストレッチの注意点
内転筋のストレッチを行う際は、正しいフォームや適切な頻度を守ることが重要です。不適切なストレッチは、逆に筋肉や関節に負担をかけてしまうことがあります。以下では、内転筋ストレッチを安全かつ効果的に行うための注意点を解説します。
1. ウォーミングアップを行う
内転筋ストレッチを行う前に、必ず軽いウォーミングアップを行いましょう。体が冷えた状態で急にストレッチを始めると、筋肉や腱に負担がかかり、ケガのリスクが高まります。ウォーキングや足踏みなど、内転筋を軽く動かす運動で筋肉を温めてからストレッチを始めることが重要です。
2. 痛みを感じるまで無理に伸ばさない
ストレッチは、心地よいと感じる範囲で行うのがポイントです。無理に強い負荷をかけると、筋肉や靭帯を傷める可能性があります。特に、内転筋はデリケートな筋肉群のため、痛みを感じたらすぐに動作を中止し、負荷を減らしましょう。筋肉がリラックスする程度の力加減を心がけてください。
3. 正しいフォームを維持する
ストレッチ中に姿勢が崩れると、内転筋に十分な刺激を与えられないばかりか、他の部位に負担がかかる可能性があります。特に、骨盤が傾いたり、腰が反ったりしないように注意しましょう。正しいフォームを確認しながらゆっくり動作を行うことで、内転筋を効果的に伸ばせます。
4. 呼吸を止めない
ストレッチを行う際には、リラックスした状態を保つために呼吸を止めないことが大切です。呼吸を止めると筋肉が硬くなり、ストレッチの効果が低下するだけでなく、体全体の緊張感が増します。吸う・吐くをゆっくり繰り返しながら動作を行い、筋肉の緊張を解きほぐしましょう。

5. 無理に速い動作をしない
ストレッチは、ゆっくりと時間をかけて行うことが基本です。速い動作や反動をつけた動きは、筋肉や関節に過度の負荷を与えることがあります。内転筋を効果的に伸ばすためには、20~30秒程度静止した状態でキープしながら行う静的ストレッチがおすすめです。
6. 適切な頻度で行う
ストレッチは日常的に行うことが望ましいですが、過剰な頻度で行うと筋肉を痛める可能性があります。特に、筋肉痛や疲労感を感じている場合は、無理せず休息を取ることが重要です。週に3~5回程度、コンディションに合わせて適度に取り入れると効果的です。
7. ストレッチ後はクールダウンを行う
ストレッチ後は、軽いウォーキングや足首を回す運動などでクールダウンを行いましょう。これにより、ストレッチで促進された血流を維持し、筋肉の回復をサポートできます。また、水分補給を忘れずに行うことで、疲労物質の排出を助けることができます。
8. ケガや持病がある場合は医師に相談する
股関節や膝、腰などにケガや持病がある場合、ストレッチが症状を悪化させる可能性があります。事前に医師や専門家に相談し、自分に適したストレッチ方法を確認してください。また、ストレッチ中に痛みが続く場合も無理をせず専門家に相談しましょう。
9. 年齢や体力に合ったストレッチを選ぶ
ストレッチの種類や強度は、年齢や体力レベルに合わせて調整する必要があります。高齢者やストレッチ初心者の場合は、負荷の軽い動きやサポート器具を利用することで安全性が高まります。一方、運動経験者は、より深いストレッチを取り入れて柔軟性をさらに向上させることができます。
10. 動画やプロの指導を活用する
内転筋ストレッチの正しいやり方を確認するために、信頼できる動画や専門家の指導を活用することも効果的です。間違ったフォームや力の入れ方を防ぎ、安全で効率的なストレッチを行えます。今回紹介した動画リンクなどを参考に、自分に合った方法を選びましょう。

内転筋ストレッチを安全かつ効果的に行うためには、これらの注意点を意識して実践することが大切です。正しい方法で続けることで、股関節の柔軟性向上や健康面でのメリットを最大限に引き出すことができます。
まとめ
内転筋は、日常生活やスポーツのほとんどの動作に関与し、股関節の内転や屈曲、骨盤の安定性を保つ重要な筋肉群です。座りっぱなしの生活や運動不足、加齢などが原因で硬くなると、血流の滞りや筋肉の衰えを招き、姿勢の悪化やむくみ、歩行時のバランス不良につながります。
内転筋をストレッチすると、股関節の柔軟性が向上し、骨盤の歪みが改善され、姿勢が良くなる効果があります。また、血流が促進され、むくみの改善や疲労回復にもつながります。
特に高齢者のリハビリにも役立ち、歩行の安定性が向上します。内転筋のストレッチを日常に取り入れることで、柔軟性を保ち、怪我や不調を防ぎ、健康的な体を維持しましょう。