お尻や太ももの筋肉が痛くなる原因としては、外傷や体の使い方、神経系等、さまざまなことが考えられます。
今回は、神経系の原因による『坐骨神経痛』についてお伝えしてきます。
お尻と太ももの筋肉の概要
お尻と太ももの筋肉は、非常に多くの筋肉の集合体で構成されており、体のなかでも大きな筋肉ばかりです。
知識として、どのような筋肉が存在して、体がつくられているのかを知っておくことも、痛みを改善させるために大切なことだと思いますので、簡単にお伝えさせていただきます。
ハムストリングを鍛えることのメリット
人間の筋肉は、たとえばハムストリングを鍛える種目を行った時に、ハムストリングだけに力が入るかというとそうではなく、全身の筋肉に力が入ります。
なかでも、ハムストリングと密接に関係し、連動して働く筋肉があります。それは、臀筋群と体幹部です。これらの筋肉は、どこかに力が入ると一緒に働くというように、筋肉同士で協力して力を発揮するような体の構造になっています。
ということは、ハムストリングを鍛えていても、ヒップアップするし、お腹周りも引き締まります。そして、ハムストリング・臀筋群・体幹部といった体の中心にある大きな筋肉の量が増えると、基礎代謝が上がり、太りづらい、痩せやすい体を手に入れることができます。
ちなみに、ブレーキ筋である大腿四頭筋は、鍛えると大きく発達する筋肉ですが、ハムストリングは発達よりも締まる筋肉ですので、鍛えれば鍛えるほど、足が細くきれいになります。
スポーツの場面では、前に力を伝えるために必要不可欠な筋肉ですので、鍛えて強くすると前方への推進力が増し、走力がアップします。また、非常に体力のある筋肉ですので、ハムストリングが使えるようになると、それだけで持久力が増します。
陸上競技はもちろん、サッカー、野球、ゴルフ、バスケットなど、すべての競技でパフォーマンス向上が期待できるでしょう。
臀筋群
お尻の筋肉は、「大臀筋・中臀筋・小臀筋」の大中小の筋肉で構成されています。そのほか小さな筋肉である深層外旋6筋「梨状筋・上双子筋・下双子筋・内閉鎖筋・外閉鎖筋・大腿方形筋」というインナーマッスルが、大中小の臀筋のアシスト役としてサポートを担っています。
このように、一つにお尻と言っても、さまざまな筋肉で構成されていて、それらがうまく協調して微妙な股関節の動きを調整して、体を動かしています。
大腿筋
太ももの筋肉は、大きく分けて前面と後面に分けることができます。
まず、前面の筋肉は、縫工筋、大腿四頭筋(大腿直筋・内側広筋・外側広筋・中間広筋)で構成されています。
そして、後面の筋肉は大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋で構成されていて、まとめて別名「ハムストリングス」とよばれています。
坐骨神経痛とは
『坐骨神経痛』は、中高年の方に多く見られ、お尻や太もも、すね、ふくらはぎにかけて、鋭い痛みや痺れるような痛い、ふくらはぎの張り、締め付け感などの症状が現れます。
安静にしていても、お尻や足が激しく痛んで眠れない、足だけではなく腰にも痛みがある、立っていると足が痛んできて、立っていられない等の症状があります。こうした症状は、足の一部だけに強く感じることもあれば、足全体に強く感じる場合もあります。
原因としては、いくつか種類がありますので、ご説明していきます。
腰椎椎間板ヘルニア
ヘルニアとは、体内にある臓器が、本来あるべき位置から脱出してしまった状態を言います。有名なところで、臍ヘルニア(でべそ)、鼠径ヘルニア(脱腸)があります。これが、背骨のクッションである椎間板に起こったものを『椎間板ヘルニア』と言います。
椎間板は、線維輪と髄核でできていて、背骨をつなぎ、クッションの役目をしています。その椎間板の中に存在する髄核というゲル状の組織が、外に飛び出した状態です。これが、腰の骨である腰椎に起こったものを『腰椎椎間板ヘルニア』とよびます。
症状としては、腰痛をはじめ、下半身(お尻や太もも)の痛みや痺れ、足がうまく動かせなくなる運動麻痺、感覚が鈍くなる感覚麻痺などが起こります。原因としては、多くの場合、日々の生活のなかで、椎間板に負担が積み重なり発症します。
腰椎脊柱管狭窄症
背骨の中を通る脊髄からの神経の通り道を脊柱管と言います。『脊柱管狭窄症』とは、脊柱管を構成する骨や靭帯の肥厚、椎間板の突出などで脊柱管が圧迫を受け、狭くなる状態のことを指します。
症状としては、歩行時や立っている時に臀部から足全体(お尻や太もも)にかけての痛みと痺れです。また、間欠性跛行といって、歩くと症状が悪化し、少し休むと痛みが和らぐことが、多くの場合見られます。前かがみになる姿勢をとると、症状が和らぐのも特徴的です。
原因としては、脊柱管を構成する背骨や靭帯、椎間板の加齢変化によるもの、背骨のずれ(すべり症など)や椎間板ヘルニアなどでも、脊柱管が圧迫されれば、狭窄症になります。
変形性腰椎症
背骨は、骨の椎骨とクッションの役割を担う椎間板という軟性組織から成り立っています。
このような軟性組織は、腰を長年使用し続けたために老化によって、左右に飛び出たり、潰れたりして徐々に変形してきます。また、水分量が、椎間板は少なくなり弾力がなくなるので、十分に衝撃を吸収することができなくなります。
そのために、椎骨がお互いに衝突して、骨がこの衝撃によってすり減るようになり、一部の骨が増殖してトゲのようになります。このトゲを骨棘(こつきょく)と言います。そして、椎骨をサポートしている靭帯が弱く硬くなることによって、椎骨がよくズレるようになります。
『変形性腰椎症』は、腰部の背骨の腰椎が移動したり、変形したりすることによって、周りの神経などの組織が刺激されるために、痛みが起こるものを指します。
症状としては、鈍く腰が痛む、腰がだるい、腰が重いということがあります。特に、朝起きた時、疲労した時、腰の動かし始めに痛みがあります。症状が重くなると、冷えや痺れを足に感じたり、一回に長く歩くことが痛みのためにできなかったりします。
原因としては、加齢や労働環境、運動などによる影響が大きいとされています。40歳以上の高齢の方で、特に男性に多く発症するようです。
そして、重い物を扱うような重労働を行う方、激しく腰を使うスポーツを継続されていた方、腰痛が若い時期からある方、繰り返し、腰の病気や怪我がある方は、椎間板や腰椎が変形しやすくなります。
女性の場合は、多くの場合に更年期障害の一環として起きます。
坐骨神経痛になりやすい人
『坐骨神経痛』になりやすい人の特徴として、まず一番は、正しい体の使い方ができていないことがあげられます。基本的な立つ姿勢、座る姿勢、歩き方、走り方、立ちしゃがみ運動(スクワット)等の動作が、間違っている可能性が非常に高いです。
そして、その間違った姿勢で、長時間座っていたり、立っていたり、重い物を持ち上げたりすることで、背骨に対する負担が、一か所に集中してかかることで、体を痛めてしまいます。
坐骨神経痛の対処法
『坐骨神経痛』の対処法としては、まず、正しい体の使い方を身につけることです。上記にあげた日常生活動作を正しく行うことが、一番大切なことであると思います。
日常生活動作の基本の動作は、「スクワット」になります。まずは、スクワット動作を正しく行うことからはじめましょう。基本的な動作(スクワット)がうまくできていなければ、その応用(日常生活動作)をうまくできるわけがありません。
お尻や太ももの痛みや痺れを改善するためのストレッチなども非常に有効的ですが、もともとの原因を改善することができていなければ、一時的に症状を緩和させることにしかつながりません。
大前提としてまずは、「正しい体の使い方を学ぶこと」。そのうえでストレッチを行うとよいと思います。
坐骨神経痛の方への参考動画
まとめ
『坐骨神経痛』を改善させるためには、「正しい体の使い方を身につける」ことが一番大切です。そのうえで、トレーニングやストレッチを行うと効果的だと思います。
そして、なるべく長時間同じ姿勢でいないということも大切です。デスクワーク等で運動量が足りていないと感じる方は、時間をみつけて、こまめに体を動かすようにするとよいです。
簡単にできる運動として、「スクワット」がオススメです。どこでも簡単にできますので、ぜひ、日常生活のなかに取り入れてみてください。