男性2位、女性1位。これは、厚生労働省の国民生活基礎調査の男女別有訴者ランキングにおける『肩こり』の順位です。このように日本人の多くの人が肩こりに悩まされていることがわかると思います。
そして、慢性的な肩こりや首こりで悩んでいる人に多い特徴として、「肩甲骨が硬い」ことがあげられます。
ではなぜ、肩甲骨が硬いと肩こりになりやすいのか、そもそも肩甲骨が硬いとはどういう状態なのか、失われた肩甲骨の柔軟性を軟らかくするためには、どういう方法があるかなどを解説していきます。
肩こり・首こりのメカニズム
肩こり首こりの症状に悩まされても、腰痛や膝痛と違って、よほど症状がひどくないかぎり、整形外科や整体院、接骨院などに相談に行く人は少ないでしょう。おそらく、背伸びをしたり、たたいたり、マッサージをしたりして、一時しのぎをしていることが多いのではないでしょうか。それでも少しは楽になります。
しかし、しばらくすると、また首や肩が凝ってきて同じことをくり返してしまいます。肩こりや首こりに悩まされるのは、そうして何度もくり返すことで、ストレスになり、凝りを強く感じるようになるからです。そして場合によっては痛みを伴うこともあります。
また、こりや痛みを感じると集中力が途切れたり、意識が肩や首にいって判断力が鈍ったりもします。
肩こりや首こりの原因は完全に解明されているわけではありませんが、一つはガチガチに硬くなっている肩甲骨が原因と考えられます。ガチガチ肩甲骨でかつネコ背になると、前に出た頭を支えるために肩や背中の筋肉が頑張ります。筋肉は頑張りすぎると血行不良になり、筋肉の細胞呼吸が低下し、筋肉内に疲労物質や代謝物が溜まるようになります。これが肩こりになるメカニズムです。
改善するには、硬くなった肩甲骨をほぐし、ネコ背を改善することが重要です。
デスクワーク・運動不足・ねこ背も肩こりの原因
長時間のデスクワークが多い、最近運動不足気味である、油断するとねこ背になりやすい・・・。
以上三つのうち、一つでも当てはまる人は、頑固な肩こりや首こりになりやすいといえます。
デスクワーク続きだと頭と腕が体より前に出やすく、その重みで首から背中にかけての筋肉に負担がかかりやすくなります。かつ運動不足だと筋肉が弱く衰え、硬くなりやすく、肩周りの筋肉の柔軟性が失われてきます。さらにねこ背になると、首と肩周辺の筋肉にかかるストレスが増えます。
特に働き盛りのビジネスパーソンはこの三つとも当てはまるケースが多く、肩周りは、ガチガチに凝り固まってしまいます。
肩甲骨の柔軟性と肩こりの関係について
肩甲骨の動きが悪くなるのは、肩甲骨そのものが硬くなるのではなく、肩甲骨を動かしている筋肉がおとろえ、肩甲骨と筋肉をつなぐ腱、そして肩甲骨と鎖骨をつなぐ靭帯が硬くなるからです。
自由度が大きく、上半身の細かい動きにまで使われる肩甲骨は、大小たくさんの筋肉によって支えられています。肩甲骨を支える筋肉に限らず、筋肉は20~30歳をピークに加齢とともに衰えていきます。腱や靭帯も加齢とともに少しずつ硬くなります。また関節が滑らかに動くように分泌されている関節液の量も、やはり少なくなります。
つまり、何もしないでいると、加齢とともに柔軟性が失われ、硬くなるのが肩甲骨なのです。
よって肩甲骨の柔軟性を確保することは肩こりによって感じるだるさや痛みを緩和させる効果が期待できます。 肩甲骨ほぐしをはじめとした肩甲骨の柔軟性を確保するエクササイズで肩こりにアプローチしていきましょう。
首の柔軟性と肩こりについて
首の柔軟性は、首を支えている筋肉や肩関節・肩甲骨周囲筋の柔軟性に左右されます。 肩が前方に突出すると、首が下を向き、猫背になってしまいます。そのような姿勢が首の可動域を減少させてしまいます。
眼精疲労や肩こりが同時に起こるのは、目と顔、顔と首、首と肩関節・肩甲骨の関係が深いからなのです。
肩甲骨をストレッチでほぐして「肩甲骨リセット」
「肩甲骨リセット」の目的は、ガチガチに硬くなった肩甲骨をほぐし、動きをよくし、柔軟性をよみがえらせることです。上下左右に自由に動けるように肩甲骨をほぐしていくには、肩甲骨の動きに合わせたストレッチが必要になります。
肩甲骨の動きは大きく分けると次の6つになります。
①挙上・・・肩を上げるときに肩甲骨を上げる
②下制・・・肩を下げるときに肩甲骨を下げる
③内転・・・胸を張ったり、腕を後ろに引いたりするときに肩甲骨を寄せる
④外転・・・肩をすぼめたり、腕を前に突き出したりするときに肩甲骨を開く
⑤上方回旋・・・腕を上げるときに肩甲骨を開いて上げる
⑥下方回旋・・・腕を下げるときに肩甲骨を寄せて下げる
①~⑥の動きに合わせた、動的ストレッチが「肩甲骨リセット」の肩甲骨ほぐしで肩甲骨周りの筋肉の柔軟性を高めるのに有効です。
こちらの動画を参考に自分にできる無理のない範囲で行ってみてください。
*音声が出ますのでボリュームにご注意ください。
まとめ
運動不足や長時間のデスクワーク、そして加齢によって、私たちの肩甲骨は少しずつ硬くなり、柔軟性を失っていきます。この肩甲骨の柔軟性の低下は、肩こりや首こりを引き起こす大きな原因のひとつです。肩甲骨が硬くなると、その周囲の筋肉が収縮し、血流が悪くなることでさらに疲労が蓄積され、慢性的なこりや痛みにつながります。この状態を改善するためには、肩甲骨周りの筋肉の劣化を防ぎ、柔軟性を保つことが重要です。
日常生活の中で少しずつでも肩甲骨のストレッチを行うことは、肩甲骨周りの筋肉や靭帯に働きかけ、肩や首のこりを予防する効果が期待できます。たとえば、デスクワークの合間に肩甲骨を動かすストレッチを取り入れることで、筋肉がほぐれ、姿勢も改善されやすくなります。継続的なストレッチは、美しい姿勢を保ち、肩こりのない健康な体を手に入れるための大切な習慣と言えるでしょう。
参考動画
*音声が出ますのでボリュームにご注意ください。