現代人は睡眠時間が短く、就寝する時間も不規則になりがちと言われています。そのため、眠りたいときにはなるべくスムーズに入眠に入り、できるだけリフレッシュしたいと思っている方も多いことでしょう。
今回は、より睡眠の質を上げるための方法について解説していきます。
睡眠について
睡眠は、私たちの人生の約3分の1を占めると言われています。睡眠は、もちろん体の疲れをとるために必要ですが、それよりも重要なのが脳を休ませることにあります。
そして、トレーニングをされる方でしたら、睡眠中にタンパク質の合成が高まり、筋肉がつくられますし、勉強や記憶力の向上、楽器の技能練習、スポーツの技術の向上にも睡眠はとても重要とされています。
それは、睡眠中に勉強で暗記した記憶が整理されたり、スポーツの複雑な動きや楽器演奏の難しい技能なども、たくさん練習した後にしっかり睡眠をとることで、記憶が整理されて、その技能がより研ぎ澄まされるということが起こると言われています。
『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』
『レム睡眠』と『ノンレム睡眠』という言葉を聞いたことがあると思います。
レム睡眠とは浅い睡眠のことで、おもに記憶の整理や体の疲労回復を担当しています。夢をみるのはこのレム睡眠の時になりますから、脳は完全に休んでいない状態なのです。
一方、ノンレム睡眠は深い眠りのことで、大脳全体を深く休ませることを担当しています。起きている間ほぼフル回転で頑張っていた脳が、ノンレム睡眠の時にクールダウンしていくのです。ちなみにこの時は、夢はほとんどみません。
このレム睡眠とノンレム睡眠は、90分を1サイクルとして数回繰り返します。
ノンレム睡眠のほうが、90分のサイクルのうち割合が多く、就寝して3時間後くらいにもっとも深いノンレム睡眠が訪れると言われます。その時間に目を覚ましてしまわないように空調などに注意し、就寝の前に水分を取りすぎないなど、深い眠りをとりやすくする心掛けが良質な睡眠をとるうえでのコツになります。
そして、このサイクルを利用することでつらい朝もスッキリと起きることができます。90分周期で起床すればおおかた、睡眠の浅いレム睡眠時に起きることができるので、睡眠時間が少なかったとしても割とスッキリ目覚めることができます。
睡眠時間のおすすめは、6時間・7時間30分・9時間になります。あとは、個人差があるので、この時間を目安に微調整をして、自分のベストの睡眠時間を見つけていただければと思います。
睡眠パターン
睡眠パターンは大きく分けて三つあります。
一つ目は、睡眠時間を9時間以上とらないと体の調子が優れないという方を『ロングスリーパー』と言います。ちなみにメジャーリーガーの大谷翔平選手は、一日10時間以上の睡眠をとると言われています。
二つ目は、睡眠時間が6~9時間くらいが適正という方を『バリュアブルスリーパー』と言います。かなりの割合の方がこのパターンに属すると言われています。
そして三つ目が、3~5時間という短い睡眠なのにも関わらず健康を保っていられる方を『ショートスリーパー』と言います。これに該当する方はごくまれです。なぜ短時間睡眠が可能かというと、極端にレム睡眠が短いのにかかわらず、ノンレム睡眠自体の長さでいえば普通の方とほぼ変わらないからと言われています。
しかし、一番重要なのはやはり、就寝時間と起床時刻を一定にし、しっかりと睡眠時間(平均6~8時間)の量を確保するということになります。
睡眠の質を上げるには
寝る子は育つは本当?
体を成長させたり、筋肉をつけたり、疲れた体を回復させるのに重要な成長ホルモンというホルモンは睡眠中に多く分泌されます。
特に、ノンレム睡眠の一番深い、深睡眠の状態のときにたくさん分泌されると言われています。ですから十分に睡眠をとることがとても重要になります。大谷翔平選手が、一日10時間睡眠をとるというのも納得できますね。
一般成人の場合、慢性的な睡眠不足は体重増加や、メタボのリスクが上がると言われていますので、ダイエットの最大の敵は睡眠不足とも言われています。「寝ない子は育つ(太る)」ということですね。
睡眠前の水分補給も重要
人が自然に入眠するには、身体の内部の温度である深部体温を下げることが大切であるとされています。これは深部体温が下がることで、入眠と覚醒の切り替えを司るメラトニンホルモンの分泌が活発になり、自然に眠くなるためです。
深部体温を下げるためには、汗をかいて身体から熱を逃がす必要があり、季節にもよりますが、人は睡眠中に多い時で、約350mlの汗をかくと言われています。こうして、人間の体は、本人が意識していないところで、入眠の準備をしているのです。
そのため、入眠前に水分補給をしない場合、睡眠中の水分が不足してしまい、体温調節がうまくいかず、メラトニンホルモンが十分に分泌されません。そのため睡眠の質は悪くなり、目覚めも悪く、睡眠時間のわりにリフレッシュできなくなってしまいます。
就寝1時間程度前に入浴する
ゆっくり入浴をすることで、体を十分温め、寝つきが良くなります。ポイントは40℃前後のぬるま湯に20~30分程度つかりながらゆっくり温まるのが理想とされています。
人は体温が下がることで眠くなりますので、就寝前に一時的に体温を上げることで、その後、体温の低下とともに強い眠気を感じて、スムーズに就寝しやすくなります。
ぬるま湯は、副交感神経を活発にする効果があり、気分を落ち着かせリラックスさせるのにも効果的です。
リラックスできる睡眠環境を整える
寝室の室温は、夏は25~27℃前後、冬は15~18℃前後に設定しましょう。
寝床の温度は30℃前後が最適な温度とされ、室内の湿度は難関を通して50~60%が理想的です。睡眠を促すメラトニンホルモンは明るい状態ではあまり分泌されません。寝る1時間くらい前から部屋の照明を暗くし、強い光を感じないようにするのが良いでしょう。
睡眠中の音環境は40デシベル以下が望ましいとされ、50デシベル以上は、ほとんどの人が睡眠が阻害されると言われています。ちなみに40デシベルというのは、図書館の音環境と同等とされています。
睡眠の質を上げる飲みもの
睡眠の質をより良いものにするために、就寝前に飲む飲みものにも、さまざまものがおすすめされていますが、そのなかからいくつか紹介します。
まず、就寝1時間前までには、温かい飲みものを飲むのが良いでしょう。温かい飲みものを飲むと体温が上昇し、自律神経のなかで、体の活動を抑え、機能を回復させる働きのある副交感神経が優位となりますので、体がリラックスした状態になります。
おすすめの温かい飲みものは、たとえば、40℃~70℃程度の白湯、リラックス効果のあるハーブティー、体を温める効果の高いホットジンジャー、砂糖の入っていないピュアココアなどがあげられます。
そして、就寝直前は常温の水か、冷たい飲みものに切り替えます。良質な睡眠をとるためには、深部体温を下げる必要があり、就寝直前まで温かい飲みものを飲み続けていると、いつまでたっても深部体温が下がりません。
飲む量としては、コップ1杯分くらいで良いでしょう。あまり飲みすぎると、就寝中に幾度とトイレに行きたくなって起きてしまいますので、逆に安眠を妨げてしまいますので、飲む量に注意しましょう。
また、冷えすぎた飲みものは胃腸に負担をかけるため、かえって逆効果になりますので、注意が必要です。
寝る前に控えるべき飲みもの
睡眠の質を上げる効果的な飲みものがある一方で、寝る前に避けるべき飲みものもあります。
まず、コーヒーや紅茶、ホットチョコレートなどのカフェインの入った飲みものには気をつけましょう。カフェインには、体を興奮状態にする交感神経を刺激する作用があるため、入眠を妨げることになります。カフェインには、さらに利尿作用もあるので、夜中にトイレに起きる回数が増えてしまい、熟睡できなくなる場合がありますので、注意しましょう。
また、アルコール飲料もあまりおすすめできません。アルコールは一種の麻酔のようなもので、脳を麻痺させ、意識をなくしたり、たしかに眠くなる効果は期待できそうです。実際に「寝酒」という言葉があったり、就寝前にお酒を飲むことで熟睡できると考える人は多いようです。
しかし、酔いがさめてくると、逆に脳が活性化し、覚醒して睡眠の妨げになることがあるので、良い睡眠を求めるのなら、就寝前のアルコールは避けたほうが良いでしょう。どうしても寝る前にアルコールを飲みたい場合、おつまみにタンパク質と脂質を含むものを少量食べ、アルコールと一緒に水を飲むと良いでしょう。
仮眠は15~20分程度が最適
勉強中やデスクワーク中に疲れて仮眠をとることがあると思いますが、その場合、15~20分程度の仮眠が最適と言われています。
一度眠りに入って、ノンレム睡眠の中間的な深さ(ノンレム睡眠の第2ステージ)の数分で起きるのが最適とされています。20分以上眠ってしまうと第3ステージの深睡眠に入ってしまうので、もっと眠くなってしまうためです。
疲れを感じた場合は仮眠をうまく活用するのが良いでしょう。
日中しっかり活動する
程よい体の疲労感も、質の高い睡眠をとる大きな手助けになります。
通勤時に一駅分歩くなどの工夫をし、日頃から体を動かす習慣を身につけ、運動不足にならないようにすることが大切です。
就寝前のストレッチで体の緊張をほぐす
自律神経が興奮している状態ですと、入眠がうまくいかないことが起こってしまうので、就寝前には体の緊張をほぐして副交感神経優位になるような、ゆっくり深呼吸を行いながらできるスタティックストレッチ(静的ストレッチ)がおすすめです。
まとめ
このように、睡眠の質を上げる方法はさまざまあります。自分自身に合うか合わないかの好みもありますので、それぞれを試してみて、自分にとっての最適解を見つけることが大事です。
安眠の妨げになることはなるべく避けるようにし、より質の高い眠りにつけるよう努めましょう。