人間に限らず、動物は基本的には前に進みます。日常生活やスポーツの場面においても、歩くや走る、飛ぶ、投げる、飛ばす等いろいろな動作があると思いますが、基本的には前に向かって力を発揮することのほうが多くなります。
その「前に進む」ために、ハムストリングという筋肉は存在しています。生きていくうえで、とても重要な筋肉です。その筋肉を「鍛える」というよりも、「使えるようにする」という意識で筋トレを行うと、非常に効果的です。
今回は、ハムストリングの機能、基本的な筋トレの方法、また、日常的に使えるようにする重要性をお伝えしていきます。
ハムストリングの機能
ハムストリングは、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の三つから構成されていて、この三つの筋肉は二関節筋(股関節と膝関節にまたがる筋肉)と言われ、股関節と膝関節のどちらの動きでも働きます。機能としては、簡単に言うと膝を曲げる、股関節を伸ばす動きをします。
また、臀筋郡と密接な関係があり、臀筋郡と連動して働き、臀筋群とともに「別名:アクセル筋」とよばれています。
〇アクセル筋
人間の筋肉には、車で例えると、アクセルとブレーキの役割をする筋肉が存在します。
まず、アクセル筋はどこの筋肉かというと「臀筋群・ハムストリング」になります。アクセル筋は日常生活動作では、歩く時、走る時におもに使われる筋肉です。逆に、ブレーキ筋はというと「大腿四頭筋」になります。
スポーツ動作でも、基本的に、「蹴る」「飛ぶ」「投げる」など前に向かって力を発揮することが非常に多いので、アクセル筋が使えている人といない人では、競技力に天と地ほどの絶対的な差が生まれます。
ただし、競技によってはブレーキも使いますので、ブレーキを使っている人が競技力が低いというわけではありません。自分が、何を目的として体を動かしているかを考え、それに見合った体の使い方を身につけていく必要があります。
ハムストリングを鍛えることでのメリット
人間の筋肉は、たとえば、ハムストリングを鍛える種目を行った時に、ハムストリングだけに力が入るかというとそうではなく、全身の筋肉に力が入ります。
なかでも、ハムストリングと密接に関係し、連動して働く筋肉があります。それは、臀筋群と体幹部です。これらの筋肉は、どこかに力が入ると一緒に働くというように、筋肉同士で協力して力を発揮するような体の構造になっています。
ということは、ハムストリングを鍛えていてもヒップアップするし、お腹周りも引き締まります。そして、ハムストリング・臀筋群・体幹部といった体の中心にある大きな筋肉の量が増えると基礎代謝が上がり、太りづらい、痩せやすい体を手に入れることができます。
ちなみに、ブレーキ筋である大腿四頭筋は、鍛えると大きく発達する筋肉ですが、ハムストリングは、発達よりも締まる筋肉ですので、鍛えれば鍛えるほど足が細くきれいになります。
スポーツの場面では、前に力を伝えるために必要不可欠な筋肉ですので、鍛えて強くすると前方への推進力が増し、走力がアップします。また、非常に体力のある筋肉ですので、ハムストリングが使えるようになると、それだけで持久力が増します。
陸上競技はもちろん、サッカー、野球、ゴルフ、バスケットなどすべての競技でパフォーマンス向上が期待できるでしょう。
ハムストリングの基本的な種目(参考動画)
筋肉を鍛えるのではなく、使えるようにしよう
近年では、健康増進のために、ランニングや筋トレを行う方が非常に多くなりました。
われわれの立場としても、その流れはとてもよいことであると思います。筋トレを行うことで、健康面へのメリットがたくさんあるからです。生活習慣病のリスク低減、太りにくい体になる、体力がつき活動的になる等、ここではあげ切れないほど多くあります。
以前会員さまに、「筋トレっていつまでやればいいの?」と質問されたことがありました。
「一生です^^」と答えましたが、本当にそうなのです。体を動かして生活している間は、筋トレをして筋肉に刺激を与えなくてはいけないのです。筋力が低下すると、まず、自分の足で歩くことさえできなくなるからです。
ただ、そこで考えなくてはいけないのは、今行っている筋トレがずっと続けられるかということです。ちょっと疑問を覚える方もいるでしょう。若く体力がある元気な体で今行っている筋トレが、70歳、80歳、90歳、100歳になってもできますか? おそらく、できないのではないかと思います。
なかには、テレビに出るような超人的な肉体を持った高齢者もいますが、あなたの周りにいるでしょうか? いないと思います。そうです。いないのです。そんな特別な人は、基本的には身近にはいないし、ほんの0.1%の限られた人なんです。そこを目指してはいけませんね^^;
また最近では、スポーツクラブが休業しているため、今まで行っていた筋トレができなくなっている方も多いのではないでしょうか? 筋トレを行い、体を鍛えていた方が何らかの理由で、鍛えることができなくなるとどうなってしまうかというと、「筋肉が落ちる」ということになります。
せっかく努力して筋力アップしても、鍛えるのをやめるとあっという間に落ちてしまうのです。なぜ落ちてしまうかというと、筋トレのための筋トレをしてしまっているからです。おおかたスポーツクラブ等ではマシンなどを使い、筋肉を部位ごとに鍛えるようなことを行っている方が多いのではないでしょうか。
基本的に、人間の動きは、一箇所の筋肉では体を動かすことはできません。歩く動作を考えた時に、どこかの筋肉を一箇所だけ使い歩くことは絶対にできないのです。
ですので、筋トレを一箇所ずつ部位ごとに鍛えていると、一箇所だけの筋肉で体を動かすような神経回路が発達し、筋肉が連動しなくなります。すると筋肉は付くのですが、ただただ大きいだけで、日常やスポーツでの場面では使えない見せかけの筋肉しかつきません。
なので、筋トレでは部位ごとに体を「鍛える」のではなくて、全身の筋肉が連動するように、筋トレで体を「使える」ようにして欲しいのです。簡単に言うと、日常生活を筋トレにするということです。
ですので、基本的には筋トレで行う種目は、日常生活に近い動きのものを行います。日常生活動作である、歩く、走る、椅子から立つ、しゃがむの動作を筋トレで行うようにするとよいです。そうすると、基本的には、股関節周辺の筋肉を中心としたアクセル筋を使った動きになりますので、ハムストリング、臀筋群、体幹部がポイントになってきます。
上記にあげた筋トレで、スクワットやランジ種目は、まさにアクセル筋を使う筋トレですので、そのフォームが定着してくると、日常生活動作でその動きが顔をだすようになります。すると、日常生活を送る、ただそれだけでアクセルに刺激が入り筋トレになります。
要は、使えるようにすれば、勝手に鍛えられてしまうということです。日常で勝手に使われるようになれば、たとえ筋トレが行えない状況になったとしても、筋肉が落ちるということは基本的には考えられなくなります。
まとめ
自然界の動物たちが筋トレを行っている姿は見られませんが、それでも彼らは効率的で力強い動きをしています。これこそが本来の体の使い方ではないでしょうか。
人間も、日常生活の中で自然に筋肉を使うことが重要です。筋肉を鍛えることだけに集中するのではなく、「使える筋肉」を意識し、全身が連動して動くような体の使い方を身につけることが大切です。
一生筋肉が落ちない体を手に入れるために、日常生活そのものを筋トレの一環と捉え、自然な動作を活かした運動を取り入れていきましょう。