筋トレにおけるコーヒーの効果とは

トレーニングとコーヒーのイラスト

エルゴジェニック・エイドという言葉を聞いたことはありますか?

一般的にサプリメントと言えば、不足する栄養素を「補う」ものですが、エルゴジェニック・エイドとは、100のものを120にあげると言ったように、普段以上のパフォーマンスを発揮させるものです。

筋トレのパフォーマンスを高めるエルゴジェニック・エイドの代表と言えるサプリメントが、「カフェイン」です。カフェインをトレーニング前に摂取することで、最大筋力が増強するという高い科学的根拠が示されています。

そして、近年の研究で、カフェインを錠剤やカプセルで摂取するよりも、ある飲みもので摂取した方がよいとされています。それが「コーヒー」です。

今回は、筋トレにコーヒーがもたらす効果と、なぜカフェイン摂取の際に「コーヒー」がよいとされる理由をお伝えします。

筋トレ前のコーヒーの効果

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国際的なスポーツ大会におけるカフェインの服用、特に大量の摂取は、長年禁止とされてきた歴史があります。1984年~2004年までの20年間は、あらゆる競技会でカフェインの摂取は禁止されていました。

しかし、世界アンチ・ドーピング協会(WADA)は2004年、禁止薬物のリストからカフェインを除外しています。この決定を下したことで、アスリートの間でカフェインの利用が急速に拡大しました。

あの有名なメジャーリーガーのイチロー選手も、試合前にブラックコーヒーを飲んでいたそうですし、現在では、オリンピック選手のほとんどが、自身のパフォーマンス向上のために、カフェインを摂取するほどで、手軽な合法ドーピングとまで言われています。

では、なぜアスリートたちがコーヒー(カフェイン)を摂取するようになったのかというと、カフェインが筋疲労を軽減しさせることで、パフォーマンスを高めることがわかっているからです。

カフェインは、よく筋肉のエネルギー効率を高めると言われていますが、これは、研究により完全に否定されています。カフェインは筋肉に作用するのではなく、「脳」に作用します。

運動によって疲労を感じると、パフォーマンスが低下します。これは、脳にある痛みや疲労などの信号を感じ取るアデノシン受容体に作用して、その感受性を低下させる作用があります。そのため、筋疲労を感じる時間が遅くなり、運動のパフォーマンスを向上させると言われています。

また、同じ神経活動が関与する「筋力」にもカフェインが作用するのかという研究も行われており、その結果、現在では、カフェインを摂取することで、すべての筋収縮パターンで最大筋力が向上することがわかっています。そして、カフェインの血管収縮作用で、血流が良くなり、その状態で筋トレを行うことで心肺機能も強化されますし、筋トレ中の集中力も向上する効果もあります。

こういったことから、筋トレ前、コーヒー(カフェイン)を飲むと最大筋力が向上し、疲れにくくなる等、筋トレの効果が高まると言われています。

筋トレ後のコーヒーの効果

筋トレ後の効果としては、筋トレをすることで体には相当な負担がかかり、筋肉疲労が蓄積します。いわゆる筋肉痛というものです。

その筋肉疲労を取るには、体内代謝を活発にして、血液中に酸素を十分供給し、必要な栄養物質を体の隅々まで素早く供給することが大切です。また、筋肉で不要となった物質を再利用するものと排泄するものとに別け、排泄物は腎臓を通して体外へ出します。

コーヒーには、この働きを活発にする効果があるのです。コーヒーに含まれている成分に、ポリフェノール(クロロゲン酸)があります。ポリフェノール(クロロゲン酸)は、コーヒー豆に5~10%含まれ、含有量はカフェインよりも多いと言われています。

筋肉痛が起こることで白血球が集まり「活性酸素」を作り、細菌を殺したり、傷ついた箇所を綺麗にしたりします。こういった作用によっても痛みがでます。その活性酸素を除去するのに、抗酸化物質であるポリフェノールを摂ることも非常に効果的です。

ちなみに運動することによって失われた、エネルギー源を補給するためには、一緒に糖分を摂ることも大切です。 そのため筋トレ後は、砂糖を入れたコーヒーを飲むと疲労回復にさらに効果的と言えます

なぜコーヒーが最適なのか

2016年に、ある大学で、コーヒーの摂取による筋トレのパフォーマンスに与える影響についての研究が行われました。そのなかの実験で、トレーニング経験のある20代の男性9人を被験者に、「四つの飲料」「二種類のトレーニング」を疲労困憊になるまで行うといったものを行いました。

その四つの飲料とは、
① 砂糖水、
② カフェイン入りコーヒー、
③ カフェインレスコーヒー、
④ カフェインサプリ
です。

そして、二種類のトレーニングとは、
① スクワット、
② ベンチプレス
です。

その結果、
②カフェイン入りコーヒー、④カフェインサプリを摂取して行ったトレーニングは、
①砂糖水、③カフェインレスコーヒーを摂取した時よりも、高い負荷量になったのです。

さらに、カフェイン入りコーヒーを摂取したトレーニングは、カフェインサプリよりもトレーニングのパフォーマンスが高かったことが明らかになりました。コーヒーの効果が高くなったのには、液体の口腔内からの吸収や、コーヒーに含まれるポリフェノールやフラボノイドには抗酸化作用が考えられます。

ポリフェノールの摂取で運動による酸化を防ぐことができるという研究結果もでているため、コーヒーに含まれるポリフェノールとカフェインの相乗効果が、筋トレのパフォーマンスを向上させたのではないかと考えられています。

ただし、カフェイン摂取にコーヒーが最適といっても、コーヒー以外の方法でカフェインを摂取するのが効果がないというわけではなく、単に、その他の類のデータが不足しているからというのがその理由です。

たとえば、ある研究では、カフェインが入ったゼリーやバー、ガムなどの菓子類でもパフォーマンス向上に役立つ可能性があることが分かりましたが、確証が得られるほどデータは得られなかったようです。

一方で、カフェイン入りエナジードリンクや吸入型エナジードリンク、カフェイン入りのエアロゾルを鼻や口に噴霧するスプレーなどは、効果がほとんど認められませんでしたが、効果がないと結論するにはデータが不足しているとのことです。

このため、「コーヒー以外は効果がない」というよりは、「コーヒー以外の方法では効果が確認できていない」ということのようです。

飲む量、タイミング

コーヒーを飲むタイミングについては、運動の約45~90分前がオススメです。次に、カフェインを摂取する量ですが、コーヒー2杯分がベストだそうです。

カフェインによるパフォーマンス向上が認められるのは、体重1kgあたり3~6mgだということが分かっています。通常の場合、淹れたてのコーヒーには、1杯あたり95~165mgのカフェインが含まれているので、体重が70kgの成人が210mg~420mgのカフェインを摂取しようとすると、コーヒーを約2杯飲めばいい計算になるというわけですもっとも、1杯のコーヒーに含まれるカフェインは品種や焙煎の深さ、入れ方などによってかなり異なるので、あくまで目安の量となります。

特に、日常的にコーヒーを飲んでいない人が運動能力アップのためのカフェイン摂取を実践する場合は、安全のために少量から試してみる必要があるとのことでした。

まとめ

筋トレのパフォーマンスを向上させるために、コーヒーが非常に有効であることが近年の研究で明らかになっています。コーヒーに含まれるカフェインは、筋疲労を軽減し、集中力や心肺機能を高める効果があります。特に、カフェインは脳に作用して疲労や痛みの感受性を低下させることで、筋トレの最大筋力を向上させる効果を発揮します。

また、コーヒーにはポリフェノール(クロロゲン酸)が含まれており、抗酸化作用によって筋トレ後の筋肉疲労や筋肉痛を軽減し、疲労回復をサポートします。さらに、糖分を含むコーヒーを摂取することで、運動後に失われたエネルギーを効率的に補給することができます。

コーヒーの摂取タイミングとしては、運動の45~90分前が効果的で、体重1kgあたり3~6mgのカフェイン摂取が目安とされています。体重70kgの場合、コーヒー約2杯分が適量です。ただし、コーヒーのカフェイン含有量は品種や抽出方法によって異なるため、適量を意識して摂取することが重要です。

筋トレ前後にコーヒーを活用することで、効率的なトレーニング効果を得られるだけでなく、疲労回復やパフォーマンス向上にもつながります。

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