多くの人が一度は経験するダイエットは、永遠の悩みではないでしょうか。
「〇ヶ月でマイナス10㎏!」などの短期間ダイエットや、「飲むだけで痩せる」などのサプリメントに頼ってみたりと極端なダイエットの末、もとの食事の量に戻してしまうと、以前よりも体重が増えて逆に痩せにくい体になってしまう結果になりかねません。痩せやすく、太りにくい体をつくるには、「何を食べないか」ではなく、「何を食べるか」がとても重要です。
今回はそんな体づくりに重要な栄養素『たんぱく質』について解説していきます。
体をつくる最重要栄養素『たんぱく質』
〇たんぱく質は体を作り維持するための材料
たんぱく質は、炭水化物(糖質)、脂質と並び「三大栄養素」の一つで、私たちの生命維持に欠かせない栄養素です。
たんぱく質のおもな働きは、私たちの体の組織をつくる材料になることです。筋肉はもちろんのこと、内臓や血管、皮膚や髪の毛、爪など体の大部分がたんぱく質でできており、その総重量は体重の約30~40%とも言われています。
特に、筋肉においては、水分以外の約80%がたんぱく質によってつくられています。また、血液の細胞やホルモン、酵素など、体の機能を維持するための物質も、たんぱく質が材料になっています。さらに体を動かすエネルギー源としても使われ、1gのたんぱく質で約4kcalのエネルギーを産生します。
食べものから摂取したたんぱく質は、胃や腸でアミノ酸に分解され体内に吸収されます。そして、全身の各部位で機能するたんぱく質として再合成されます。そのようにしてつくられるたんぱく質の数は、なんと10万種類とも言われています。
そして、それらをつくっているのが、わずか20種類のアミノ酸です。この20種類のアミノ酸の組み合わせによって、それぞれの異なる種類のたんぱく質がつくり出され、働いているのです。
食事制限だけのダイエットではリバウンドしてしまう
ダイエットしたいと思った時、多くの人がまず考えるのが食事制限のダイエットではないでしょうか。
減量の仕組みは、摂取エネルギー(食べた量)が消費エネルギー(運動や基礎代謝で使った量)を下回った時ですから、体重を落とすためには、食べる量を減らして摂取量を減らすか、運動量や活動量を増やして消費エネルギーを上げるか、あるいはその両方によってエネルギーの収支をマイナスにする必要があります。
この食事制限で痩せるという考え方は、普段の自分の食生活を見直し、余計なカロリーを控えるという点では間違っていませんが、安易にはじめてしまうと、減量どころか、以前よりも体重が増えてしまうという結果が待っています。
この食事制限で問題なのが、カロリーカットの時にたんぱく質の量を減らしてしまうことです。たんぱく質は筋肉をつくる材料になるので、筋肉を燃焼させる筋肉の量をも減らしてしまい、結果、痩せにくい体になってしまいます。
さらに基礎代謝も落ちてしまい、太りやすい体質になり、食事の量をもとに戻した際にリバウンドしてしまいます。リバウンドがいけないのは、痩せるときは筋肉と脂肪の両方が落ちるのに対し、体重が戻るときには、脂肪のみで戻ってしまう可能性が大きいので、痩せる前より質的によくないからです。
このことからも、たんぱく質が豊富でバランスの良い食事を心掛けることが、リバウンドせずに理想の体重になるための近道と言えます。
代謝アップがダイエットのカギ
「痩せられるなら、別に筋肉が減っても構わないのでは?」と考えている人も少なくないかもしれません。
しかし、筋肉は体を動かしたり、姿勢(スタイル)の維持に重要ですし、ダイエットにおいても基礎代謝を上げるという重要な役割を担っています。
基礎代謝とは、体温維持や心臓や肺などを動かして生命を維持するなど、生きているだけで必要不可欠なエネルギーのことです。一日の消費エネルギーのうち、基礎代謝が60~70%、運動を伴う活動代謝が20~30%、食事による代謝(DIT)が10%をされています。
さらに、基礎代謝量の内訳を見てみると、筋肉が一番多く全体の約20%以上を占めています。このため、食事制限ダイエットで全身の筋肉が減ってしまうと、基礎代謝も低下して痩せにくく、太りやすい体になってしまうのです。
筋肉量の低下に伴い、体力も落ちるので、日常での運動量も減り、消費エネルギーのなかなか上がりません。さらに筋肉がなくなることで、ボディラインもぼんやりとしてしまい、理想の体型になかなか近付けなくなってしまいます。
この悪循環に陥らないようにするためにも、筋肉量を増やし高い基礎代謝を維持することが重要です。
一日に必要なたんぱく質の量は?
〇体重1㎏あたり0.9~1.0gを目安に
では、一日にどれくらいの量のたんぱく質を摂取するのが理想なのでしょうか。
厚生労働省が策定する『日本人の食事摂取基準』によると、一日の推奨量は18歳以上の男性で60g、女性で50gとなっています。
しかし、この数値は多くの人の平均値から算出される基準値にすぎません。厳密にいえば、その人に必要なたんぱく質の量は、身体活動レベルや体の大きさ、筋肉量などによって、個人差があります。
おもにデスクワークや家事をこなし、通勤や買いもの、時々軽い運動などを行う身体活動レベルが「普通」の人の場合、一日に必要なたんぱく質の量は体重1㎏あたり約0.9~1.0g。たとえば体重60㎏の人なら、一日54g~60gを目安に摂取すればよいということになります。
一方で、妊娠・授乳期の女性や比較的体の大きな人、体を動かす仕事に携わる身体活動レベルが「高い」人では、より多くのたんぱく質が必要とされます。
なかでも週に2~3日以上筋トレを行う人や、活発な運動習慣のある人では、体重1㎏あたり最大約1.6gのたんぱく質が理想的と言われています。さらに、高齢者も必要摂取量が多く、1.06gとされています。
筋肉をはじめ、血管や各臓器、骨や皮膚、髪の毛、ホルモンや酵素など、体を構成するあらゆる組織の材料として不可欠なたんぱく質ですから、自分の身体活動レベルや体格、筋肉量に見合ったたんぱく質の量を知り、適切に摂取することが大切と言えます。
ちなみにトップアスリートは、体重1㎏あたり2.0g以上のたんぱく質を必要とするため、とても摂取が大変です。ですから、プロテインドリンクなどのサプリメントで代用したりするのですね。
〇一食あたり20~30gを目安に摂る
一日に必要なタンパク質は、三回の食事からまんべんなく摂取するのが理想ですが、筋肉をつけたい場合は、一食あたりの摂取量に気を配る必要があります。
身体活動レベルが高い人で、体重1㎏当たり1.6gのたんぱく質量で換算すると、体重60㎏の人で一日96g、一食あたり32gが目標になります。一食あたりの摂取量は、多すぎても少なすぎてもいけないということです。
量が多すぎても、体内では利用しきれず、余分な分は排出されてしまいます。少なすぎても、たんぱく質不足により、筋肉の分解が始まってしまいます。ここで重要なのは、たんぱく質を切らさないということです。
まとめ
ダイエットや健康のためには、筋肉はもちろんのこと、内臓や血管、髪の毛や皮膚、爪にいたるまで、体を構成するあらゆる部位の材料となる重要な栄養素、たんぱく質の摂取が必要です。
一人ひとりに合った適切なたんぱく質の量を知り、たんぱく質を切らさずに毎日摂る習慣をつけることにより、理想の体を手に入れることができるというわけです。