筋トレを行う時に、体の裏側というのは、前側に比べてどうしても筋肉への意識が薄く筋トレが難しいと言われています。というのも背中の筋肉の動きを動作中に目で見て確認することができないからです。
また、勉強や仕事など集中する場面では、背中が丸まり猫背の姿勢になりやすいのも自分の姿勢を目で見て確認ができないからです。そして、自分の後ろ姿を写真で取ってもらった時に「誰?これ?!」と思っている以上に丸い背中になっていて驚くこともあるのもこのためです。
今回は、背中の筋肉の意識を高めるための体の使い方や、おすすめエクササイズをお伝えしていきます。
背中の筋肉の概要
背中側の筋肉は非常に多くの筋肉で構成されています。
今回は、比較的大きな筋肉を三つご紹介します。大きな筋肉は小さな筋肉に比べ意識がしやすいのでまずはこれらの筋肉にまず刺激を入れることをお勧めします。
僧帽筋
僧帽筋はアウターマッスルと言い、体の表層にある筋肉で首から肩、背中の上部に繋がっている菱形の筋肉になります。
僧帽筋の役割は、おもに肩甲骨の動作に関与しています。
肩甲骨を挙上、上方回旋させる動作、肩をすくめる動きをします。
肩甲骨の内転させる動作、肩甲骨を背骨に寄せる動作をします。
肩甲骨の下制させる動作、肩甲骨を下げ、肩を下げる動作をします。
肩こりの原因筋として知られている僧帽筋ですが、なぜ僧帽筋が硬くなってしまうかというと、僧帽筋が両腕の重さと頭の重さを常に支えているからです。
片腕の重さは体重の約6%(50㎏の場合3㎏)と言われています。
頭の重さは体重の約10%(50㎏の場合5㎏)と言われています。
それらの重みが常にかかっていると、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を取り続けていると、僧帽筋は少しずつ硬くなり、血液循環が悪くなり肩こりの症状がでるようになってしまいます。
広背筋
広背筋は、上半身の筋肉の中でもっとも大きな筋肉になります。背骨、骨盤、肩甲骨、肩関節に付いている筋肉になりますので、上半身の動作に基本的に関与しています。
上腕を上から下に引き下げる動作や骨盤を上に引き上げる動作で作用します。表層にあるアウターマッスルなので、発達していると目で見てすぐわかります。
特に、水泳選手はわかりやすいのではないでしょうか。背中が大きく、腰回りがスマートに引き締まる逆三角形のボディになっています。そのほか、スポーツ選手も使う重要な筋肉なので、アスリートたちは大きく発達してします。
脊柱起立筋
脊柱起立筋は、その名のとおり脊柱(背骨)を立たせるためにある筋肉になります。腸肋筋、最長筋、棘筋の三つの筋肉の総称です。
脊柱起立筋は、骨盤から後頭部まで続く非常に長い筋肉になります。背中を反らす動作で働く筋肉になります。
われわれは、地球にいる以上、重力を常に感じながら生活をしています。脊柱起立筋が弱まったり、働かなくなると重力に負け上半身が支えられなくなってしまいます。姿勢の維持に関与する重要な筋肉になります。
背中を鍛えるトレーニング種目
背中を鍛えるトレーニング種目としてお勧めなのは、やはりBIG3と言われるスクワット、デッドリフト、ベンチプレスになります。
特に、下半身種目であるスクワットとデッドリフトの動作というのは、日常生活動作で頻繁に行う動作でもあります。なぜなら日常生活動作はほとんど下半身中心だからです。
正しいやり方でトレーニングを行い、動作を身につけ、日常生活に活かすことができれば、日々のなにげない動作で、常に背中の筋肉に刺激を入れることができ、効率的に鍛えることが可能になります。
また、これらのトレーニング種目をお勧めする理由としては、「全身の筋肉が連動する」ことがあげられます。
スポーツや日常生活動作では、一か所の筋肉だけを使い体を動かしているわけではなく、全身の筋肉を連動させて体を動かしています。そのため背中だけを鍛えるのではなく、背中もお腹もお尻もその他すべての筋肉を使うことが重要なのです。
ただし、背中の筋肉に集中して刺激を入れるトレーニングを否定しているわけではありません。たとえば、背中の筋肉の意識が薄いという場合に、背中の筋肉一か所に刺激を入れ、意識を高める時に非常に効果的となりますので、補助的に行うのであれば良い種目だと考えます。
※スクワットとデッドリフトの正しいやり方は、参考動画にてご確認ください。
背中の筋肉を使えるようにする
背中の筋肉を鍛えることによるメリットは、姿勢が良くなる、肩こりや腰痛の予防・改善、体のボディライン、シルエットが綺麗に見えるといったことが一般的に言われています。
背中を鍛えることでこれらのことが獲得できるのではなく、正しい体の使い方を知り、トレーニング中のフォームや日常的な姿勢が良くなれば、自然と背中の筋肉を使うので自然と背中は鍛えられるのです。また、体のボディラインやシルエットも自然と綺麗になるし、肩こりや腰痛も予防・改善が自然にできるのです。
残念ながら筋肉を鍛えて、筋肉量が増えても姿勢が良くなることはありません。(※著しい筋力低下がみられる場合は、はじめに鍛えることもあります)
背中の筋肉に限ったことではありませんが、筋肉を鍛える前に「関節や筋肉の機能的で正しい体の使い方」を身につけることが最優先となります。正しい体の使い方を身につけ、そこに適切な負荷を入れることが正しいトレーニングの順序になります。
背中の筋肉を使えるようにするには?
上記でご説明したとおり、われわれの体は全身の筋肉や関節を連動させることによって体を効率的に動かしています。そのため、ある関節と筋肉が中心とした体の使い方を身につけることにより背中の筋肉が自然と使えるようになります。
その筋肉と関節とは、お尻と股関節です。
股関節は『Hip Joint』と言い、お尻の筋肉を指します。
「お尻の筋肉が使えるようになると同時にお腹の筋肉を使います。お腹の筋肉を使うと背中の筋肉を使います」という形で筋肉は表裏一体ですので、お尻(股関節)の筋肉が使えるようになることで、全身の筋肉が連動して働きます。
背中の筋肉を使えるようにするには、背中の筋肉の意識を高めることも大切ですが、はじめに「股関節を中心とした正しい体の使い方」を身につける必要があるのです。
背中を鍛える上での注意点
背中を鍛える際には、いくつかの重要な注意点があります。特に背中の筋肉は動作中に目で確認しづらく、意識が薄れがちなため、誤ったフォームや非効率なトレーニングになりやすい部位です。
まず、正しいフォームを維持することが大切です。フォームが崩れると、肩や腰に過剰な負担がかかり、怪我のリスクが高まります。トレーニング中は鏡で姿勢を確認するか、トレーナーにチェックしてもらうと良いでしょう。
背中の筋肉は他の部位と連動して動くため、全身のバランスを意識したトレーニングが必要です。背中だけを鍛えようとせず、スクワットやデッドリフトなどの全身運動を取り入れることで、効率的に背中の筋肉を刺激できます。
さらに、筋肉を意識することもポイントです。目で確認できない背中の筋肉は、動作中に収縮する感覚をしっかり感じる必要があります。広背筋を鍛える際は、腕を引く動作で筋肉が動いていることを意識しましょう。
柔軟性を保つことも重要です。長時間同じ姿勢を続けると筋肉が硬くなりやすいため、トレーニング前後にストレッチを行い、筋肉をほぐしておくと効果的です。
最後に、「股関節を中心とした正しい体の使い方」を習得することが、背中を効果的に鍛える鍵です。股関節を正しく使えるようになることで、背中の筋肉も自然に活性化します。
これらのポイントを意識し、無理のない範囲で適切なフォームと負荷を心がけましょう。正しい方法でトレーニングを行えば、効率よく背中を鍛え、理想の体を目指せます。
まとめ
背中を鍛える際には、いくつかの重要な注意点があります。特に背中の筋肉は目で動きを確認しにくいため、意識が薄れがちで、誤ったフォームや非効率なトレーニングになりやすい部分です。
まず、正しいフォームの維持が最優先です。フォームが崩れると、肩や腰に過剰な負担がかかり、怪我のリスクが高まります。トレーニング中は鏡で姿勢を確認したり、トレーナーにチェックしてもらうことをおすすめします。特に背中の筋肉は肩甲骨や脊柱に関与する動作が多いため、動きの精度が重要です。
背中の筋肉は全身の他の部位と連動して動くため、全身運動を取り入れることが大切です。スクワットやデッドリフトなど、全身の筋肉を使うトレーニングは背中を効果的に刺激します。
これらの動作では、股関節を中心とした動きを習得することが特に重要です。股関節が正しく使えるようになると、背中を含めた全身の筋肉が連動して働きます。
筋肉の「意識」も欠かせません。目で確認しづらい背中の筋肉は、動作中に収縮している感覚をしっかりと捉えることがポイントです。広背筋を鍛える場合、腕を引く動作で背中の収縮を感じるよう心掛けましょう。
さらに、柔軟性を維持することが怪我の予防とトレーニング効果の向上に繋がります。長時間同じ姿勢を取る生活では筋肉が硬くなりやすいため、トレーニング前後にストレッチを取り入れて筋肉をほぐしましょう。
背中を鍛えることで、姿勢の改善、肩こりや腰痛の予防・改善、ボディラインの引き締めといったメリットを得られます。
しかし、これらは筋肉を鍛えるだけではなく、正しい体の使い方を習得することによって達成されます。体全体の連動性を意識しながらトレーニングに取り組むことで、背中の筋肉を効果的に鍛え、理想的な体を目指しましょう。