自分の身を守るために働く「免疫」は、自然に備わった体の防御システムです。その名のとおり「疫(えき)から免れる(まぬがれる)」要するにウイルスから逃れるという意味の言葉です。
体内に侵入したウイルスを攻撃し、自分の体の状態を正常に保つ働きをしています。 そのため、免疫力が低下すると感染症などの病気に罹りやすく、さらには病気が悪化してしまうリスクも高まります。
今回は、免疫に関する知識と免疫力を高める方法をお伝えしていきます。
最前線の防御システム「粘膜免疫」
ウイルスによる侵入口は、ほとんどが「粘膜」からになります。消化器や呼吸器などの粘膜に感染、増殖し血液中に侵入します。
粘膜は「粘液」を分泌して、異物から粘膜細胞を守っています。粘液には、lgAという物質が分泌されており、これによってウイルスを中和して感染から身を守ります。これを「粘膜免疫」と言います。
免疫グロブリン「lgA」
免疫における感染防御では、異物が体内に入ると排除しようと働く免疫グロブリンが作られ、健康な状態を保っています。
免疫グロブリンは抗体としての機能や構造を持っているたんぱく質の総称で細菌やウイルスなどの病原菌が侵入した際に排除する抗体としての機能があります。
免疫グロブリンは、lgG、lgA、lgM、lgD、lgEと5種類あり、それぞれに働く場所が異なります。そのなかでももっとも重要なのが、粘膜の表面に分泌される「lgA」という抗体です。病原菌が侵入した際にくっつくことで活動を抑制し、毒素を無力化する重要な役割を担っています。
免疫力というと体内に入ってきた外敵をやっつけるイメージがありますが、こうしたlgAを中心とした粘膜の働きで病原菌やウイルスの侵入自体を防御するのが、粘膜免疫のおもな役割になります。粘膜の健康を保って防御壁を強化することが非常に大切になります。
生まれつき持っている「自然免疫」
自然免疫とは、ウイルスや細菌などの外敵が体内に入ってくると、真っ先に駆けつけてやっつける免疫反応のことで、マクロファージ、顆粒球、NK細胞という免疫細胞がそれにあたります。
マクロファージ
元は単球とよばれる白血球の一種で体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を捕食し、消化・殺菌することで感染を予防しています。また傷を修復したり、体の新陳代謝を調節したりとマクロファージは健康維持に欠かせない多くの役割を担っています。
マクロファージはさまざまな免疫細胞と協力しあって体を守っています。異物が侵入した際、最初に発見するのは、マクロファージですが、その情報はヘルパーT細胞に伝えられます。
ヘルパーT細胞は免疫機能の司令塔のような存在ですぐさまB細胞に異物に対して対応できる抗体を作るように連絡します。するとB細胞は抗体を産生できる形質細胞に変身し、抗体を作ります。ちなみにB細胞には病原体の特徴を記憶する機能があります。一度麻疹に罹ると二度と罹らなくなるのは、B細胞の働きによるものです。
マクロファージは免疫機能において非常に重要な役割を果たしていますが、それだけで異物に対応できる訳ではなく、多くの免疫細胞と協力しあって体を守っています。
顆粒球
顆粒球は「好中球」「好酸球」「好塩基球」に3種類に分けられます。
体内に細菌などの異物が侵入した際にいち早く攻撃を始めるのが「好中球」です。好中球は白血球の中の一種であり、白血球全体の45〜75%を占め、強い貪食能力を持ち、酵素の働きで食べた異物を消化・殺菌する能力を持ちます。処理しきれなかった異物はさらに強力な貪食能力を持つ、マクロファージが食べます。
NK細胞
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、白血球の一種でリンパ球の約10〜30%を占める免疫細胞です。
体内を常に見回っていて、細菌やウイルスなどの病原菌、がん細胞を見つけると、きわめて強力な殺傷能力でいち早く単独で攻撃を仕掛けます。
病原体の情報を記憶する「獲得免疫」
自然免疫は、血液中に入った小さな病原体や細胞内に入った病原体に対しては対処することが苦手とされています。そこで獲得免疫の出番になります。
獲得免疫は、生まれた時には備わっておらず、後天的に獲得されるものです。一度侵入した病原体に対しての攻撃方法を学習し、記憶することで、次に体内に入ってきた時に最良の方法で攻撃します。 獲得免疫には、以下の種類の白血球が関与します。
リンパ球
リンパ球の働きによって体は病原体を記憶し、侵入した異物が危険なものかを判断し記憶します。
リンパ球のなかには過去に遭遇した病原体を記憶する「メモリー細胞」があります。このような細胞はその後何年も何十年も生き続けます。たとえば1度罹った水疱瘡や麻疹には2度と罹らなくなります。病気によっては予防接種で発病を予防することが可能です。
そのほかにもリンパ球には、B細胞、キラーT細胞、形成細胞、ヘルパーT細胞などがあり、自然免疫の際にお伝えしたとおり、それぞれが協力し合い体を病原体から守っています。
免疫力を上げる方法「効果的なサプリメント」
免疫力を上げるためには、基本的には規則正しい生活を送ることが重要です。それを踏まえて今回は免疫力を上げるために効果的なサプリメントを2種類ご紹介いたします。
ビタミンC
ビタミンCは、抗酸化作用と酵素を助ける作用を持つ栄養素です。また体内に侵入したウイルスや細菌と闘う白血球に多く含まれることがわかっています。
要するにビタミンCが体内になければ、免疫細胞は正常に働くことができず、病気のリスクを高めます。ビタミンCを摂取することで免疫機能が強化され、病気への抵抗力が向上します。
ちなみにビタミンCは体内で合成することができないので、外から取り入れなければなりません。ビタミンCの摂取量については、一日に1g〜3gが目安になります。(※個人差があります)
ビタミンD
病原菌が体内に侵入した際に免疫細胞では「サイトカイン」というたんぱく質が分泌されます。サイトカインが分泌されることで、免疫細胞を活性化し外敵に対する攻撃指令を出したり、逆に攻撃をしすぎないようにストップをかけたりしてバランスを取っています。
このバランスが崩れ、感染した細胞だけでなく、正常な細胞まで攻撃してしまう状態のことを「サイトカインストーム」と言います。
「ビタミンDには、攻撃によって炎症を引き起こすサイトカインを減らし、炎症を抑えるサイトカインを増やす働きがある」と言われています。これにより過剰な炎症を引き起こすサイトカインストームを抑制する効果が期待できます。
ビタミンDの摂取量に関しましては、一日に5000〜10000IU(125〜250mcg)が目安になります。(※個人差があります)
まとめ
免疫力を向上させるためには、よく食べ、よく動いて、よく寝るといったように基本的には規則正しい生活習慣を送ることが大切です。
この時節、免疫力を上げようとさまざまなことを実践されている方も多いのではないでしょうか。われわれの体には先天的に備わっている免疫や後天的に備わる免疫もあり、何重にも重ねて体を守ってくれているということを考えると本当に有難いことです。
今回取り上げた免疫力を上げる方法以外にもたくさんの方法があります。ご自身の生活に取り入れやすいものから試してみると良いと思います。