
近年では、高たんぱく低糖質という言葉をよく聞くようになりました。たしかに炭水化物の摂取をコントロールすることで、ダイエットは有利に進みます。しかし必要最低限の糖質は筋トレを行ううえで非常に重要な栄養素になります。
今回は筋トレに炭水化物はどのような役割を果たすのかをご説明いたします。
炭水化物の概要

炭水化物は大きく分けると『糖質』と『食物繊維』に分けることができます。
炭水化物の役割としては、エネルギー源となる『ブドウ糖』を体内の各組織に供給することです。特に脳のエネルギーとなれるのは、ブドウ糖のみになります。
安静時でも一日に約100g(1時間に約4g消費している)のブドウ糖が使用されています。そのため、炭水化物(糖質)が不足することで、さまざまな不調につながります。思考能力低下、集中力低下、やる気減退、イライラするなどがブドウ糖が不足しているサインです。
このように筋トレだけでなく、日常生活を送る上でも炭水化物は重要な栄養素となりますが、摂りすぎも注意が必要となります。
ブドウ糖の過剰摂取により血糖値が上昇し、高血糖になる可能性がありますので注意しましょう。

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筋トレに炭水化物が必要な理由
筋肉をつけるためには、たんぱく質が必要なことをご存じの方は多いかと思います。しかし筋肉をつけるために炭水化物も必要だということをご存じの方は少ないと思います。
筋肉を付けて余計な脂肪を減らそうと、たんぱく質をしっかり摂り、炭水化物は控えている方もいるでしょう。しかし運動中、炭水化物が不足してしまうと、体を動かすために必要なエネルギーをつくるために筋肉を分解させます。
要するに筋肉量が減少し、体重が減り、体のシルエットがスリムになったように見えますが、実は筋肉量が減っているため、代謝量が減ることで筋トレをする前よりも太りやすい体になってしまいます。
思うような効果を得るには食事と運動の関係性を理解することが非常に重要となります。
炭水化物の摂取を怠るとどうなる?
先に述べた内容をもう少し細かくお伝えいたします。
筋トレは無酸素運動に分類され、糖質がおもなエネルギー源とされます。ちなみにウォーキングやランニングなどの有酸素運動は脂肪がおもなエネルギー源となります。
たとえば炭水化物を摂取せず、飢餓状態で筋トレを行うとどうなるかというと、肝臓や筋肉内に貯蔵された糖質をエネルギー源として使用します。しかし、体に蓄えた糖質は少量のため、すぐに枯渇し、体内のたんぱく質を筋肉から分解しエネルギーとして利用します。
これが続くと筋肉量はみるみる削られ、代謝が減退すると考えます。
食事を摂るタイミング
食事を摂るタイミングには個人差があるかとは思いますので、今回の内容はあくまでも参考までにしていただき、ご自身にあった最適な方法を見つけてみてください。
筋トレ2~3時間前は、十分時間に余裕があるため、たんぱく質を中心として白米もしっかり摂っていただいて問題ありません。筋トレまでに消化・吸収して栄養素として余裕をもってしっかり利用できる時間です。
筋トレ1~2時間前は、消化の良い炭水化物を摂取するようにしましょう。筋トレ中は消化不良を起こしやすくなります。本来は胃に集まっている血液が運動中は筋肉に送られますので、消化活動に支障が出る可能性があります。おにぎりやうどん、和菓子などがお勧めです。
筋トレ1時間~30分前は、ドリンクやゼリー飲料などで炭水化物を摂取することがお勧めです。空腹のままの筋トレをしても、集中力が散漫になり、筋トレの質が低下します。
また、自身の筋肉を切り崩してエネルギーに変換する働きにより、筋肉量が低下し、基礎代謝が低下することも考えられます。

筋トレ後に炭水化物が必要な理由
筋トレ直後の体は、たんぱく質が分解されやすい状態にあります。そのため筋トレ後にたんぱく質を補給することが大切であるとされています。ゴールデンタイムとされている30分以内に補給することで筋肉内に吸収されやすくなります。
筋トレ後にたんぱく質を補給する必要性をご存じの方は多いかと思いますが、炭水化物が必要であることをご存じの方は非常に少ないです。筋トレ後に炭水化物を摂取することで筋グリコーゲンの回復に役立つため、筋たんぱく質の分解を抑えられると言われています。
ちなみにゴールデンタイムのタイミングでは、筋肉の合成が進むのと同時に筋分解も進みます。適切に筋肉の合成を進めるために重要となる栄養素がたんぱく質と炭水化物になります。

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筋トレに必要な炭水化物の量
行う筋トレ種目の内容により、炭水化物の必要量は変わります。
筋力アップ、瞬発系トレーニング
筋力アップや瞬発系トレーニングは、無酸素運動に分類されます。
トレーニングに必要なパワーを発揮するためには、エネルギー源が体内にしっかりと蓄えられていなければなりません。
炭水化物は筋肉でグリコーゲンとなりエネルギー源として貯蔵され、必要に応じて消費します。
必要量は目安として、「体重×6g」となります。
※種目や負荷量、目的、時間などあらゆる内容によって必要量が変わるため、あくまで目安としてお考えください。

ウォーキングやランニング、水泳
ウォーキングやランニング、水泳などの比較的長時間行うトレーニングは有酸素運動に分類されます。
有酸素運動を行う際にまず必要となる栄養素が炭水化物(糖質)となります。炭水化物がエネルギーとして使われ枯渇すると次に脂質が使われます。
しかし、脂質(体脂肪)が燃やされ、エネルギーとなるまでには時間がかかるため、その間筋肉が分解されエネルギーに変化されます。要は筋肉量が減少するということになります。
炭水化物を取らないと筋肉量が低下することになります。
必要量は目安として「体重×7~10g」となります。
※種目や負荷量、目的、時間などあらゆる内容によって必要量が変わるため、あくまで目安としてお考えください。

炭水化物を多く含む食品の例
炭水化物は、エネルギー源として重要な栄養素です。食品によって含まれる炭水化物の種類や量が異なり、それぞれの特徴を理解してバランスよく摂取することが大切です。以下に、炭水化物を多く含む食品を分類して代表例を紹介します。
1. 穀類
穀類は炭水化物の代表的な供給源で、主食として世界中で食べられています。
- 米類: 白米、玄米、もち米。
- 特徴: デンプンを多く含み、エネルギー供給に優れています。
- 小麦製品: パン、パスタ、うどん、ラーメン。
- 特徴: 消化吸収が良く、速やかにエネルギーに変わります。
- その他の穀類: オートミール、キヌア、雑穀米。
- 特徴: 食物繊維が豊富で、栄養バランスに優れています。
2. 根菜類
根菜類は炭水化物を多く含みながらもビタミンやミネラルも豊富です。
- じゃがいも: 主にデンプンを含む。フライドポテト、マッシュポテトとしても摂取される。
- さつまいも: デンプンと糖質を多く含む。おやつやスナックとして人気。
- れんこん、かぼちゃ: 栄養価が高く、煮物やスープに使われます。
3. 果物
果物には糖質が多く含まれ、ビタミンや水分も摂取できるためヘルシーな選択肢です。
- 果糖が豊富な果物: バナナ、りんご、みかん、ブドウ、マンゴー。
- 特徴: 天然の甘みでエネルギー補給に適しています。
- 低糖質な果物: ベリー類(いちご、ブルーベリー)。
- 特徴: 糖質が控えめで、ビタミンや抗酸化物質が豊富。

筋トレにおいて炭水化物を摂る際の注意点
筋トレにおいて炭水化物は重要なエネルギー源ですが、摂取量やタイミングを誤るといくつかのデメリットが生じる可能性があります。
まず、必要以上に炭水化物を摂取すると、体内で余剰エネルギーとして脂肪に変換され、体脂肪の増加につながるリスクがあります。特に、運動量に見合わない過剰な摂取は、筋肉をつけるどころか肥満を引き起こす原因となるため注意が必要です。
さらに、炭水化物を摂りすぎることで血糖値の急激な上昇が起こる場合があります。血糖値が急激に上がると、インスリンが大量に分泌され、血糖値を下げるために過剰なエネルギーが脂肪細胞に蓄えられやすくなります。
この状態が繰り返されると、体脂肪の増加だけでなく、糖尿病やインスリン抵抗性のリスクを高める可能性もあるのです。
また、炭水化物の種類にも注意が必要です。精製された白米やパン、砂糖を多く含む食品ばかりを摂取すると、体に必要な栄養素が不足しがちになり、筋肉の合成に必要なビタミンやミネラルの摂取が疎かになる可能性があります。
これは筋肉の回復や成長を妨げる要因となるだけでなく、全体的な健康状態の悪化を招く恐れもあります。
さらに、炭水化物を摂取するタイミングが悪いと、エネルギーとして効果的に利用されず、体重増加や集中力の低下を引き起こすことがあります。
筋トレ後に炭水化物を摂ることで筋肉の回復が促進されますが、夜遅くに多量を摂ると睡眠の質を低下させたり、脂肪として蓄積されるリスクが高まる可能性もあります。
最後に、特定の炭水化物(特に加工食品や糖質が多いスナック)に依存する食事スタイルは、長期的に健康を害する要因となる可能性があります。これを避けるためには、複合炭水化物や栄養価の高い食品を選ぶことが重要です。
総じて、筋トレにおける炭水化物の摂取は適切な量とタイミングが鍵です。摂りすぎや種類の選択を誤ると、筋肉増強の効果が薄れたり健康を損ねる恐れがあるため、計画的な食事管理が求められます。

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まとめ
筋トレをする上でタンパク質を摂取する必要があるということはほとんどの方がご存じだと思います。しかし、炭水化物が必要であるということをご存じの方は少ないのではないでしょうか?
糖質の摂取が不十分だと思考が低下し、集中力が散漫になります。また、筋トレによる筋肉の回復やたんぱく質の分解を抑制する等、筋肉を構築するうえでなくてはならない栄養素になります。
近年では炭水化物の摂取を控えるという食事を摂られている方が増えましたが、必要な量は摂取するように心掛けてみましょう。
