効率的に腹筋を鍛えるには、筋トレで腹筋に刺激を入れることも大切ですが、日常生活の動作の中で腹筋の意識を高めることが重要になります。普段の生活で腹筋を意識することはないかと思いますが、実は寝ている時以外、腹筋を使って姿勢を維持しています。
今回はいわゆるシックスパックと言われる腹筋をつくる「見せる腹筋」をつくるトレーニングではなく、日常生活動作やスポーツ動作に生かすことのできる「使える腹筋」をつくるためのトレーニングをご紹介していきます。
腹筋概要
腹筋とは、4つの筋肉の総称で、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋です。
腹筋は腹腔の内臓の保護、収縮緊張により腹圧を高め姿勢を維持したり、内臓を圧迫し排便や排尿、分娩の促進の際に使用されます。また、腹筋の働きにより、胸郭下部が圧迫され、呼気運動を助ける働きがあります。
腹直筋
腹筋群の中で、もっとも表層にある筋肉で胸骨から恥骨まである長い帯状の筋肉です。
腹直筋は「体幹部を丸める」のがおもな役割になります。腹直筋には「白線(はくせん)」と「腱画(けんかく)」とよばれる、腱状繊維があり、腱画数に個人差はあるものの筋肉を6つもしくは8つに分けているため、割れて見えます。
外腹斜筋・内腹斜筋
腹斜筋には表層にある「外腹斜筋」と中~深層にある「内腹斜筋」があります。
外腹斜筋は左右の下部肋骨から体の中央、恥骨に向かって斜めに走行していて左右への体幹部の回旋を助けます。 内腹斜筋は外腹斜筋の深部に付着しており、筋繊維の走行が外腹斜筋と反対です。外腹斜筋は外側から内側へ斜めに走行しているのに対し、内腹斜筋は内側から外側に走行しています。
どちらの筋肉も同様のトレーニングで鍛えることが可能ですし、動作の際にはこの二つの筋肉が協力して働き、体幹部の捻転動作で力を発揮します。
腹横筋
腹横筋とは、内腹斜筋のさらに内側のもっとも深層にある筋肉を指します。天然のコルセットとよばれています。
腹式呼吸において息を吐く動作や腹腔内部を圧迫しお腹を凹ませる働きで腹圧を高め、姿勢を維持するために働いています。また内臓を覆っているため、腹横筋が緩むことで臓器が重力により下がってしまうので、ポッコリお腹の原因となります。
逆にトレーニングより刺激を入れると引き締まるので、体幹部がくびれて見えるようになります。
腹筋トレーニングの誤解
腹筋トレーニングの多くは、「お腹にしっかり力を入れて丸まる」という動作が一般的です。しかし日常生活やスポーツ競技中このような体の使い方をしているでしょうか。
実は「力を抜いて丸まる」という動作になります。「自ら腹筋に力を入れる」という力みが入ってしまうと、日常生活やスポーツではすぐに体が疲れてしまいます。「動作中に自然と力が入る」という状態で体を動かせるようになると、必要な時に必要なだけの力が入り、効率よく体を動かすことができますので、疲れにくくなります。そのためには、お腹の筋肉がしっかり動作中に働くような体の使い方を身につける必要があります。
※先の章でご説明いたします。
またトレーニングのやり方により「力を入れてしまう癖」がついてしまうと、日常生活やスポーツの場面で力が必要な時、力が抜けてしまいます。反対に力を抜いて動作を行うと、必要な時にお腹に力が自然に入るようになります。
今回は腹筋のトレーニングのお話ではありますが、日常生活やスポーツのパフォーマンス向上のためにトレーニングをしている場合、腹筋トレーニングだけに限らず、すべてのトレーニングに言えることです。力を自ら入れるのではなく、自然と入るような「力の抜き」「脱力」を意識するようにしましょう。
ただし力を入れて丸まる動作がよくないトレーニングかというとそうではありません。腹筋を使っている意識がしやすく、わかり易いのでトレーニング初心者の方で腹筋を使っているイメージが薄い方には、お腹の意識を高めるという意味で行っていただいても良いかと思います。
体幹部を安定させる腹筋「腹横筋」
腹筋群の中でもっとも深層にあるのが「腹横筋」になります。体幹部を安定させるコルセットの役割を果たすほか、日常生活やスポーツにおいてとても重要な筋肉になります。
全身の筋肉の中で腹横筋が真っ先に収縮する
近年では、腹横筋は日常生活動作やスポーツ動作において、全身の筋肉の中で真っ先に収縮する筋肉であることがわかっています。
普段あまり感じることはありませんが、われわれは腹横筋を中心として体を動かしているということになります。腹横筋がしっかり働くことでどのような体の使い方になるかというと、「全身の筋肉を連動させられる」ようになります。
要するに腹横筋の力を上半身と下半身に伝えることで、強い力を発揮させることができ、小さな筋肉の負担を減らすこともの可能になります。「足だけで走る→全身で走る」「腕で投げる→全身で投げる」というように末端だけの運動になってしまうとパフォーマンスを落とすだけではなく、怪我の原因にもつながります。
腹筋群と連動する関節と筋肉
腹横筋とする筋肉は、極端ですが「全身の筋肉」です。今回はあえて一つに絞ります。
腹横筋とおもに連動する関節と筋肉は「股関節=お尻」です。お尻の筋肉は「大臀筋」といい、人体でもっとも大きい筋肉になります。ですので、日常生活やスポーツでは、腹横筋と大臀筋の体幹部を中心とした体の使い方を身につけることでパフォーマンスを向上させることが期待できます。
スクワットで体の使い方を身につけよう!
われわれ動物は、一箇所の筋肉だけでは体を動かすことができません。全身の筋肉を連動させて体を動かしています。
そのためトレーニングで行う種目も一箇所に刺激を入れるものではなく、一種目で全身の筋肉を使うことのできるものを選択すると良いです。
全身に刺激を入れるトレーニングでもっとも有効なのは「スクワット」です。腹横筋と大臀筋を使えるような体の使い方で行わなければ意味がありませんので、まずは正しいフォームで行えるように訓練してみましょう。
ポイントは「股関節を中心とした動き」が行えるかです。
※参考動画にてご確認ください。
まとめ
腹筋を効率的に鍛える方法としてお勧めするトレーニング種目は、「スクワット」になります。
一見「腹筋を使っているの?」と不思議に思う方もいるかも知れません。しかし実際には、一般的な腹筋トレーニングの何倍もの効果があります。しかもスクワットでは、フォームが安定してくると重量を担いで行うことが可能になりますので、お腹に対する負荷をより与えることができます。
そしてスクワット動作は、あらゆる日常生活動作やスポーツ動作の根本にある動作です。スクワットで正しい動作を身につけることで、日常やスポーツで体を動かす際に自然と腹筋に力が入り、自然と腹筋を鍛えることができます。そうなると極端に言うと腹筋トレーニングを行わなくても、日常生活が腹筋トレーニングになりますので、筋力を維持・向上させることが可能になります。
このような状態が理想的な体づくりと言えます。ちなみに腹横筋や大臀筋を使えるスクワットや日常生活動作である立ちしゃがみ、歩く、走る、階段昇降などの正しい体の使い方を一度身につけると、その後忘れることがありませんので、この機会に一度、股関節を中心とした正しい体の使い方を身につけてみてはいかがでしょうか?