近年では体幹という言葉をよく聞くようになりました。実は体幹には明確な定義がなく、専門家の間でも体幹に対する解釈が少々異なります。では、体幹とはどの部分を指す言葉なのでしょうか?
体幹トレーニングと言うと、「腹筋を鍛えること」と想像される方が多いかと思います。決して間違いではありません。しかし体幹は腹筋だけではなく、もっと広範囲を指す言葉です。そして鍛えているばかりではなく、「使える」ようにする必要があります。
今回はわれわれが考える体幹、そして体幹を鍛えるのではなく、使えるようにする方法をお伝えしていきます。
体幹とは?
我々は体幹を、「腕と足を除いたすべての部位」と考えています。お腹、胸、背中、お尻、頭すべてが体幹になります。ここで大切なことは「頭」も体幹の一部になるということです。
頭の位置は、体の重心を安定させ、バランスを整える際にとても重要になるため、体幹の一部だとわれわれは考えます。そして体幹の中でももっとも重要な筋肉である「お尻とお腹」の大きな筋肉がしっかり使えるようにするということが、われわれ人間が体幹トレーニングを行うことの最大の目的となります。
お尻とお腹の重要性
まずお尻の筋肉は大臀筋、中臀筋、小殿筋という三つの筋肉で構成されています。
そしてお尻の大きな筋肉の下に外旋六筋という、梨状筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋、大腿方形筋、上双子筋、下双子筋があります。人体でもっとも大きな筋肉になります。
余談ですが、ゴリラを想像してみてください。ゴリラは筋肉隆々、力ではまず人間はゴリラには敵いません。しかしゴリラに唯一勝てることがあります。それがお尻の筋肉です。人間は二足方向なのに対し、ゴリラは四足歩行だからです。
人間はお尻の筋肉を進化の過程で発達させたことにより長く歩いたり走ったりすることが可能になったのです。そのお尻の筋肉が衰えてしまうと体の支えることができなくなり、歩くことも走ることも、立つことさえできなくなります。それくらい大切な筋肉なのです。
そしてお腹は腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋の4つの筋肉で構成されています。
この4つの筋肉の中でもっとも重要な筋肉は「腹横筋」になります。お腹の筋肉のもっとも深層にあるインナーマッスルです。働きとしてはお腹を凹凸させる筋肉です。別名コルセット筋とよばれ、体幹の安定性を高める働きがあり、姿勢を保つ役割があります。近年では、腹横筋は日常動作やスポーツ動作において、全身の筋肉の中で真っ先に収縮する筋肉であることがわかっています。
普段まず感じることはないかと思いますが、われわれ動物は腹横筋を中心として体を動かしているということになるのです。そしてお腹の力を上半身と下半身に伝えることで全身の筋肉が連動して働くことになります。お尻とお腹が正しく使えるようになることで全身の筋肉で体を支えることができるようになるのです。
最高の体幹トレーニング「スクワット」
日常生活動作である歩く、走る、立つ、しゃがむ等の動作を行う際にも実は体幹の筋肉を使って体を動かしています。しかし多くの方の体の使い方を見てきて思うことは、残念ながら体幹の筋肉を使って動けていないということです。お尻とお腹の筋肉を使うためには「股関節を中心とした体の使い方を身につけること」が必要となります。
そして股関節の使い方を身につけるには「スクワット」が最適となります。股関節を中心としたスクワットは「お尻とお腹」をメインとしたフォームで行います。
さらに股関節を中心とした正しいスクワットができるようになると、そこに重量を加えることが可能になります。高重量のスクワットができるようになると、ほかのどんな体幹トレーニングよりも格段にレベルの高い効果的な体幹トレーニングとなります。
※参考動画にて動作はご確認ください。
さらにスクワット動作は、日常生活やスポーツ競技のあらゆる動作の根本となる動作になります。椅子に座る、歩く、走る、立つ、しゃがむ、跳ぶ、投げるといった基本動作は元を辿るとすべてスクワットとなります。
要するにスクワットでしっかりとお尻とお腹が使えるようになることは、日常やスポーツでの動作を行う時にもお尻とお腹を使って生活することができるということになります。つまりは日常生活でのすべての動作が体幹トレーニングになるということになるのです。
「鍛える」ではなく、「使える」ようにする
多くの方が体幹を鍛えることにより、姿勢が良くなる、動作のパフォーマンスが向上すると考えていますが、実は体幹は鍛えるのではなくて、使えるようにしなければ筋肉がいくらあっても、残念ながらほとんど効果はありません。
たとえば、猫背になっている赤ちゃんを見たことはありますか? 基本的に赤ちゃんの背筋はまっすぐ伸びていて良い姿勢で座ったり、立ったりしています。赤ちゃんは体幹トレーニングで鍛えて筋肉をつけるわけではなく、日常で体を動かすことで自然と必要な筋肉がつき、やがて自分の体を支えられるようになるのです。要は姿勢を保つために体を鍛えて筋肉をつける必要はないということです。(※極端に筋力が低下している方は鍛える必要もあります)
余計な筋力をつける必要はなく、必要最低限の筋力さえあればよいのです。あとはその筋肉を使えているかの問題になります。正しい体の使い方を身につけ、正しく座る、正しく立つことで、自然とその姿勢を維持するために必要な筋肉に必要なだけ力が入り、自然と鍛えられるのです。
体幹を使わない動作はない
ここまでのお話でおわかりのように、日常生活動作、スポーツ動作のすべてが体幹トレーニングということになります。
デスクワークを行っている時、通勤で会社まで歩く時、電車に揺られて立っている時、ゴルフや野球、テニスを楽しんでいる時のすべてが体幹トレーニングです。このような意識を持つと日常生活がトレーニングになります。
あえてトレーニングを行う時間を確保する必要もなくなりますし、いつでもどこでも体幹トレーニングを行なうことが可能になります。
まとめ
体幹は「鍛える」のではなく、「使える」ようにするという意識を持ち、日々の日常生活のなかで「お尻とお腹」が使えるように体の使い方を学ぶことをお勧めします。
日常生活動作のほとんどが「スクワット動作」となりますので、体幹トレーニングとしてはスクワットを行うと良いでしょう。スクワットを正しく行うことができるようになると、自然とお尻とお腹を使うことができるようになり、姿勢が良くなるし、バランスも取りやすくなります。
スポーツ競技を行っている方でしたら、パフォーマンスアップにつながります。またスクワット以外の体幹トレーニングももちろん行っていただいても問題ありません。
体幹トレーニングは種目もたくさんありますので、楽しんで行ってください。筋トレと日常生活をリンクさせ、日々の生活に活かせるように行いましょう。